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シルヴィア、シャルロットと会う。

「ここですよ」

 


  しばらく歩き、たどり着いた部屋のとびらはぎんぎらぎんで。シルヴィアは目をむく。


「ここは先代の王様の趣味で作られたお部屋でございます」


「......そのご趣味、とは?」


「錬金術です」


「......あぁ」


  リリアンナの言った先代の王......とは、現国王陛下の叔父に当たる人物。先々代の王、つまり現国王陛下の父が崩御したとき、あまりにも幼い第一皇子の代わりに帝位についたのが彼だ。民の平和を考え、国のことを第一にして考える、王としては大変評価の高い人物だったという。


「ただひとつ不平を言うとするならば、彼の趣味には皆呆れておりました」


「で、でしょうね......」


  シルヴィアは嘆息する。別段、人の趣味を否定するつもりはないし、人類の持ってできるものを利用し、金を生み出そうとする思想は素晴らしいとさえ思う。

  だが、錬金術に憧れているとはいえ、ここまでお金をかけるのはどうかと思う。


「普段はおとなしく、臣下にも敬意を払うような方でしたから。皆ご褒美のつもりで彼が錬金術にのめり込むのを許していました」


「はぁ」


  それでも、倹約家の母が聞けば目を吊り上げて怒っただろう。


「なんて無駄なの!」


  と。


「では、わたくしは失礼致します」


「え、行っちゃうのリリアンナ!?」



至極当然、とでも言うようにリリアンナはニッコリと頷いてみせる。一介の女官が、自分の管轄外の女性の部屋、しかも王妹の部屋。リリアンナは無理に決まってるでしょうが、と声こそ出さなかったが内心叫んだ。


「わたくしは一時間後、伺いますね」


「いち、じかん……」



魂の抜けたような声でシルヴィアはぼやく。1時間。1時間も王陛下の妹君とシラフで話せと言うのか!



……いやはや一大事である。


「シャルロット様はお優しい方ですから」



一人にしないで、心細いから、というシルヴィアの心の声はことごとく無視され、リリアンナは非常にも立ち去ってしまう。




「……失礼致します」


コンコン、と意を決してそのキンキラキンのドアを叩けば。




「はい」




鈴のなるような、軽やかな声がシルヴィアの耳を刺激した。


「この度、陛下の側妃に加えて頂くこととなりました、ブルーメイン伯爵が娘、シルヴィア・アン・ケイラ・ブルーメインと申します」


「シルヴィア様?待ってね、今扉を開けさせるわ!」


中から、ジュアン!と鋭い声が聴こえてくる。シルヴィアはビク、と体を震わせた。


「シルヴィア様のお越しよ!ドアを開けなさい、今すぐ!」


「は、はい!」


侍女だろうか。うら若い声とともにギギィと扉が開く。シルヴィアはん?ちょっと違うぞ、と思い始めていた。彼女の命令を聞いていると、なんだか高飛車な印象を受ける。あれ?優しいんじゃなかったっけ?いやいや、リリアンナが嘘つくわけないと思うけどさ……。


絶賛混乱状態のシルヴィアを美しい笑みとともに迎え入れたのは年齢の割には幼い印象を受ける、可愛らしい表情を纏った王妹、シャルロットだった。



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