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三篠家離散日誌  作者: 三篠森・N
第3章 三篠家介護編
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第36話 三篠森・N、『未』完了

 父の手術が無事に終わったようだ。

 大腿骨と骨盤に人工関節を“叩き込み”(実際に病院の案内にあった衝撃的なフレーズ)、麻酔も血糖値も術後も安定したようだ。

 ようだ、というのは俺が父との連絡手段を全て断ったからである。LINEはブロック、電話は着信拒否、俺、母、妹、父の四人で構成される『Y家』というグループLINEもあったが、父は入院初日にすごいLINEをしてきた。うろ覚えだが以下の通りだ。


「もうY家ではありませんが(※母とは離婚、俺と妹は母の姓に変えたのでY姓は父だけ)元家族の皆様のご指導の賜物として無事入院することとなりました。今後ともどうぞよろしくお願いします」


 家族ではない、と二度も強調した上に、リソースは利用しようとするその態度。俺と母はグループLINEを抜け、もう俺は完全に父と連絡を取る手段を消した。これが皮肉の捨て台詞ならまだ人間らしさを感じるが多分天然で言い放った怪物だろう。

 術後はせん妄があったのか妹に意味不明なLINEを送っていたようだが、意識がはっきりしてくると見舞いに来い、と妹に催促するようになったという。


「あなたの誕生日が近いですね。お見舞いに来てくれたら二万円を贈呈します」


 ちなみに以前母と妹が受診に付き添った際に母に日当を出してくれと言われるとグチャグチャに顔を歪めて一万円出したそうだ。母と妹、二人で日当五千円ずつ。だが見舞いに来たら二万円。自分が金を使いたいタイミングなら使うし、妹は金で買えるし飼えると思われている。理屈で言えばパパ活に近い。

 そして話す相手が妹以外にいなくなった父は今度は妹に粘着し、「お前が呼びかけて森にも見舞いに来るように伝えろ。あいつ病気で仕事休んでるから暇だろ」とか言っていたそうだがそのうつ病の原因は父である上に、父は妹に

「森が俺を認知症だと騒いだせいで警察が何人も来たし車のキーを取り上げられて余計な金もかかって迷惑だった」

 と宣ったという。他にも俺をディスりまくっていたようだが、お兄ちゃんの体調が悪化しちゃうから言わないね、でも労いと感謝は一切なかったよ、とのことだった。見舞いになんか行くかバカ。バーカ!


 だが結果として、俺が勝手に首を突っ込みはじまったこの介護、俺は最後の最後にリタイアしてしまい、妹を巻き込むという最悪のエンドを辿ったということになる。

 そしてケアマネさんや医師は、俺を慰めるためかもしれないが

「息子さんが介護に乗り出さなかったらあのまま糖尿病で亡くなっていたかもしれない」

 と言ってくれた。だが「手術のために血糖値を下げた」だけの父はまた戻るだろう。




 さて俺のうつ病だが、心配をかけてしまうがかなり波があり悪くなっている。

 多分前回投稿の頃はかなり好調だった。

 だが休職が終わる頃に再度受診すると「悪いことは言わない」「療養期間として短すぎる」として休職が一か月延長。終わらない療養生活で三月に入った頃から体調が悪化傾向にあった。勉強会でご一緒させていただいてる方々にも妙にハイテンションだったり無口になってしまったり迷惑をかけて申し訳ない。

 食欲が暴発……というか発症直後みたいにポテチが食べたくなったり、夕方母が仕事から帰ってくるとなんだま無性に胸がざわついて謝りたい気持ちが募る。朝起きるとしばらく動けない。今まではそこからモンハンかサイクリングでどうにかなったが、どうにもならなくなってきた。話し方がきつい友人からの電話も無視してしまうことが増えた。

 ちなみにモンハンは鉄蟲糸技完全特化の高機動フルバレットファイア型ガンランス、ランス、ハンマー、大剣にも手を出し始めた。だがやることがなくなってきてしまい、モンハンという安定剤を失う怖さすらある。

 それはいいとして、何より二十年患っている睡眠障害の薬を減らしてしまったために眠れない日々が続き、悪夢を見ることが増えた。

 具体的には意地悪だった父方の祖母は夢でも意地悪、俺が母の姓を選ぶくらいに尊敬していた人格者の母方の祖父母、そして普通だった頃の弟。彼らが夢に出てきて、俺は

「ああ、この人たちがいるってことは夢なんだ」

 と夢の中で気づく。

 あとは小学校しか一緒じゃないのにお互いが浪人の末に大学に入るまでほぼ毎週遊んでいた友人に「ずっとお前が嫌いだった」と言われる夢も多い。これがマジできつい。

 そんな感じで悪夢、睡眠の乱れもあって体調は悪い。ただし何度も言うが自殺や自傷はないから安心してくれ。ただ今日受診したら「半年くらいかかるかもしれませんね」と恐ろしいことを言われた。

 ちなみに手術のミスで父が死ぬ夢も一回だけ見た。その時俺は悲しさと怒りで泣き叫んでいた。

 だから父にも死ねとは思わない。ただしもう分かり合えないとは思った。


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