回復
ビャクロたちがたくさん草をとってきたので調合し薬をたくさん作っていく。
一体何個できるんだろう。この量を一人でやるとなると気が遠くなる。
「とりあえずこの薬、人型の人は全員飲んで」
錠剤……ではなく粉薬だ。
私、パライゾ、ワグマ、ビャクロが粉薬を手にし、そして、さらさらと口の中に放り込んでいく。
うわっ、にがっ。
みんなも同じ気持ちなのか、うへぇと顔をしかめた。
「良薬口に青しってやつだな…」
「苦しよそれをいうなら」
「青しってなんだよ」
とりあえずこの薬を二人に届けよう。
この薬を飲むと、ものすごい量の汗をかくという。だらだらと汗をかくのでそれを拭くとあら不思議、熱が下がり、回復するんだとか。
本当か?
とりあえず二人の元に向かう。
はぁはぁと息を切らし、横たわっている。
「サユリ、エリザベス。これを飲みなさい」
二人に薬を飲ませる……。
と、その瞬間、汗が全身から湧いてきた。タオルで拭きとると、穏やかな顔になって目をあけた。
「……あら?」
「おや……」
ええ。すぐ治るのかよ。
二人は周りを見渡し、どうしたんだろうと首をかしげた。
「やっと目が覚めたか」
「パライゾ? 私たちどうしたの? なんで……っと」
サユリの体がぐらつき、倒れる。
「と、とりあえず水を頂けるかしら。すごく……乾いてるのよ」
「ただいまっ」
ワグマが水を汲みに井戸に向かう。
脱水症状か。あんなに汗をかいたんだからそらそうだわな……。っと、こうしてはいられない。粉末状にするのは楽だったし、個包装も自動でやってくれた薬を保管しないと。
いや、便利だね。すぐに粉末になるのは。調合キットっていうもんはとても便利だ。
ワグマが二人に水を手渡した。
「んくっ……ぷはぁ。それで私たち何でここに?」
「感染症に感染していたのよ。結構うなされていたわ」
「感染症? 倒れる? もしかしてフルールク感染症かしら?」
「よくわかったね。それだよ」
「なるほど。さっきの苦かった薬はメピウスの葉ですか。あれ、とても苦いのよね~。甘ったるい香りをしながらも味はとてもとても……。初めて口にしたときは思わず……おっと。これ以上は」
吐いたのか? 吐いちゃったのか?
「これで治った……のか?」
「いえ? まだ治っておりませんわよ?」
「「「へ?」」」
まじで!?
でも、熱はないようだし治ったような気もするが。
「フルールク感染症というのは治っても多少残るもんなのですわ」
「ああ、インフルエンザと同じようなものね?」
「フルールク感染症というのが厄介な点は治ってからにあります。まず多汗による脱水症状、全身の疲労感がすごいのと……あと、幻覚を短時間見るようになります」
「幻覚?」
「メピウスの葉の薬の効果なのですがね……。あの葉にはひどい幻覚作用があるようで。効果がなくなるまで幻覚を見るようになるのですわ」
「……これってあれよね」
「あれだね」
「あれってなんだ?」
なんとなくは察していたけど。
「メピウスの葉って麻薬?」
「そうですわね。麻薬ですわ」
やっぱりか。
現実で似たような名前のオピウムというのが存在する。それはたしかアヘンだったかな? それも言わずもがな麻薬。
似ている名前だから何となくはって感じだったけどね。
「麻薬が薬になるとは……。わからないものね」
「現日本なら禁止されてるけど……。ここは異世界だしね」
「でも、麻薬はいいのか? 治ったとしても幻覚に苦しんで人々が暴れださないか?」
「それ以外に特効薬があるならそっち使えばいいけど、特効薬がない以上、麻薬を使うしかあるまいよ」
強い依存性があるわけじゃない。
あの苦さのどこがいいのかがわからない。が、これは私たちがプレイヤーだからか? これで麻薬の味を知ったら手を染めるかもしれないからかな。
どちらでもいいが、パライゾにも特に依存してる様子には見えない。
「まぁ、生のままだと弱い幻覚で済むのよ。これに熱を通していたら依存性が強まりますわ」
「へぇ」
「生はとても苦く、食べれたものではありませんが……。熱を通すと、なんというか……病みつきになってしまうような甘さなのです」
「食べたことあるの?」
「一度だけ……。もっと欲しいっていう感情が湧きあがってくるし散々でしたわ」
熱を通していないからいいのか。
熱を通したら麻薬になるメピウスの葉。ふむ……。
「というか、なんでも口にするのね」
「当たり前ですわ! 薬を作るのですから、味も知らないと! まぁ、それのせいで結構死にかけましたが」
「ええ……」
「そのおかげが大半の毒は私には効きませんわよ? 抗体ができておりますもの!」
毒草をたくさん口にしたものの言葉だ……。




