薬を売ろう
サユリたちが回復した翌日。王都で感染症が流行っているらしい。
病人は隔離され、死人は焼き払われ。凄惨な光景が王との街中で広がっていて、見るもんじゃないと私たちのところに避難してきたのはタケミカヅチくんたちだ。
「薬をくれと役人に縋る国民を見るのはとても可哀想だったよ。薬を持ってないからどうしようもない」
「ふぅん」
「魔の森に薬があると言っていたが……。入ろうとする冒険者が賢者たちに追われて入れないらしい」
「そりゃ私たちの国に勝手に入らせるかっての。情がないっていうんならそれでもいいし」
魔の森はこちらの領土だ。勝手に踏み荒らされて困るのはこちらだ。
対価もなにももらってないし可哀想だと思わないのかと訴えられてもそれは今更だって話だし。むしろ人の国に勝手に入る方がどうかしてると思うけど? そちらが非常事態でもこちらには関係ない。
「薬がほしいなら高値で売ってやるって偉い人に伝えて? 無駄に死者出したくないでしょ?」
「そりゃあ。あの賢者の警備すごいな。俺らですら通してもらえそうになかったし」
「誰も通すなって命令したし」
「賢者たちには誰も今のところ敵わないっての……。俺らには格安で譲ってくれたりしない?」
「そんなこというやつは倍の値段にするぞ」
「冗談だよ」
タケミカヅチくんは笑う。
「とりあえず、ほとぼりが冷めるまで厄介になりたい」
「それぐらいならまぁ」
ただ、働いてもらうけどね?
さてさて。
王都では今現在流行り病が侵攻しています。私たちは冒険者ギルドにやってまいりました。
「ということで、薬を売りたいんですよ。薬の素材一個…三千ギル。で」
「なっ……!」
冒険者ギルド長と思われる人物が声を上げる。
ぼったくりだ? そんなの知るか。相場がわからないけどこれぐらいでも譲歩しているほうだ。
「数としては三千個あります。これを買う以外にこの流行り病を止めることはできますか?」
「…………」
「自分としては買ってもらわなくてもいいんです。特段として困っているわけじゃない。でも、素材が私たちの領土にしかない以上、これを買う以外に収める方法はありませんけどね?」
三千×三千で……九百万。九百万で多少抑制できるのは国として安いほうでしょう?
「国としての危機を九百万という安い金額で助けられるんですよ? 破格でしょう? それとも、もっと安くできると思いましたか? これ以上低くしようものなら今すぐこの薬は燃やしますが」
「わかった。九百万で……」
「素材だけの代金九百万、輸送費十万、制作費、百万ってことで一千十万のお買い上げでーす!」
「なっ……!」
「なにも私は素材だけのお金を請求するわけじゃない。素材自体は三千ギルです。ということで、今すぐ用意してくださいね?」
ギルド長は頷くと、袋をとりに行った。
お金を袋に詰めていく。そして、私たちは木箱に詰めた薬をどんどんと運び込んでいった。そして十分後私はお金を手に取る。結構あるな。
「では、数えさせていただきますね」
ひー、ふー……と数えて、私は火の魔法を木箱に放つ。
「な、なにをする!」
「何をって……。お金を数えてる隙を見て殺そうとしたでしょう?」
「ぐっ……」
ギルド長は剣を持っている。
バカだな。
「それより早く消火しなくていいんですか? 燃え移りますよ?」
「火を消せ! 今すぐに!」
「これで薬がひと箱分消えましたね。あなたのせいですからね?」
ひと箱は焦げ付いてしまい、もはや跡形もなくなっていた。
燃えるの早いな。
「あなたのせいで国民に配る分が減っていくなー。これは冒険者ギルド長としてまずい行いなんじゃないですかねぇ」
「貴様がっ……!」
「私はただあなたに殺されそうになったからやっただけですもん。悪くないでしょ?」
私は笑ってみせた。
「人の命を踏みにじるようなことをしたのはそっちでしょ? なに私が悪いみたいな感じにしてるの? 被害者ぶるなよ」
「ぐっ……」
「私とあなたの手の中にはこの国の命がかかってる。それを忘れて殺そうとしたのはあんただ。あんたのせいだ。あんたのせいで助かる命も消えていく。あんたが悪い」
「やめ、やめろっ!」
「あーあ。人殺しちゃったなぁ。救えるはずの命も死んでいくなぁ。どうしてバカなことしたんだろうなぁ。これから人殺し、民殺しの異名を背負いながら生きていくしかないね。自分のせいですくえるはずの命も救えなくなっちゃって……。ほーんと、バカだねー!」
「やめろおおおおおお! それ以上言うな!」
「あんたは人殺しだ。おめでとう。こちらの仲間入りだ」
「やめてくれ……!」
そう懇願されたのでやめておく。
まぁ、もう精神にダメージ与えたし大丈夫だろう。




