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第3節「金属嫌い 下」

 焚火の火は小さく揺れていた。


 森の夜は深い。


 けれど先程までの緊張感は、少しずつ薄れてきている。


 若いエルフ達も、完全には近づかないものの、先程より距離が近かった。


「……本当に飲んでる」


 枝の上から誰かが呟く。


 視線の先にはシャーロット。


 普通に薬草茶を飲んでいた。


「苦くないの?」


「苦いよ?」


 即答だった。


 周囲が少しざわつく。


「苦いのに飲むの?」


「落ち着くから」


 シャーロットは自然に言う。


 すると、若いエルフ達がまた小さく顔を見合わせた。


「……分かる」


「ちょっと眠くなるよね」


「温かいし」


 どうやら森側でも同じ感覚らしい。


 フレアが小さく吹き出す。


「なんか普通に会話してるね」


「……そうだね」


 シャーロットも少し嬉しそうだった。


 最初は未知の存在だった。


 でも今は、ちゃんと会話出来ている。


 その距離の変化が少し嬉しい。


 その時だった。


 ふらっ。


「……っ」


 一人の若いエルフが、少しよろけた。


「えっ」


 シャーロットがすぐ立ち上がる。


 視線の先。


 さっき金属へ反応していた青年だった。


「大丈夫!?」


「……平気」


 そう言うが、顔色は悪い。


 セラフィナが静かに青年を見る。


「まだ残ってる」


「……ごめんなさい」


 シャーロットがすぐ荷物を見る。


 布で隠していても、完全には遮断出来ていないらしい。


「少し離す」


 ルナが静かに荷物を持ち上げる。


 そのままかなり遠くへ移動させた。


 すると、青年の呼吸が少し楽になる。


「……ほんとに強いんだ」


 フレアが驚いたように呟く。


 セラフィナは静かに頷いた。


「感覚が違う」


 人間には分からない。


 でもエルフには、金属の存在が強く刺さる。


 音や匂いみたいに。


 ずっと近くに感じ続ける。


「不便じゃない?」


 フレアが素直に聞く。


 若いエルフ達が少し首を傾げる。


「……別に?」


「必要ないし」


「木と石で足りる」


 価値観そのものが違う。


 シャーロットは少しだけその言葉を考える。


 人間は便利さを求めた。


 でも、この人達は違う。


 森と一緒に暮らす事を選んでいる。


 だから文化も違う。


 それだけなのだ。


「……面白いね」


 シャーロットがぽつりと呟く。


 セラフィナが視線を向ける。


「怖くない?」


「んー……」


 少し考える。


「違うだけかなって」


 その答えに、周囲が静かになる。


 違う。


 でも間違いじゃない。


 シャーロットは、そう思っていた。


 そして。


 その考え方は、少しだけ森の民達を驚かせていた。

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