表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノブヒデ 令和・笑いの乱  作者: ハッシャン
38/42

第37話:初出演

 令和の朝、9時30分の大阪城桜門は、平日ということもあり、人もまばら。ただ桜門の前に陣取っているテレビ番組収録のスタッフ、出演者のグループだけが異様に目立っている。

 番組の本番前だが、ADである田中が、他のADに本番に向け人止めをする指示をしている。

 出演者は、なにわTVの男性アナウンサー、白人とのハーフ顔で2枚目の沖田正志(32歳)と大阪城学芸員の斎藤常雄(55歳)、そしてそしてノブさん、ハリセンを持ったヒデさんの二人。ディレクターの松岡が、カメラマンと出演者に、これから行う撮影の段取りを説明していく。


「ここから桜門に向かって、沖田くんとノブヒデ二人で話しながら歩いて行きます。カメラは3人の後ろから少し離れてと、前から歩きながら。そして、門を潜ったところで、斎藤先生が登場。みんなで先生に挨拶してから、先生の誘導で蛸石のところへ向かう。じゃ、そこまで、一度やってみようか。テスト本番で」


 沖田アナとノブヒデをはじめ、出演者、スタッフが返事をする。


「はい!」


ADの田中が、斎藤先生に近づき、声をかける。


「では、先生は、私と一緒に門を超えた奥のところにスタンバイしましょう」

「はい、わかりました」


 AD田中と斎藤先生は、桜門を潜って所定の位置に向かう、

 沖田アナ、ノブヒデの二人、カメラマン二人と各アシスタントは、松岡デイレクターとともに、もう少し桜門から離れて行く。そしてプロデューサーの漆原やヘアメイクなどのスタッフも出演者3名の後方に移動。

 出演者、カメラが位置についたことを男性ADが確認して、松岡に知らせる。


「全員、位置につきました!」


出演者の前のカメラ横にいる松岡ディレクターが、その声を聞き撮影スタートを告げる。


「では、一度、本番行きます!」


 男性ADが、カメラ横に来て、指でカウントする。


「本番行きます! 5、4、3‥」


沖田アナは、ADのキューサインを見て歩き始め、ノブさん、ヒデさんに話しかける。

後ろのカメラも前のカメラも一緒に移動していく。


「いや〜、ノブさん、とうとうここから大阪城本丸ですね」

「ワクワクしますね〜」

「実は、この門を越えたところで、本日のメインゲストがお待ちかねですよ」

「そうなんですか?」


 3人は、桜門を潜り、右手で待っている斎藤先生を発見。まず、沖田アナが斎藤先生に挨拶をする。


「先生、本日はよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 そう言った後に、沖田アナが、先生をノブヒデの二人に紹介していく。


「こちらが、大阪城の、もっと細かな情報を解説していただく、大阪城学芸員の斎藤常雄先生です」

「よろしくお願いします。ノブヒデのノブといいます」

「ヒデと申します」

「よろしくお願いします。信長風の漫才、面白いですね」

「ありがとうございます!おそれいります」

「では、さっそく、こちらをご案内します」


 と言って先生の先導で、桜門の前の大きな蛸石の前に4人が移動していく。

そこで松岡ディレクターが、大きな声でカットをかける。


「カット!! はい、いいですね〜。一発OKです! ではつづいて、蛸石の紹介シーンに行きましょう!」


 松岡の言葉を聞いて、笑顔になるノブさんとヒデさん。

 ノブさんは、ヒデさんの肩をポンとたたき、ヒデさんの緊張をほぐす。


「今日3回目の見せどころやけど、もう慣れたんちゃう!」

「はい。まだまだハリセン、強くいけますが‥。ノブさんこそ大丈夫ですか?」

「ど〜んときていいよ。次は、叩かれながら、かっこよく信長を演じるから。まかさんかい!」


 AD田中が、蛸石の前で沖田アナと斎藤先生がスタンバイしているのに、ノブヒデがまだ少し離れて雑談していることに気づき、二人を呼ぶ。


「ノブヒデさん、すぐここに来てください!!」


 しまったという表情で、ノブさんとヒデさんがAD田中の方に振り向く。


「すんません!」


急いで、沖田アナと斎藤先生の間に入ってスタンバイするノブヒデ。そこに、松岡ディレクターが近づいてくる。


「ここも、ビシッとお願いしますね、ノブさんの大ボケ、期待してますよ」

「はい、任してください。本番お願いします!」


 ノブさんとヒデさんは、松岡ディレクターだけでなく、沖田アナ、斎藤先生にも頭をさげる。

 男性ADが、ふたたびカメラ横でカウントをはじめる。


「では本番行きます! 5、4、3‥」


 沖田アナが、まずカメラに向かって話はじめる。


「はい、そういうことで、大阪城で一番大きい石、通称、蛸石の前にやってきました」


 その言葉を受けてノブヒデの二人は、蛸石を見渡す。


「これは、安土城の石より大きいわ。なぁ、ヒデちゃん」

「すごいですね。でも、なんで、蛸石って言うんですか?、先生」


 ヒデさんの質問に、斎藤先生が答える。

 先生は、蛸石の向かって左側の模様に近づき、手で模様を示す。


「実は、こちらの模様が蛸に似ているので、蛸石と呼ばれるようになったと言われています。この巨石は、徳川大阪城として再建される寛永元年(1624)に、岡山藩の池田忠雄がここに運ばせました。岡山は、巨石の産地として、当時有名だったんです」

「そうなんですね。ではノブさん。信長やったらこの石のこと、どう言ってたと思います?」


 沖田アナに、そう振られて、ノブさんは、渋い表情になり、凄みのある声で答える。


「織田信長やったら、この石を見て、こう言うてると思うわ。『是非に及ばず。他石及ばず!!』」


 ノブさんは、かっこよく大きな声で決めるが、 一瞬、沖田アナも斎藤先生も、松岡ディレクターもスタッフも「えっ?」という表情で静かになる。そしてこれはまずいという様子でヒデさんがつっこみを入れる。


「そのままやないかい!!」

 

そして、ハリセンがノブさんの頭に炸裂する。


「ビヨヨヨ〜ン」


 ノブさんは、そう言いながらハリセンがめちゃくちゃ効いたように、顔の両側で手を振るわせ、白目をむく。すると、周囲から大きな笑いが起きる。沖田アナも笑いながらノブさんに声をかける。


「ヒデさんのハリセンにまたも救われましたね、ノブさん」


 ノブさんは、すっと正気に戻り、何事もなかったように話す。


「ほんまですわ。ヒデちゃんありがとう」


 ヒデさんも、改った言い方で、ノブさんに答える。


「いえいえ、どういたしましての介‥」


 松岡ディレクターが、満足気な笑顔で渾身の力をこめて「カーーー-ット!」と叫ぶ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