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神様、やめました。  作者: 雪平
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7/11

騎士見習いセーヤの案内

「う~ん、よく寝たな。」


そういって伸びをしたアステールが今いるのは、騎士団本部にある貴賓室の一部屋だった。

内装は騎士団とはいえ貴賓室であるため、多少は華やかであるが控え目で、それでいて美しさを感じさせる調度品の配置であり、アステールは気に入っている。


昨夜、クリストとの試合を終えたアステールはダイオールからの頼みで回復魔術を全員にかけて回った。

その際、何人もの騎士に絡まれていた。最初はアステールが叩きのめしていたが、途中からは隣にダイオールがいたことにより(主に騎士達が)事なきを得ていた。

そしてダイオールが「ここで休んでくれ。」と案内したのが、アステールが今いる貴賓室だった。

さすがのアステールも最初は、まずいんじゃないか、と言ったが、ダイオール曰く、


「今はえらい人が来る予定もないし、そもそもあまり来ないからな。」


とのことだった。

それを聞いたアステールは「じゃ、遠慮なく。」と使わせてもらうことにしたのだ。

(セーヤには遠慮しろとあきれらた。)


そして朝になり窓の外を少し眺めていたアスタールは腹が減っていたことに気付く。

アステールがダイオールに朝食はどこで食べれるのか、と聞きに行こうかとしたところで、ちょうど

ノックの音が聞こえた。


「はい。」

「アステール、ちょっと入っていい?」

「ああいいよ。」

「おじゃまするわよ。」


アステールが反応すると、聞こえてきたのはセーヤの声であり、入室の許可を求めてきた。

アステールが了承すると、セーヤが入ってきて伝えにきたことを言う。


「この時間じゃ騎士団の食堂じゃあ朝食は食べられないから街で食べるようにしなさい。」

「俺、街のこと知らないんだけど。」

「そのために私がいるのよ、今日一日はあなたの案内役に抜擢されたから。よろしくね。」


時刻はまだ全然朝の時間帯である。しかし、騎士達の朝は早いらしく、もうすでに騎士達は全員朝食を食べ終え、それぞれの職務に行ってしまったそうだ。

そういうセーヤも今日は非番だった昨日と違い、鎧に帯刀をしていた。


「その恰好も似合ってるな。」

「え!そ、そう?」

「それよりセーヤももう朝飯は食べたのか?」

「それよりって・・・、はぁいいわ、私はまだよ、どうせ案内するんだからついでにゆっくり食べようと思って。」


アステールの発言に動揺するセーヤだったが、すぐに話題を変えたアステールに落胆するも質問に答える

「ほとんど非番みたいなもんだしね。」とセーヤが悪戯っぽくいうと、歩きだそうとするのでアステール

も後を追いかけ、二人で朝のエレメーヌに繰り出した。


-------------------------------------------------------------------



「おお~これ美味いな!」

「でしょ、ここは週に一回は来ないときが済まないのよね。」


「ご飯を食べるならここ!」とアステールがセーヤに連れられてやってきたのは、騎士団本部に行く大通りの真ん中くらいにある、『食事処 エルム』という飯屋だった。

『食事処 エルム』は朝昼夜と違うメニュー(それも週替わり)を出している。夜は酒場にもなり、なによりも酒も食事も安価のため、住民たちや騎士見習い、それに騎士達も足しげく通っている有名店だった。

そんな中でアステールはセーヤに、「初めてここにきたならこれ!」と言われて勝手に注文された、

朝食セットを食べているのだが、それが存外おいしくアステールも声に出してしまった。

そんなアステールを見て、セーヤは改めてこの青年を見る。


年は自分より4,5歳ほど上と聞いているが、適当な調子からはそんなに離れていないように思えてくる。

しかし、その強さは規格外だった。身長は平均より高いが、ガンベルのような巨漢でもなく、ダイオール

のような引き締まった感じも見ただけではしない。

しかし、その腕でガンベルを吹き飛ばし、ダイオール相手に圧勝して見せたのをセーヤは見ている。

そんなアステールを見ていると、唐突にセーヤはアステールの話が聞きたくなった。


「ねえ、アステールは旅をして遠くから来たんだったわよね。」

「ああ。」

「旅をしていた間のことを教えてくれない?。」

「ああ・・・構わないけど、そんなに面白い話もないぞ?」

「構わないわ。」

「っとその前に。」


もうすでに食べ終わっていたアステール達を、この店の主人が時折にらんでいることに気付いた

アステールは、セーヤを促し店の外に出た。

そしてまたセーヤの案内で長話がしやすい喫茶店のような店に入る。


「こんな店も知ってるんだな。」

「うるさいわね、それより早く話してよ。」

「はいはい。」


アステールがセーヤをからかうがセーヤはそれに取り合わず催促する。

そこからアステールが話始めたのは、故郷を出て初めて出くわした魔物がAランクの魔物だったが、当時からすさまじい魔術と剣術を使えたアステールが初めての対魔物戦に苦戦しながらも倒す話や、その他もいろいろな話があり、極めつけはあの『死神』に会ったというのだ。

