ここは何処で私は誰だ
さて、何から知るべきだ。
どう見ても、私が住んでいた日本ではない。大きな天蓋、煌びやかな洋風建築。
ベッド脇にはベルが置いてある。これは使用人を呼ぶベルか。
まずは手足を動かす。健康な体のようだ。咳もでない、熱もない。普通の睡眠から起床したようだ。
転生した、それだけは分かる。直前の記憶は病室のベッドで死を迎えた辛い痛みだ。
それがどうして、こんな豪奢な部屋で寝ている。
……おや、自分の名前すら出てこない……これは問題だ。
さらに問題は続く。いったい何の世界に転生したか分からないのだ。
あぁ最近、ラノベを読み過ぎたせいか。名前も設定も適当に飛ばして、美味しいところだけ摘まんで読んだツケか。
「落ち着こう、落ち着こう……」
繰り返し呟くが、まだまだ考えることはある。ここがゲームやアニメの世界かも分からないのだ。
「案外、過去の中世ヨーロッパ辺りに飛んだのかも……」
そう、その可能性だってある。まずは部屋を探索しよう。一人で確認できる行動をしてから、ベルを鳴らすには早い。
もし私が悪役令嬢だとしたら、いきなりメイドにいびられるかもしれないではないか。
そっとベッドから足を下して部屋の中をぐるり一巡り。
まず、一番に思うことは、好待遇の部屋ということ。本当に埃一つない調度品と家具たち。クローゼットには大量のドレス。
姿見もあった。なかなか可愛い私が写っている。ゆるふわ金髪ロングに青い水晶のような瞳、年のころは14歳程だろうか。瞬間、今の問題を忘れて鏡の前でアイドルポーズ。
現実逃避している場合ではない。
本命の情報量がありそうな文書机に向かう。歴史書や日記があれば、そしてそれを読むことができれば事態は進展する。
「頼む、有益な情報を私に」
そう呟いて、鍵付きの書物に手をかざした瞬間、僅かな発光と共に鍵がカチリと開いた。
あぁ……魔法がある世界だ、きっとそうだ。本人以外は開けられない封印の本だよ、これ。
ぐるぐると考えを巡らせながらも、最新のページから読もうとする。
「読める、読めるぞ!!」
思わず出た興奮の声を聴かれてしまったのか。
「テレジア王女様、おはようございます」
ガチャリと貫禄ありそうなメイドが入室遊ばれた。
王女か~、これはハードモード間違いなしだ。




