どんな顔をしているのかな
「3人でいれたらいいね。」
ゆいの言葉が私の頭でこだまする。
いやだ…お願い、ゆいをつれてかないで。
私の…私の大切な友達…
「ゆいー!」
生きている頃、病弱だったとは思わせない速さでかんなは仮面の化け物めがけて突進する。
そんなかんなをおかまいなしにそれはゆいを追いかける。
「こっち向けって言ってんー」
「こないで!」
私とかんなは立ち止まる。
最初震えていたゆいは何かを決心したように両頬を手のひらで叩き叫ぶ。
その何かを私たちは理解してしまった。
仮面の化け物に計画がバレないよう一言だけ…私たちに向かって叫んだ。
そんなゆいを見て私は泣くのを我慢できなかった。
でもそんなゆいを私は止めることができなかった。
ゆい…ゆいはそれでいいの?
楽になるために生きるのをやめたんじゃないの?
なんで死んでまでゆいが苦しまなきゃいけなきの?
誰に言うでもなく私は頭の中で連呼する。
なんで?なんで?なんで?
でも逆の立場なら私も同じことをしたと思う。
自惚れなんかじゃなくてほんとにそれくらい2人が大事だから。
だから私はゆいの逃げている様を呆然と眺めることしかできなかった。
かんなも今にも飛びかかってしまいそうな自分を殺してそれを見ている。
どれくらいたっただろうか…
ゆいはまだ捕まらず逃げ続けている。
20分はたったんじゃないかと思う。
私は開ききった黒いドアとゆいを交互に見ながら長い長い鬼ごっこの最中ずっと祈っていた。
はやく出てきてよ。
ゆいはこんなに頑張ってんだから。
涙で視界がかすむ。
そんなぼやけた視界の中で黒いドアのほうで動いている物体が目に入った。
「かんな!ゆい!」
私の言葉に反応した2人は私のほうなんか見ずにそのまま黒いドアのほうに目を向ける。
「きた!」
そう、二体目の仮面の化け物が姿を現したのだ。
二体目の使者の仮面は一体目とは違いツタンカーメンに良く似た仮面を被っており、千手観音のような無数の手などはなく、四肢がばらばらで浮いていた。
頭、身体、足、手がそれぞれ意思を持っているかのようにゆいに飛びかかる。
「ゆい!」
「はやくいけ!」
もう逃げるのも限界だと感じたゆいは焦っているようだった。
「…っ…走れ!なな!」
かんなはかすれた声で叫ぶと私の手を引き黒いドアの方へ全力で駆ける。
私はゆいの方を見れなかった。
ゆいはどんな顔をしているのかな。
自分も助かりたかったと悔しい顔をしてるのかな。
大切な友達を守れたと誇らしい顔をしてるのかな。
私はそんなことを考えながら黒いドアの向こうへ走っていった。
いや…ドアの向こうには道などなく、私とかんなはそのまま暗闇へ真っ逆さまに落ちて行った。
そのとき、少しロビーにいるゆいの顔が見えた。
ゆいはとても幸せそうな顔をしていた。




