阿久津家に向かう道中
絶望する人って…なんか好きです。
理不尽にやられ、絶望し恐怖で喚き散らすキャラって作者大好き
いや、登場しないけど
帰り道。私たち三人と武宮君が歩いていた。
イケメンと帰るっていうのはやっぱり好奇な目で見られたりしていて誰が彼女なのかという憶測も飛び交ってはいるが、私が彼女だっていう人はほとんどいなかった。
色物枠か? 色物枠なのか?
「それにしても武宮がゲームって想像つかないが。ゲームはそこまで欲しいですって感じじゃないだろ」
「俺としても球磨川がなんでゲームするのかが不思議なんだけどな……」
「私は友達がやるからだ。やってなかったら柔道だけやってる」
「なるほど。俺も似たような感じだよ」
似たような感じ?
「俺には七歳と八歳の妹弟がいてな、俺と一緒にやりたいらしいんだ。この前さぼったときに二人の分は買えたんだが俺の分だけ買えなくて俺と一緒にやるのを楽しみにしてた妹と弟がめちゃくちゃがっかりしてな。あと、ネットって子供だけじゃ危ないだろ? だから俺が見張ったりするんだよ。というか、俺がやれない以上、二人もやれないからな」
「……シスコン?」
「それは違うと否定しておくよ」
妹と弟のためか。なんとも優しい。
どうしても欲しかったのは早く妹と弟にゲームをやらせたいからか。過保護というか、なんというか。でも、優しいなぁというのは思う。
武宮君は私を優しいと評価した。けど、本当に優しいのは武宮君だろう。私はそこまで優しくないしな。
「あなたがそれほど欲しがるのは珍しいと思ったけどそんな理由があったのね」
「ああ。それでいくらだ?」
「あら、もらえると思ってなかったのかしら」
「そりゃそこまで都合よくいくわけないしな。今の手持ちは二万くらいだからそれぐらいで頼みたいが」
「買う側が値段決めてどうするのよ」
「だが二万以上となるともはやぼったくりに等しいと思うが」
「それはそうだけどね。なんかそういわれると腹立つわ。売る気が失せる」
「うっ…ごめん」
「そう簡単に謝らないでくれるかしら。見てて不愉快だわ」
マジで嫌い……なわけないんだよな。
武宮君は比較的すかれているほうだ。というか、私も最初こういう態度とられてたし。
「わかった」
「……パン子といい、あなたといい、きつく態度をとる私にそう笑顔を向けてくるのはなんでなのかしらね」
「私は困ったときはとりあえず笑っとけの精神だし」
「パン子らしからぬバカな思想」
うるさいな。
いや、困ったときの笑顔って意外と大事だから。それだけでも前向きな気持ちになれるから! というか、パン子っていうあだ名自体が頭悪いけどね? パンダみたいだからパン子って相当愚直すぎるぜ姉ちゃん。
「俺としてはそうかもしれないっていう自覚あるからな」
「……はぁ。調子狂うわね」
「あはは」
「そうこう話しているうちに月乃の家についたぞ」
「……うわぁ」
武宮君がそういう声を上げる。
私も一目見た時はそういう声出したよ。だってデカいんだもの。豪邸だもの。何億かかってるのかは知らないけど、私の住んでる家よりもはるかに高い値段だろうな……。
「阿久津ってやっぱまじのお嬢様なんだな……」
「まあねえ。ゲームは私の部屋にあるからとってくるわ。あなた方はリビングで待っていて頂戴」
と、家の門を開けて、私たちは阿久津家の敷地内に足を踏み入れた。




