第8記 診療所の日常 中編
「私とシュンカお姉ちゃんが森でいつもの見回りをしていたら、傷つき倒れている狼を見つけたの。」
【今日も~いい天気ね~あら~あれは~大変~傷だらけの~狼さんが~いるわ~。】
【うっう・・・。】
【確かに傷だらけなの、でも大きな怪我はなさそうなの。】
【そうね~これぐらい~なら~すぐ治るわ~ヒールウィンド。】
【うっう・。】
【怪我は治ったけれど、まだ動けないみたいなの、診療所に連れていってメディに見せたほうが良いかもなの。】
【・・・お・・・】
【お?】
【ハティお腹が空いて、うごけない・・・。】
「あのときは、なにか病気とかが原因かなと思ったら、ただの空腹が原因どと聞いてほっとしたの。」
【あらあら~お腹が~空いて~いた~だけだったのね~、ところで~スズカ~食べ物~あった~かしら~。】
【狼なら、肉類のほうが良いと思うんだけどちょうど良いのは・・・あ、これがいいの。】
【いい匂いがする、ハティそれ食べたい。】
【どうぞなの、これは焼いてあるし口に会うと思うの。】
【いただきます・・・これすごく美味しい!これなんて名前?】
【これは焼きボアカドなの、果実の一種だけど猪肉の味がするボアカドを焼いたものなの、生でも食べられなくはないけれど、焼くと香ばしくなってより美味しくなるの。】
【えっと~確か~メディが~用意して~くれた~果実~だった~かしら~、この辺り~には~無い~珍しい~果物~。】
【そうなの、メディが試験的に作っているのだけど、持ち運びがしやすくて栄養も豊富だからといってもたせてくれたの。】
【ボアカド食べ終えちゃった、ハティもっと食べたい。】
【分かったなの、たくさんは無いけどもう少しあるからたべるの。】
【ありがとうハティ嬉しい、スズカ食べ物たくさんくれたから好き。】
「これが私達とハティが初めて会ったときの話なの。」
「ハティ何日も居なくなっていたことがあったけれど、そんなことになっていたのね。」
「今では肉食の力獣に欠かせないボアカドは元々メディ様がお広めになったんですわね。」
「あの頃は手軽に食べられる肉っぽい食べ物があってもいいかなというぐらいの感じで、私の中にあった元々動物と植物が混じった不思議な世界の植物の情報をもとに作ったんだけど、ここまで需要が増えるとは思いもしなかったわ、」
「おかげで私達も気軽に肉っぽい味を堪能出来るようになったから助かっているわ。」
「最初に会ったとき、ハティは狼の姿のままでしたんですわね。」
「ハティあのときは、お腹が空きすぎていて、人の姿になれなかった。」
「それからしばらくして、ハティに再会したの。」
【特に~怪我を~してる~動物さんも~いない~みたい~だし~帰り~ましょうか~。】
【・・・スズカ・・・。】
【シュンカお姉ちゃん、私の事呼んだ?】
【私は~呼んで~無いわよ~。】
【スズカー。】
【その声はハティ!どこにいるの?上から聞こえてくるけど・・・。】
【スズカ久しぶりー、一緒に遊ぼう、それとこの前のフルーツ食べたい。】
「ハティが木の上から飛び降りてきたから、驚いたのそれに人化していたから、一瞬分からなかったの。」
【その声と~狼耳は~ハティちゃんに間違い~ないわね~、ハティ~ちゃん~また~怪我を~してる~わね~とりあえず~治しましょう~ヒールウィンド~、さっき~上から~声が~聞こえた~のは~、木登りを~していたから~なのね~。】
【ハティなんで裸なの?遊ぶのは良いけどまずは服を着て、人化したら服をちゃんと着ないといけないの、それとこの前のフルーツボアカドは今回も持ってきてるから食べるの。】
【美味しかったでも物足りないからまだほしい、後服は動き難くて窮屈だから嫌。】
【女の子なんだから、羞恥心を持ってちゃんと服を着て、後途中で食べたりもしたから、持ってきたボアカドはさっきあげたので終わりよ、後は診療所の隣に作ってある実験農場にしかないわ。】
【その診療所に食べ物があるなら、ハティも付いていく。】
【これから~帰るところ~だから~一緒に~行きましょう~。】
【まあ怪我をしている動物もいないしね、でも帰りに見かけるかもしれないから、周りを見ながら帰りましょうか。】
