にんげんの工場
続きです。
こんなん流れていたら、私はその場で崩れ落ちる自信があります。
では。どうぞ♪
Brain。
銃声は間断なく続いている。
ゾンビの人も前進して射手を排除しようと試みてはいるが、射弾が集中されているので進めないでいる。
それどころか大なり小なり肉がもがれ削られていくので、どんどんゾンビの人の動きは不自然に成り、ややもすると立って居られない位に銃弾を浴びせられよろめく事すらあるのだ。
「それにしても頑丈ですね。普通ライフル弾を一発受けると当たり所によっちゃ腕一本持っていかれるのに。」
「さあな。ゾンビっぽいからじゃね?」
オレたちはゾンビの人が気を使って引きちぎり置いてくれた、あの分厚い金属製の内側にいて、しかも銃撃がゾンビの人に集中しているからなんてことは無いが、ゾンビの人はそうはいかない。
「何とかなりませんかね」
「なんともならねーよ」
だってこんな状況で飛び出してみろ。その瞬間が命日だろ。
「それにしてもお前落ち着いてんな」
「そうでもないですよ」
「嘘つけ、オレなんかちびりそうだぞ。手だってほら震えっぱなしだ…」
コイツは首を傾げて不思議そうな顔をする。そしてこういった。
「死ぬときは死にますから、気にしても仕方がありませんよ」
肝が妙に座ってんな。何なんだろうコイツ。
それはいい、この状況を何とか変えれないかな?
その時だった。
「ヴぉおおおおおォオオオ!!!」
突如雄たけびを上げたゾンビの人がジャンプして、目測で五・六十メートルを銃撃を受けながら飛び、着地と同時にオレたちを攻撃していた、見るからに映画に出て来る特殊部隊然とした数人の輩を圧縮して肉団子状に代えて抱え、また飛んで着地した先の数人を同じ目にあわせて今度は喰い出した。
「うげっ、マジか…」
「リアル…」
べキバキ。くっちゃくっちゃ。
元人間であった物体を肉塊に代えてかぶりつき咀嚼して、滴り垂れる血液だか体液だかの混じった液体をぐびぐび飲みながら、ゾンビの人がオレたちを手招きする。
「呼んでるぞ…」
「呼んでますね」
「お前行けよ…」
「行かないんですか?」
「めっちゃ怖くて腰抜けた…」
もう。といってコイツはオレを置いてゾンビの人のもとへと走って行き、何やら話すとゾンビの人がぴょんと飛んでオレの目前に着地した。
「はえ?」
いきなりだったので驚いていたら、ゾンビの人のお食事処まで抱えられて運ばれました。
もちろんジャンプで…。
「やっと来ましたね。それと腰大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかな…」
ゾンビの人はオレを運んだことに満足したのか、再び肉塊を両手でつかみ食事を始めた。しかし人間て不思議なもので、こうビックリが重なると腰の抜けも治ってしまうらしく、オレはすっかり心が落ち着いてしまった。
というか、幾つも丸められた人間肉団子をみても、なんとも思わなくなってしまっていた。
こうなってしまうと元が人間とはおもえないしな。それにオレたちを殺そうとした奴らだし…。
だからか、ゴロンと転がされている物を見ても、最早なんとも感じない。なるほど、戦場にいると他人の死に無頓着になってしまうというのは、こういうことかもしれないな。
「で、ここはいったい何の工場なんだ?」
オレは定期的な金属音が響く、奥行き戦艦大和の全長以上はありそうな工場を見渡して相棒に尋ねた。
「ゾンビさんが云うには、どうやら人体の部品を作っているらしいですよ」
「部品?」
「ほら、そこの土管みたいな機械のガラスを覗いてみてください」
「ふーん」
オレは云われるままに土管の窓に顔を近付けてみた。
「うおっ!」
目が合ってしまった。しかも流れていく縦に割れた人間の頭部の目という目と……。
中のコンベアー上を続々流れていたのは、とんでもない数の人間の頭部。それも脳髄などの中身が剥き出しになっているのに、骨格と筋肉は真っ二つに半分だけの人の頭。
そんな頭だけが生きて流されていたのだ。
Brain。 人間の工場。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。




