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神様、やめました。  作者: 雪平
9/11

神域の混乱

「なんということじゃッ!」


光がおさまった空間に老人の叫び声が響く。

周りの人・・・いや、『神』たちは混乱の極地にあった。


「ど、どういたしましたか、103代様・・・。」


近くにいた一人が叫びをあげた張本人、103代全能神メルトに声をかける。

それにハッ!としたメルトは少し間を置くと、近くにいた今しがたここから消えた『神』の後任である

リーニアに声をかけた。


「リーニア、今の魔法陣を覚えておるか。」

「え、は、はい!」


皆と同じように混乱していたリーニアだったが、メルトの問いになんとか答える。

リーニアの役割は『知識神』であり、その名の通り『知識』や『知恵』に関することを司っている。

そして知識神独自の能力である、『過去を視る』能力を使い今使われた魔法陣を読み取った。


「あの、103代様どうしたんですか、『アステール』さんが何かをしたんでしょうか?」


リーニアにそう問われてメルトは自分で考え込んでいたことに気付く。

そして、メルトは出来れば口に出したくはない事実をそこにいる全員に聞こえるように話す。


「アステールが神の力をもったまま地上に降りた。」

「「「・・・!?」」」


メルトのその言葉に、その場にいた全員が息を飲む。

従来の「地上に堕ちる魔術」は元の実力は残るが神の力を持っていくことは出来なかった。

それができるように、「魔術創造部」も研究はしていたのだがまったく開発のめどは立っていなかった。

それをアステールは一人で誰にもばらさずに開発した。

神の力というのは、『役割』があるときであればその分野以外では、地上では強い部類に入るかもしれないが、それでも人間でも成れるものだった。

しかし、アステールは『全能神』としての能力を持ったまま降りてしまったのだ。

『全能神』の力は、元の役割の力をさらに引き上げその他の能力を、その役割のある神の能力値にまで上げるのだ。

その全能神の力を持ったまま人間に戻ったということは一人で軽く一国を相手どることができる力を持ったということだ。


「103代様、書き終わりました!」


メルトが皆に説明を行っているとリーニアが羊皮紙を渡した。

そこに描いてあった魔法陣をメルトが読み取っていく。読み終わったメルトはその内容を皆に知らせる。


「ふむ、どうやら最悪の事態にはならなさそうだぞ。」


メルトがいった内容は、アステールでも神の力をすべて持ったまま降りることは出来なかったようで、

魔法陣に描かれていた効果はその半分の力を保てるようにするというものだった。

しかし、それでも半分の力があるのだ。

メルトは至急アステールを探しだし、神域に連れ戻すように神達に指令をだした。


「まったく、なんてことをしてくれたんじゃ・・・。」


神達が散っていった部屋でメルトはポツリと愚痴をもらした。




アステールが降りてから一週間がたった。

その間にこの大事件はすべての神々に伝わっていた。その中でも噂好きな神によりさまざまな脚色が付け加えられたりもした。

メルトはそれらの噂を一つ一つ潰して周りながら、アステールを探していた。

しかし、元魔術神の全能神を1000人体制でアステールの魔力を探しているにも関わらずこの一週間、一度も引っかからずにいた。


「どうして引っかからんのじゃ・・・。」


そのことにメルトが頭を悩ましていると、


「見つかりました!」


とアステールの魔力を探していたはずの一人の神だった。

メルトはその報告に喜び、「そうか!」というと詳細を聞く。


「どうやらアステールはエルメニア王国の王都エレメーヌというところにいるようです。」


その国はメルトの記憶にはない場所だった。

(それはメルトが神になったのは何万年も前で、それ以降も地上になど興味をしめさなかったからだが。)

メルトは報告してきた神に場所の詳細をきくとすぐに向かおうとする。

しかし、そこに声がかかる。


「お待ちください。なにも103代さま自ら赴かれる必要はないでしょう。ここは私にお任せください。」

「む、キーロか・・・。」


声をかけてきたのはメルトと同じくらいの年に見える外見をしているが神の中では比較的若い神だった。

メルトはその提案に悩んでしまう。

キーロは自分よりちやほやされているアステールを目の敵にしており、過去に何度かアステールに嫌がらせをしていたりもしている。

そのことを懸念したりもしたが、メルトは最終的にキーロに任せることにした。

しかし、釘をさすのは忘れない。


「では天使を100名ほどつれて向かうがよい。ただ目標は連れて帰ることだ、努々殺すでないぞ。」

「わ、わかっております。」


メルトは少し動揺したようすのキーロに一抹の不安がないではなかった。

もしアステールを殺してしまったら、知識神親衛天使隊の天使達は最後の一人が倒れるまで神域を荒らしてまわるだろうことは想像に難くない。

歩き去っていくキーロの後ろ姿にもう一度溜息を吐くとメルトも自分の仕事に戻る。



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「ふん、なにが殺すな、だ。依怙贔屓しているだけではないか!」


メルトと別れたキーロは肩をいからせ後ろに100人の天使をつれて地上に降りるための部屋に向かっていた。

天使は、それぞれの『役割』のある神につく「親衛天使」と全能神が作れる「専属天使」がいる。

「親衛天使」はずっと『役割』のある神についており、神が変われば仕える相手も変わるものである。

(知識神親衛天使は例外)

次に「専属天使」はその名のとおり一人の神にだけに仕える天使のことである。

「専属天使」は全能神になれば無尽蔵に作れるが、作った当初は感情がまったくない人形のためそこまで大量に作る神はいない。

今回キーロはその専属天使を作り、アステールの元へ向かう。

天使達の実力は一人一人がエルメニアの騎士を十人相手できるほどの力を持つ。

地上に降りるさい、キーロはアステールが使ったものとまったく同じ魔術を使う。

天使を降ろす魔術は別に存在しており、その魔術は天使が力を完全に保ったまま降りれる魔術である。


「行くぞ!貴様ら!」


部屋に着いたキーロが天使達に声をかけるが天使達は顔をピクリとも動かさず魔術の行使を始める。

作ったばかりの天使でありそれは当たり前なのだが、キーロはそれにも機嫌を悪くしたようで、

「フンッ!」と鼻をならすと自分も魔術を使う。

しばらくして部屋が光りだしそれがおさまると、そこにはキーロと天使達の姿はなかった。



しかし、キーロ達は知らない。アステールの反応が一週間なかったのは、転移にそれだけ時間がかかったためだということに。

さらにアステールは自分以外がこの術を使う場合自分の場所からかなり離れた場所にでるという設定を施していたということに。


そして、一週間の時が経ちキーロは地上に出現する。その場所は・・・


「どこだここはーーー!」


「森」にキーロの叫び声が響きわたった。








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