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わらわら  作者: にゃー
9/11

初めての友達

昔の夢を見た。


そう、昔確かにあった光景だったと思う。

よくは思い出せない遠い遠い夏の記憶。


母に手を引かれ並んで歩く幼い私がいた。

蝉の鳴き声が響く細い田舎道を母と歩く。

そのときのお母さんは私に微笑みかけてくれた。

嘘偽りのない笑顔を私に見せてくれた。






気がつくと私は川の上にいた。

1人やっと乗れるくらいの木造の舟の上にいて、川の流れに沿っている。


「……きれい…」


辺り一面、彼岸花で覆い尽くされており、幻想的な景色が続いている。



「よー、なな。起きたか。」


けらけら笑うかんなの声が聞こえた。


「…かんな…」


かんなも別の舟に乗っており、一緒に川の流れに沿って流れて行く。


かんなの顔を見て安心して笑みがこぼれた。


「…うん、ななは泣いてばっかだったけど、やっぱり笑顔が一番好きだ。」


「…かんなに会えて笑えるようになったんだよ…」


かんなは驚いたように目を見開いてこちらを見る。

それから何も言わず微笑んだ。


「…私たちどこにいくんだろ…」


まずここがどこなのかわからない。

暗闇から落ちたはずなのに。


「……私はなんとなくわかっちゃったよ。」


「…またかんなの勘?」


「そうそう、なな曰く根拠がない私の勘。」


けらけらかんなの笑い声が響く。


「ずっと考えてたことだけど私の希望的観測だったから言えなかったけどさ。

たぶん私たちはまだ死んでなかったんだよ。

昏睡状態とか瀕死の人たちがみんなあそこに集まって、死ぬか生きるかの瀬戸際を頑張ってたんじゃないかな。

仮面のあいつらは死の世界か、元の世界に導くためのやつでさ。」


「……かんなはなんで何年もそこに…?

ずっと昏睡状態でいるってこと?」

そんなの……そんなのってないよ…


「私はいままで植物状態だったんじゃないかな…

たぶん色んな管やら機械やらで生かされてるだけの目を覚まさない人間だよ。」


かんなは淡々と述べる。

私はまた泣きそうになる。


「…でも私たち勝手にあの部屋から出ちゃったしこれから死の世界にでも流れついちゃうのかな…」


それでもまだ…まだかんなには救いの話のような気がした。



「ななは大丈夫だよ。」


気がついたらかんなは私の乗っている舟の上にいた。

とても狭い舟の上でかんなは続ける。


「このまま川に沿って行けば元の世界で目を覚ますよ。」


「え…じゃあ私たち生き返るの?」


一度別れを告げた世界だけどかんなと一緒ならもう一度頑張れる気がする。

でもかんなは首を横に振った。


「私はお別れを言いに来ただけだよ。」


私は喜びの表情のまま固まった。



「…ごめんね、一緒には行けないんだ。」


「なんで…」


なんで私だけ…かんなも一緒に…一緒の扉をくぐったのに…



「なな……私はさ、あんたがくるまで心が死にかけてたんだよ…

何年も同じ場所にいて…助けたいと思っても助けられずみんな連れてかれちゃって…もうゆいのことを助けられなかったらもう誰にも声なんてかけないで1人で頑張ろうって思ってた。

でもそんなときにななが来たんだ。」


私がかんなのために何をしてやれたと言うんだ…涙が止まんなくて声が出なかった。

そんな私の手を握りながらかんなは続けた。


「あんた、私の親友にそっくりなんだもん。

顔もそうだけど、そのおどおどした性格とかさ。

しかも名字まで一緒ときたもんだ。」


「えっ…それって…」


「今度こそ助けることができると思ってさ。

わからないだろうけど私は救われたんだ。ただのエゴだと思うけど、ななが来てくれて救われた。

でも少し経ってからはゆいもだし…ななという大切な人のために助けたいって思ったけど」


けらけら。

相変わらずな独特な笑い声をあげる。


「……いやだよ…」


涙も鼻水もおかまいなしにかんなに抱きついた。


「ありがとう、なな。

ずっと言いたかったんだ。」


「……ゆいの……かんなの…ひぐっ…いない世界なんて…耐えられないよ…」


「私のことずっと覚えててほしいんだ…そうすれば私はななの中でずっと生きてられるから。」


なんともくさいセリフだけど、かんなの切実な願いなのだろう。


「忘れるわけないじゃん…忘れられるわけないじゃん……」


「うん……よかった。

私の分も生きてさ、しわしわになったらこっち来てななの色んな話を聞かせてよ。楽しかったことも、嬉しかったことも、悲しかったことも全部ね。

約束だからね。」


私の気持ち無視してくれやがって……

……でも友達のお願いだもん…かんなのお願いだもん…聞いてあげなきゃね…

初めての友達の初めてのお願いだもん…



「かんなはしょうがないやつだから約束してあげるよ…」

私は涙を流しながら皮肉っぽく言う。


「だからしわしわになって私がそっちに言ったら1番のりで迎えに来てよね…約束だからね…」


抱きしめているかんなの身体が透け始める。


「…ななは泣き虫で甘えんぼさんだからね。

しょうがないから…約束してあげるよ。」


かんなの声は震えていた。


「あれ……おかしいな。

泣かないでお別れするつもりだったのに……」


私の肩に涙が落ちる。

でも私の肩が濡れることはなかった。


「またね…かんな……」



「うん。また!」



かんなはけらけら笑いながら消えていった。


私も大声で笑ってみせた。

かんなが消えてからいつしか泣き声に変わっていった。


声帯がはち切れてしまわんばかりに泣いた。


かんなはこんな私を泣き虫ってけらけら笑ってくれるかな。

















気がついたら白い天井が目に入った。

そして私はベッドに仰向けに寝ている。


隣では目を丸くして私の顔を見るお母さんがいた。


「おかあ……さん?」


「なな!」


私は病院にいた。




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