アステールの語りは淡々と話ているがセーヤはそんな法螺のような話に次第に引き込まれていった。


「あーもうこんな時間か。」

「昼飯はどうするんだ。」

「う~ん・・・。」


話が全て終わったころには昼時をとっくに過ぎており、朝食も少し遅めに摂ったためあまり腹はすいておらず、結局、通りの屋台で適当なものを買って食べようということになった。

二人が外に出て少しすると、アステールがこの後の予定の相談をしてくる。


「この後はどうするんだ?」

「そうね・・・、あ、アステールも冒険者なんだからなにか依頼を受けてみたら?」

「依頼か・・・。いいな、そうしようか。」


そう決まると二人はすっかり覚えた(アステールは二回しか通っていないが)路地を通ってギルド本部の石造りの建物に入っていく。


「あら、アステールさん。それにセーヤちゃんも今日はどうしたの?」

「せっかく冒険者になったから依頼をと思ってね。」

「ふーん・・。じゃこれなんかどうかしら。」


受付にいたのは昨日と同じ受付嬢のカーラだった。

カーラはアステールの言葉を聞くと、一瞬セーヤに意味ありげな笑みを向けるとアステールに依頼の紹介をしていく。

セーヤはこの茶髪で年上のきれいな人が何故そんなことをしたのか分からず首を傾げる。


「ああ、これなんていいな、マンモスベアの討伐。」

「でもこれは・・・。大丈夫だったわね、ただ万が一失敗すると違約金が発生するから気を付けてね。」


依頼書を見ていたアステールが目をとめたのはマンモスベアぼ討伐である。

マンモスベアは普通の熊が魔物化したものであり、通常の熊の二倍ほどの巨体に長い体毛、それに巨大な牙が特徴であり、Bランクに分類される。

一瞬カーラはアステールをとめようとするが、昨日の様子をおもいだし、アステールなら大丈夫だろうと思い、依頼の処理を進めていく。


「じゃ、場所はこの地図に書かれてあるから気を付けていってきてね。」

「おーい行くぞセーヤ。」


カーラに地図を受け取ったアステールが何故か首を傾げているセーヤに声をかけ、ギルド本部を出ていく。



----------------------------------------------------------------



城門をでた二人はカーラに渡された地図に描かれていた、マンモスベアが出るという場所まで来ていた。


「ここが、マンモスベアがでるっていう森か。」

「城門の騎士の話ならここ最近山賊もでるらしいわ。」

「ならついでに山賊退治もしていくか。」


そう何でもないようにアステールは言う。

実際セーヤも昨日のことでそれが何でもない事だということを理解しているので、あきれるだけで何も言わない。

かわりに早く終わらそうとアステールを促す。


「早くマンモスベア倒して山賊・・・はどうでもいいからさっさと帰らない?」

「いや、もっと冒険とかさ、いろいろないのか?」


アステールはセーヤの発言に呆れているがセーヤはそんなことに頓着はしない。

そして二人はどんどん森の奥に進んでいくと、


「アステール!来たわよッ!」

「ああ、セーヤは下がっていろ。」


森の奥から目当てのマンモスベアが出てきた。

セーヤは剣を構えようとするが、アステールはそれより早く前に出る。


「グオォァァッ!」

「うるせえ。」


立ち上がって咆哮を上げたマンモスベアにアステールが一瞬で近づくと、そのままマンモスベアの腹を

殴る。

それだけでマンモスベアは大きく後ろに飛ばされるが、Bランクの魔物はこの程度では倒れずアステールに向かって走ってくる。

その頭をアステールはなんの気負いもなく蹴り上げると、軽く跳躍しさらに踵落としをくらわせる。

そしてマンモスベアの頭が打ちつけられたことによる砂埃が晴れたころとセーヤが近寄ってくる。


「はぁ・・・。あなたってホントにでたらめね、この調子じゃ死神にあったってのも嘘じゃなさそうね。」

「ああ、実はあの死神にあったってのは続きが・・「助けてくれぇーーー!」」


セーヤの呆れたような感想にアステールはなにかを言おうとするがそれは男の悲痛な助けを求める声にかき消される。

アステールとセーヤは一瞬目をあわせると、一斉に走りだした。

走力の関係でアステールが手を抜いてもセーヤの方が遅くなってしまうが、それでもアステールより少し遅れてセーヤが見た光景は、



―――血の海にたたずむ死をまとった男だった。―――






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