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ゴリラの皮を被って  作者: 彩羽やよい


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20/20

20ウホ目:ゴリラは横スクロールのゲームができない

 ゴリラはゲームが好きだ。

 いろいろとプレイはするが、その中でだいぶ苦手なジャンルがある。

 横スクロールのアクションゲームである。

 そう、配管工のおひげのおじさんだとか、ピンク色の丸いいきものだとか、青くて片手が銃のアイツだとか、そういうのを操作するやつである。


 もれなく穴に落ちていく。

 配管工のおひげのおじさんのゲームを初めてした時などは、元気よく走り出して目の前にいた敵に激突した。

 あの天下にその名を轟かせるおじさんが、まさか敵に一度ぶつかっただけでやられるなどとは思わなかったのである。

 でもよく考えたら、体力バーとかなかった。


 ゴリラはゲームが好きなので、敵を倒したり、キャラクターを動かしたりすること自体は好きなのだ。

 しかし、どうにも横スクロールになると様子がおかしくなる。

 穴があって、敵がいて。

 足場が途切れていたり、動く床があったりなんかもする。

 いろいろなものが画面の中に存在して、もちろん、ゴリラにも見えている。


 見えているのだ。

 なのに落ちる。

 なぜだ。


 タイミングよくジャンプするのも、勢いをつけてジャンプするのも苦手だ。

 誰かが見ていたりすると、

「今絶対行くタイミングじゃなかったのに、そのまま踏み切って跳んでた」

 と言われる。これに関しては横スクロールじゃないアクションでもよく言われる。

 仕方ないじゃないか。ゴリラは、

「行ける! 今だ! いけーー!!」と思ったんだから……。


 問題は、この「行ける!」の根拠が非常に薄いことであろう。

 敵の動きを確認したわけでもなけりゃ、足場までの距離を正確に測ったわけでもない。

 次の着地点を考えたわけでもない。


 ただ、なんとなく、

 「いける気がする!」

 と思ったから跳び、落ちる。

 ゴリラは、もう少し慎重になったほうがいいのではないか。

 そう思って、今度はちゃんと考える。


 敵がここを通るんだから、そのあとにジャンプして。

 この足場に着地して、次にあそこへ行けばいいわけね。

 よし、脳内でのシミュレーションは完璧である。


 そして実際に動かしたら、落ちる。

 なぜ?

 今度は慎重だったはずなのに。

 どうやらゴリラは、慎重になっても下手らしい。

 ゴリラも心の中では横に走っている。

 穴があれば一緒に焦るし、敵が来れば一緒に「うわっ」となる。

 そして、「今だ!」と思った瞬間には、すでにジャンプボタンを押している。

 だから落ちるのかもしれない。


 冷静な第三者から見ると、

 「いや、そこじゃない」というタイミングである。

 でもゴリラの中では、

「今しかない!」だったのだから、こればかりは仕方がない。


 ゴリラはゲームが好きだが、すべてのゲームが上手いわけではない。

 他のゲームでは褒めてもらえるときもあるけれど、横スクロールではただの面白プレイ集だ。

 むしろ、好きだからこそ勢いよく突っ込んでいく。

 敵がいれば倒したいし、穴があれば飛び越えたい。先に進みたいんだ。


 そして、その結果として穴に落ちる。

 たぶんゴリラに必要なのは、反射神経ではない。

 冷静さである。

 「ちょっと待て。まだだ」と、一度立ち止まる冷静さ。

 しかしそれができるなら、そもそもこんなに落ちていない。


 今日もゴリラは画面の前で、

 「いける! 今だ!」

 と叫んでいる。

 そして、画面の中のキャラクターが穴へ吸い込まれていく。

 ……いけると思ったんだけどなあ。

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