■第27話 爆発的な行動力
ショウタの爆発的な行動力は、自分が信じてやまない ”完璧な案 ”を実行する
為にとてつもないスピードでその足を動かした。
不機嫌なまま口をきかないシオリを、あの手この手で機嫌をとりながら塾まで
送った後まずは近所の新聞屋に飛び込んで、見知った店主に頼み込み早朝の
新聞配達のバイトを早速決めた。
いつから始めるか訊かれ、即座に 『今日! ぁ・・・ 明日っ!』 と答えた
ショウタ。 ヤル気みなぎるその顔に、店主は可笑しそうにゲラゲラ笑った。
そして新聞屋から自宅へ戻ると、慌てて押入れの奥から中学時代の教科書が
入った段ボールを引っ張りだした。 捨てるつもりでまとめていて、しかし
捨てる行為自体面倒になり結局そのまま放置していた、それ。
まるで新品のようなめくり跡ひとつ、マーカーひとつ付いていない教科書。
それらを自室の机の上にドサっと積むと、既にそこに散乱していた漫画本やら
ゲームソフトが雪崩れて足元にバラバラと落ちた。 足の小指に漫画本の角が
クリーンヒットし『痛ってぇ!!』 しかめっ面をして片頬を歪めながらも、
目の前の窓辺にやさしく咲き誇る橙色のミムラスにニヤっと笑い掛けた。
すると、階下から 『ショウタァァアアアア! 晩ごはんっ!!』 母のがなり
立てる声が地響きのように鳴った。
『メシか・・・。』 腕組みをしぽつり呟いて、ショウタはなにか考え込んだ。
そして急いで1階の居間に下りると、台所の食器棚からお盆を取り出し自分の
分の夕飯の器を乗せると、慌てて再び自室に戻って行こうとする。
その後ろ姿に、首を傾げる母と妹。
『ここで食べないの?』
『部屋で食う。 俺には勉強があるからさっ!』 どこか誇らしげに嬉しそうに
ショウタがその口許をニヤリと歪めると、まるでスキップでもするかのように
軽快に階段を上がって行った。
『ベンキョー??』 一切の事情を知らない妹が、片目を眇めて顔を歪めた。
自室に戻って机上右半分に夕飯のお盆を置き、左半分に中学教科書を広げる
ショウタ。
意気揚々と得意顔でそれに目を落とした瞬間、中学の勉強なんて楽勝だろうと
高を括っていた顔が一瞬で青ざめる事となる。
『・・・・・・・・・。』
ぐったりと頭を抱え込んだその手は、夕飯を食べる為の箸を掴んだままで静止
する。 まるで電池が切れたかのように1ミリも微動だにしない、その丸まった
大きな背中。
気が付くと眉根をひそめ不安顔で教科書を睨んだまま結構な時間が過ぎていて、
夕飯はすっかり冷めて硬くなり、ふと壁掛け時計に目を向けるともうシオリを
塾まで迎えに行く時間が迫っていた。
『やべぇな、こりゃ・・・。』
さすがのショウタも、ほんの少し焦り出していた。




