きっといれるよ
サイレンの音を聞き、私とかんなが部屋を出たとき、仮面の使者は金山さんを鎖で締め上げ連れて行くところだった。
「金山さん……」
こっちに気づいたらしい金山さんはにかっと笑った。
「じゃあな。かんなちゃん、ななちゃん。仲良くしろよ。」
そんな言葉を残して金山さんは黒いドアの向こうに消えていった。
強い人だと思った。
普通あの場面ならもがき抵抗し悲痛の叫びをあげたっておかしくない。
あの人はここにいる全員を不安にさせまいと気丈に振る舞って見せたんだと思った。
無抵抗な金山さんが連れて行かれるまであっという間の出来事だった。
金山さんには悪いが、これは計画に支障がでるんじゃないかと思う。
あんな勇ましい、安心させられるような行動をとられては抵抗する人が減るんじゃないかな。
そんなことを考えながらかんなを横目で見る。
金山さんが連れて行かれたことを本当に悲しんでいるようで私が考えたことなんて微塵も考えていなさそうだ。
あ…私最低だ…。
「……なな、部屋に戻ろうか。」
「……うん。」
それから一週間くらいたった(たぶん)。
その間、お迎えの使者が来た回数は3回、どれも二体目の使者が動くほどの抵抗もなく終わった。
私たちは知り合って長い時間がたつわけではないが、
私はあの2人を親友以上に感じていた。
2人とも同じ気持ちだったらいいな。
「なかなか、チャンスってものはないもんだねー。」
かんなはため息まじりに呟き、ベッドにうつ伏せになっている。
「しょうがないよ。他にいい案があるわけじゃないし…。」
武器がない私たちが素手であのおぞましいやつらを相手にするわけにもいかない。
サイレンがなる度、私たちはいつでも走れる体勢をとっているが空振り続きである。
一週間くらいたったこととかんなとゆいがいる分、恐怖は若干和らいできた。
もしかしたら私たちもかんなみたいに何年もお迎えが来ないのかもしれない。
だとしたら私はずっとここにいてもいいとさえ思える。
「…黒いドアの向こうでも3人でいれたらいいね。」
ゆいがぼそっと呟く。
私もそう思う。そうであってほしい。
「きっといれるよ。」
かんなはけらけらしながら答える。
理由もなくかんなは言い放つから説得力の欠片もない。
でもそれが私たちの願い。
私はいつだって理由じゃなくて結果がほしいんだ。
いじめられる理由なんて知ったところで何も変わらないし。
私の鼓膜がサイレンの音で振動する。
私たちはベッドから飛び降りた。
「まずは上手くいくことだけを考えよ。」
かんなはのびをして言う。
「うん。」
ロビーにでて数秒後、例の通りおぞましいそれは姿を現す。
そして、それがいつもと様子が違うことに気づくまでまた数秒かかった。
それは迷いもなく、こちらに近づいてきた。
私たちの誰かがー
「逃げろ!!」
頭で考えるより早くかんなの言葉に身体が反応した。
私はかんなと同じ方向に、
ゆいは私たちと反対方向に壁に沿って走りだした。
それはゆいが逃げた方向に身体を向けた。
狙いはゆいだー
「ゆい!」
私とかんなはどうすればいいか考える前にその怪物に駆けていった。




