第47話:テレビデビュー
元旦の“戦国バー・うつけの溜まり場”では、ノブヒデの二人をはじめ、オーナーや由美、カンゴーズの二人、中川社長で視聴していた正月のテレビ番組『城ワングランプリ 乱世一番の城はどれだ!』が終盤に近づいていた。
大きなスクリーンに映し出されているのは、大阪城の極楽橋の手前で、番組の司会進行役の沖田アナウンサーが、大阪城学芸員の斎藤、そしてノブヒデの二人を従え、番組の締めくくりのナレーションを始めるシーン。
「ということで、乱世一番の城は、視聴者投票を踏まえ、大阪城という結果になりました。先生、この結果はどうでしょうか?」
「まぁ妥当だと思います。この城のスケールだけでなく、実際に日本を揺るがすスケールの大きな2回の戦いに使われた城という点からも、乱世一の城だと思いますね」
「そうですね」
沖田アナは続いて、ノブヒデのノブさんの方に質問をする。
「安土城が、一番でなくて残念でしたね、ノブさん」
「まぁええんちゃいます。信長やったらこう言うてると思いますわ。安土城はわしの中では一位なれど、実際に天下を統一したのは、猿の手柄。わしはその功績に免じて大阪城に一位を譲る。これで、OK狭間やな」
その桶狭間を絡ませたギャグをノブさんがかました後に、すかさずヒデさんがツッコミを入れる。
「何を最後までふざけとんねん!」
と言って、ハリセンでノブさんの頭に喝を入れるが、ノブさんは表情を変えることなく涼しい顔をキープする。
思わず真面目な斎藤学芸員も、顔がほころぶ。そして最後に沖田アナが、番組を締める。
「ということで次回は半年後、みなさんの投票でナンバーワンの戦国、城持大名を決める『戦国武将グランプリ 乱世一の城持ち武将は誰だ』でお会いしましょう。ノブヒデのお二人もまた来てくれますよね」
そう沖田アナにふられ、ノブさんは少し考え込む。
“戦国バー・うつけの溜まり場”では、高井オーナーがビールのグラスを片手にスクリーンを見て、つぶやく。
「よし、いつものいけ!」
そしてゆっくりとノブさんが、口を開く。
「是非に及ばず。必ず、お供つかまつりまする。のう、ヒデちゃん」
「御意!」
「ということで、またお会いしましょう!」
最後にカメラに向かって、出演者全員が手を振り、番組のダイジェストシーンが流れ、画面下に出演者やスタッフ、協力団体のテロップが流れていく。
テレビを見ていた “戦国バー・うつけの溜まり場”の全員が、ノブヒデの二人に向かって大きな拍手を送る。
ノブさんとヒデさんは、少し頭を掻くなどして、みんなの顔を恥ずかしそうにチラチラ見ている。
高井オーナーは、二人の背後に周り、二人の肩に手を添えて賛辞を送る。
「いや〜、ほんまによかったです!堂々としたもんですわ。見ていて安心というか、もうベテランの芸人さんのような貫禄があるというか。まずは、デビュー戦、大成功ですな。みんなもそう思いますよね、中川社長…」
「これは私の勘ですが、ノブヒデは結構売れると思います。いや、思いますやなくて、間違いなく売れます!私が保証します。まずは、次回特番の出演もゲットしましたからね。それに、他局ですが、お笑いバラエティ番組への出演も
この正月番組のおかげで決まると踏んでます」
その言葉を聞いて、ノブさんとヒデさんが中川社長に礼を述べる。まず、ノブさんが中川社長に近づき、社長の手を握りしめる。
「よろしくお願いします」
続いて、ヒデさんが社長とノブさんの手の上に自分の手を重ねる。
「どこまでも社長についていきます!」
「私も、戦国の二代巨匠にそう言っていただけて光栄です!」
カンゴーズの恵は、その時、突然新しいビール瓶を持って立ち上がり、みんなの前に置かれていたグラスにビールをついでまわる。
「みなさん、ここでもう一回乾杯しましょ。今度はビールで乾杯です!」
全員のグラスにビールが注がれ、恵が乾杯の音頭をとる。
「それでは、上様と光秀さまのお笑いの実力がテレビで証明されたところで、お二方の未来を祝して乾杯の
音頭をとらせていただきます」
高井オーナーが、改まりすぎている恵に対して、リラックスするようにアドバイスする。
「恵ちゃん。これからもわしらの間では、ノブさん、ヒデさんで行こうや。心の中では上様や光秀様へのリスペクトがあってもええけど。それでいいですよね上様」
少し困った表情でノブさんが答える。
「オーナーも言うてますがな(笑)」
「私なりのギャグですよ」
恵も含め佳澄も由美も社長も、緊張がほぐれ笑顔になり、いままでの優しい目でノブさんとヒデさんを見ている。恵はみんなにグラスを持って、立ち上がるように促す。
「では、ノブヒデの将来の活躍に期待を込めて、そして、私たちカンゴーズにもその勢いを少し分けていただいて(笑)、もう一度ビールで乾杯いたします。それでは、かんぱ〜い!!」
「(みんなで)かんぱ〜い!!」
全員が、一気にビールを飲み干し、再び拍手をする。そして着席しようとした時、恵と佳澄だけが座らずに、立ったままグラスだけをテーブルに置く。ノブさんとヒデさんは、その姿を不思議そうに見ているが、高井オーナーと中川社長はお互い顔を見合わせて、ほくそ笑んでいる。
「めぐみんも、かすみんも座ったら? ひょっとして、カンゴーズもなんか発表あんの?」
ノブさんが、そう言うと、かすみんが口を開く。
「新しいノブヒデの門出に、つまらないものですが、お二人にプレゼントがあります。ちょっと待ってくださいね。取ってきますから」
恵と佳澄は、プレゼントを取りに自分のカバンのところに向かう。
「えっ? なんか、うれしいかも。ねぇ、ノブさん」
「そやな、珍しいな二人からプレゼントやなんて。楽しみやな〜」




