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アルビトリウム  作者: 新条満留
第五章 過去
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来訪

来訪


 マモルは城に戻るとカオルの住む独身寮を訪ねた。だが彼女はまだ帰っていなかった。心配になりコロシアムにも行ってみたが、そこにも見当たらなかった。城門の衛兵に訊ねると、城外へ一人で出かけて行ったという。彼はこんな遅くなっても戻らないのは何かあったのかもしれないと思い心当たりの場所を捜してみたが、どこにも彼女は見つからなかった。念のため思慕川の河原沿いを捜してみたがそこにもいなかった。

 「どこに行ったんだ、カオル?」

 マモルはもう一度、城に戻り彼女の寮を訪ねた。すると彼女はもう寝てしまったということだった。マモルは安心して自分の邸に帰った。訓練で疲れてしまったのだろうと彼は思った。

 ファルもその夜はもう姿を見せなかった。彼は彼女の気持ちを考えて暫くは彼女の好きなようにさせておくことにした。


 それから数日間、マモルはカオルと会うことができなかった。寮を訪ねても病気で安静にしなくてはならないから会えない。そういう理由で見舞いも許されなかった。

 それからの日々をマモルは長老修道会の会合に参加し、兵法の講義を受け、コロシアムで訓練をし、夕方には散策したりしながら過ごした。

 そして遂にエルフ族の派遣軍が帰郷することになった。人族の長老を始め人族の人々がそれを見送った。マモルは何度かエルフ族の野営地を訪れたが遂にハルカとは会えなかった。マモルはエルフ族の見送りを終えると、ファルが部屋に飾る花を摘んでいきたいと言うので城の南側にある小高い丘を登った。その頂には『青麗じょうれいの泉』という泉がありその周囲には珍しい花が群生していた。

 そこは見晴らしもよく目を楽しませてくれた。ファルは早速目当ての花を見つけ、マモルは彼女が摘み終わるまでの間、彼女の隣りに座り景色を楽しんだ。

 すると突然、彼らの背後から声を掛けられた。

 「お久しぶりです」

 彼らは同時に声の方に振り向いた。彼らから少し離れた場所にエルフ族のトーガを羽織った青い瞳と髪のハルカが立っていた。

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