【ただいま~。】
【お帰りなさい、あらこの娘は?見たところ怪我はないみたいだけと、それに服を着てないのね。】
【彼女は~この前~言っていた~狼の~ハティ~ちゃんよ~普通の~動物さん~だと~思ったら~人化~したから~神獣~だった~みたい~。】
【確か、狼の神獣ならフェンリルだったわね、でも神獣でも服は着るはずよ、たまに来る妖狐のタマモも普通に服をきているわよ。】
【服を着るようには言ったんだけど、窮屈だから嫌といって聞かなかったの。】
【ハティ、ボアカドもっと食べたいどこにあるの?】
【ボアカドは、この先にボアカドの樹があるわ。】
【分かった、食べに行ってくる。】
【待って行く前にちゃんと服を着て。】
「それからハティは診療所に時々遊びに来るようになったの、最初は食べ物目当てだったけど、徐々に遊ぶのがメインになってきたの、それから・・・。」
「スープも~サンドイッチも~とても美味しかったわ~、そろそろ~デザート~食べたいわ~。」
「みんなもう、食べ終わったみたいね。」
「話は興味深かったけど少し長すぎるにゃ。」
「分かったわ、まあ話も切りがついたし、話はこれぐらいにしてデザート持ってくるの。」
「レイラ、午前中に言っていた調薬をするから付いてきて。」
「メディ様付いていくのは構わないんですけど、どこで調薬するんですの?」
「診療所の地下に調合室があるのよ、でも先に保管庫に寄って必要な素材を持っていくわ。」
メディ様に連れられて大きな部屋に着きましたわ、色んな花や草の香りが混ざって独特な感じですわね。
「今いる患者に使う薬の材料だから・・・、これとあれ、あとそれかな・・・全部揃ったから調合室に行くわよ。」
「メディ様、言ってくださればお手伝いいたしましたのに。」
「似ているのや取り扱いが難しいのもあるのよ、でもゆくゆくはレイラに薬草の扱い方を覚えてもらって、手伝ってもらう予定よ。」
「分かりましたわ、頑張っておぼえますわ。」
保管庫の入り口とは別の扉から出ると様々な機材の置いてある部屋にたどり着きましたわ。
「ここが調合室、診療所の地下とさっきの保管庫どちらからでも来れるようになっているわ。」
「必要な素材をすぐに取れるようにするためですわね。」
「ええそうよ、では早速作っていくわねまずはタマモの薬から作っていくわよ。」
「分かりましたわ。」
「まずアップリュー4分の1をすりつぶして、そこに清水を少しずつ混ぜていき色が変わってきたら、プレアリアとエレフィールを加え、そのあと少し冷やせば完成よ。」
「以前スズカ様が作ったのとは少し作り方が違うんですわね。」
「手持ちの材料の関係と、その時に求められる効能が違っているからと思うわ、タマモはほぼ完治してるから強い薬でなくていいから。」
「なるほどいつも同じ作り方で薬を作ればいいと言う訳ではありませんのね。」
「ええそうよ、でも症状によっては同じのでも問題が無いことも多いわ。」
そのあと残りの薬の作り方も教えていただきましたわ。
「これで全部出来たわ、製薬は他にも色々なやり方もあるけどそれは徐々に教え行くわ。」
「分かりましたわ、ありがとうございます。」
「出来たからみんなの所に持っていきましょう。」
「タマモ元気になってよかった、また遊ぼう。」
「ありがとうこん。」
「お待たせ薬持ってきたわ、みんな明日には退院出来るから、しっかり療養してね。」
「それと、みんな服はもちろん・・・着てないみたいですわね・・・。」
「ハティや他の娘達にも言っているんだけと聞かないのよ・・・。」
「だって服着ると窮屈なんだもの。」
「それに森の中では服を着ないのが普通にゃ、服なんて森にはないし、短い時間のために着るのも大変にゃ。」
「確かに昔ハティも言っていたこん、森ではみんな全裸でいるんだから、森の中で全裸になるのが普通で全裸なら服が引っ掛かることもないから動きやすくて良いって。」
「それに大きな尻尾があるからとっさに着れないです。」
「大きな尻尾を持つ患者用に着脱しやすい服を考える必要はあるかもね。」
「そうね~尻尾穴は~種族ごとに~合わせて~開けているけど~尻尾の~サイズにも~個体差が~あるから~その辺りも~考えないとーいけない~かしら。」
「でもハティの言うことは屁理屈に近いから真に受けなくて良いのよ、昔はタマモ服を着ていたじゃない。」
「確かに昔は服を着ていたし、周りも服を着てる人しかいなかったこん、でも今は服を着てない方が多いこん。」
「確かに動物達が力獣になり人化できるようになってから、全裸の娘達が増えて来たのは事実だわ、でもそれは力獣達に服を着る習慣が無かったからよ、だから私達は力獣達に服を着るように言っているのよ、それにタマモが全裸でいることがクズノハにばれたら大変よ。」
「クズノハお姉ちゃんにばれたら・・・服を着るよう頑張るこん。」
「夕食が出来たからみんなで食べるの。」
「私達まですみません。」
「二人増えたぐらいなら手間はそんなに変わらないから問題無いの。」
「部屋も空いてるから今日は泊まっていくと良いわ。」
わたくしたちは夕食を食べ終わると
「みんなの~完治~祝いに~明日~みんなで~ハイキングに~行きましょう~。」
「そう言えば最近花畑に行けてなかったの。」
「なんだか楽しそうにゃ。」
「花畑以外に予定はあるこん?」
「シュウカと~トウカを~誘って~花畑に~行って~ハーニャ達に~会って~最後に~水辺に~行こうかな~。」
「あちこちに行くんですね楽しみです。」
「ハティもいく。」
「もちろん~二人も~一緒に~行きましょう。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ私はスパイス煮込みの仕込みをやるわね。」
明日の話をして盛り上がったあと、わたくしたちは眠りにつきましたわ。
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「後はローリエを入れてと、後は少し寝かせてっと・・・。
」
「メディさんはこんな時間まで仕込みをしているんですね。」
「ええ、スパイスの量も多いし工程も多いからね、リルさんこそこんな夜更けにどうしたんですか?」
「なんか眠れなくて・・・隣良いでしょうか?」
「一段落したから大丈夫よ。」
「私、ハティとスズカさんが初めてあった話を、初めて聞いたんです、ハティがいつも木登りをしたり、危ない事をしているなんて・・・。」
「ハティはお転婆なところあるからね、でもリルとハティの話を聞くに社交場では大人しくしてるみたいだったから、全裸になりたがる活発な妹という印象だったのかしら。」
「そうですね、それにハティは昔から要領が良く物覚えも早い娘でした、家庭教師から教わった事をすぐに覚えて理解している感じでした。」
「少し以外ね、ハティ勉強とか嫌いだと思ったんだけど。」
「そうね多分本人は早く勉強を終わらせて遊びたかっただげかもしれないわ。」
「確かにそう言われるとハティらしいかも。」
「そんな物覚えの良いハティを両親は期待していて、更に習い事を増やしていったのよ、そう言えばハティが家出したのも、勉強を更に増やすと言ったからだったわ。」
「そんな事情があったのね。」
「ハティは社交場では笑顔でいることもあったけれど、心からの笑顔を見るのはいつもこの診療所にいるときなの、やっぱり私達が厳しすぎたのかしら、私ハティに嫌われているんじゃないかと・・・。」
「大丈夫、リルもさっきも言ってたけれど、ハティは賢い娘だとおもうし、昼の時の二人はとても仲の良い姉妹だと感じたわ。」
「メディありがとう。」
「うーん、もしかするとハティが全裸でいるのって、普段仕来りや勉強で抑制されている反動なのかもしれないわね。」
「そうかもしれません、だとしたらこの森にいる間は全裸でいるのを認めても良いのかな。」
「難しい問題ね、でも今はまだ全裸でも良いかもしれないけど、心と体か成長しても全裸だと色々まずいから、今から注意は続けていきましょう。」
「そうですね、話を聞いてくれてありがとうございます、大分気が楽になったわ、ふわぁ眠くなってきましたから寝るわね。」
「おやすみなさい、私はもう少し仕込みがあるから終わらせてから寝ます。」
リルさんが寝た後私は仕込みの仕上げをしました。