第44話:衝撃の告白?
行き交う人や車もほとんどなく、静まり返っている元旦、昼すぎの大阪市北区の下町。“戦国バー・うつけの溜まり場”の店の前には、門松が飾られており、ドアには「本日貸切」の札がかかっている。
店内では、 オーナーの高井とヒデさんが、奥のコレクションルームから大きな古い木のテーブルを二人で運び出し、6畳の座敷にセットする。
「ノブさん、由美ちゃん! 座敷は準備完了やで」
高井オーナーが、厨房に向かってそう叫ぶと、ノブさんが威勢の良い声で答える。
「承知しました!!」
そう言うと、厨房から、おせちの重箱を持ったノブさんと、唐揚げなど洋食のオードブルがのった皿を持った由美が、出て来て、座敷のテーブルに置く。同時にヒデさんは、冷蔵庫に瓶ビールを取りに行く。
飲み物も食べ物も揃うと、全員がテーブルを囲むように座布団に座る。そして高井オーナーは、隣に座った由美に話しかける。
「なぁ、由美ちゃん。みんなには、昼の1時からって伝わってるよな」
「はい、オーナー。中川社長は、15分ぐらい遅れるかもしれないと言ってましたけど」
「わかった。そしたら、3人を待ってる間に、みんなに見せたいものがあるねん」
「なんですか?」
ノブさんが、そうオーナーに聞くと、オーナーは壁沿いの本棚からリモコンを取り出し、自慢げにみんなに見せる。
「必殺!超デカスクリーン!スイッチオン!」
オーナーがリモコンのスイッチを押すと、天井から壁沿いに大きなスクリーンが降りてくる。
「オーナーこれは?」
ノブさんは、オーナーに質問するが、逆にオーナーはノブさんに聞き返す。
「ノブさん、今日は記念すべき日と違うか?単なる正月やないで〜」
「今日は2時から、わしらが出演した番組が放送される日ですよね」
「そうや。だから、みんなで…」
「見たいです。あっ、そうか!これ、みんなで放送を見るためのスクリーンですか?」
「正解!今日ノブヒデのデビューをみんなで見るために、昨日の定休日に、知り合いの電気屋さんに、みんなには内緒で設置してもらったんや。それにな、お笑いライブをする時にも映像がだせるし、ノブヒデやカンゴーズの動画も店のBGVとしてずっと見てもらえるしな。ヒデさんはどう思う?」
「嬉しいの一言につきます!」
「この店も、新たなお笑いの聖地になるかもな。いや〜、楽しみやわ」
しばらくして、お店の入り口のドアが開き、明るい色の小紋の着物と羽織を着たカンゴーズの二人と、同じように羽織と着物スタイルの中川社長が一緒に店内に入ってくる。
「みなさん、こっちこっち。お待ちしてました!」
中川社長とカンゴーズの二人は、座敷に上がり、まずは中川社長から新年の挨拶をはじめる。
「みなさま、そしてノブヒデの二人、本年もよろしくお願いいたします。ノブヒデデビューの日の今日、私もそわそわしておりますが、放送を見ながら、パァーっと盛り上がりましょう!」
「そうしましょう!今年もノブヒデともども、よろしくお願いいたします!」
オーナーが、そう答えると、続いてカンゴーズの佳澄からも新年のあいさつが始まる。
「みなさま、本日はお招きに預かりありがとうございます。今年こそ私たちもメジャーデビューできるように、このお店でのライブをベースにかんばりますので、本年もよろしくお願いします」
恵も一言、付け加える。
「よろしくお願いします」
「一緒にがんばりましょう!」
ノブさんも大きな声で、カンゴーズに声援を送る。新年のあいさつが一通り終わると、全員着席して、ノブさんやヒデさんが、それぞれのコップにビールを注いでまわる。そして、全員のコップにビールが入ると、高井オーナーがコップを手に、乾杯の音頭をとろうと立ち上がる。
「それでは、私、高井から乾杯の前に、高いところから一言申し上げます」
高井のダジャレに、由美が暖かくつっこむ。
「よっ!いつものダジャレ最高!」
「ありがとう、由美ちゃん。本日は、先ほどから申し上げている通り、ノブヒデの芸能界デビュー、いわゆるプロデビューの記念すべき元旦となりました。これは、ここにおられる中川社長のご尽力によるものだと考えておりますが、今一度、ここにいる全員でノブヒデを関西一、いや全国一にするため、心を一つにして応援する必要があると考えております…」
オーナーの心のこもったスピーチに、感謝の気持ちでいっぱいになっているノブさんとヒデさん。神妙な面持ちでオーナーを見つめている。
「ノブヒデを本当に応援するためには、「彼らは一体、何もので、どこから来たのか」、「二人はどういう人物なのか」をこのメンバーでしっかり知って行く必要があると私は考えました!そうすることで応援にも気合いが入ります」
オーナーのその言葉を聞き、ノブさんと、ヒデさんは、少し首を傾げる。ノブさんの心にある不安がよぎる。
「まさか…」
オーナーは、一段と大きな声で話を続ける。
「ノブさんが、この時代に出現して約1年。ヒデさんは約半年。我々の前にあらわれたこの織田信長公と明智光秀公がなしえなかった夢を今、私たちがお手伝いできる日が来たのです。こんな名誉なことはありません!」
ノブさんは慌てて立ち上がり、オーナーにスピーチをやめるように抗議する。
「オーナー、それは言わない約束でしょ! もう、今まで隠して来たことが、水の泡ですやん!」
続いてヒデさんも立ち上がる。
「わしもそうそう思います!!」
しかしオーナーは慌てる様子もなく、二人にやさしく話す。
「そうかな?」
今度は、オーナーはカンゴーズや由美、中川社長に向かって聞く。
「どうですか? 問題ないですよね」
オーナーが聞くと、全員笑顔で、ゆっくたりとうなずく。それを見ていたノブさんは、「えっ」という表情になる。
「なんでみんな驚かへんねんや。どういうこと?」
オーナーをはじめ全員が、狼狽えるノブヒデの二人を、やさしく微笑む表情で見つめている。




