虎子
虎子
妖獣たちはマモルたちとは反対に向かって歩いていた。マモルたちのいる場所とはかなり離れているため、妖獣たちはまだ彼らの存在には気づいてなかった。森から出て来ていた妖獣たちは数百匹はいるように見えたが、まだその中から続々と現れていた。だがそれらが何の妖獣かは見分けが付かなかった。
マモルは突然、妖獣族の集団に向かって走り出した。カオルは驚いた。彼が走り出したと彼女が思った時には、既に二点間の距離の半分まで彼は進んでいた。彼女は慌てて彼を追い駆けたがもう妖獣たちに迫ろうとしていた。妖獣たちはその時になって漸く彼に気づいたようだった。彼が攻撃を始めた時、彼女はやっと半分の地点を走っているところだった。
「なんて速さなの! とても追い付けない。これじゃ私って単なる見物客みたいじゃない。私が目指してるのは彼を助ける存在なのに!」
カオルは必死に走りながらそう思った。彼女がやっと妖獣たちのいる場所に到達した時、マモルはもう外の敵を全て倒し森の中に姿を消していた。地面に倒れている妖獣を見ると、それらはブルキング族だった。
森の中から絶叫が聞こえ、時折マモルの身体が発する赤い光が木々の間から漏れていた。彼はかなり森の奥深くまで進み、絶叫が小さくなっていき光も次第に見えなくなっていった。暫くすると音も聞こえなくなり、カオルは自分のすることがなくなってしまった。
やがて森の中からカオルの方に人の歩いて来る音が聞こえてきた。草や枝を踏む音が次第に大きくなりマモルの姿が見えてきた。
「マモル……」
カオルは彼の無事な姿を見て安心した。彼の姿がはっきり分かるようになると、何かを抱えていた。彼女はそれが何かを目を凝らしてみると、彼は何か小さな動物を左腕を鉤の手にして載せていた。
「何なのそれ?」
彼が抱えていた動物は虎の子供だった。
「こいつがあいつらに捕まってたんで助けてやった」
マモルは笑顔でその虎の子を見つめた。
「へえ、可愛い! まだ生まれてそれほど経ってないんじゃないの?」
カオルは近くに来たその子の頭を撫でた。
「コラッ! 何、気安く触わっとるんじゃ! オラ、人族なんか大っ嫌いじゃ!」
虎の子が大声で怒鳴った。




