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神様、やめました。  作者: 雪平
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騎士団長ダイオールとの戦闘

ダイオールに案内されて訓練場に向かう途中、セーヤがアステールに話しかけてきた。


「団長は冒険者でいうところのS級クラスよ。あなたならだいぶもつと思うけどせいぜい死なないようにしなさい。」

「なあ、一個聞いていいか?」


アステールが質問をしようとする。セーヤが続きをうながすと、


「なんで、騎士団長様は戦おうとするんだ?門番の様子じゃ初めてでもなさそうなんだが。」


アステールのもっともな質問に、「ああ」と言ってセーヤは答える。


「団長は極度の戦闘狂でね、団長も元々は貴族で、さらに長男だったんだけど、強者と戦いたいがために騎士団に入ったってもっぱらのうわさよ。おかげで付いた呼び名は『戦闘卿』。そのまんまだけどそれが一番団長を表しているわね。この特別な仮宿システムもそのためよ、「街やギルドで強そうな奴がいたら騎士見習いでも遠慮せず連れて来い。」っていう御達しよ。」


貴族の長男とは、通常家をつぐため剣の練習はしても騎士団に入ることはあり得ない。

ダイオールの実家はかなりもめたことだろう。

アステールがダイオールの実家の事情について邪推していると、

ダイオールが立ち止り、すぐ近くにあった大きな扉を開ける。


「さぁ着いたぞ。ここがこの本部の一番の自慢だ。」


そういってダイオールがアステールに見せたのは、広大な本部の建物の四分の一は使っているであろう

訓練場だった。


「この広い本部の半分が宿舎、残りのもう半分が、まぁ執務室群で、その残りをここに使っている。

 このサイズはなかなか他国でもお目にかかれないぞ、ここで普段は集団戦の訓練なんかもする。」


施設の説明を一通り終えると、ダイオールは早速本題にはいった。


「さて、アステール君。君はどんな武器を使うのかな、見たところ丸腰のようだが・・・」

「ん?ギルドでの俺の戦いの報告は入ってんじゃないのか。」

「ハッハ、恥ずかしながら詳しいとこまでは知らないのだよ。」


アステールの問いに、そういってダイオールは説明する。


「ギルドの時は木製のロングソードだったな。」

「ふむならばそれをつかうかね?」

「ああ・・・」


返事を聞いたダイオールが早速準備をしようとするが、アステールに「待ってくれ。」と言われる。


「ロングソードも使うが前半は魔術で行かせてくれ。」

「魔術?」

「ああ、そもそも俺は武術や剣術より魔術の方が得意なんだ。」

「それにしては杖をもっていないようだが・・・。」


ダイオールの問いはもっともである。

通常、魔術は杖の補佐を得て発動させるものである。

杖なしで魔術を発動させると、宮廷魔術師でも雑魚の魔物を倒せる程度である。

杖以外でもできる物はあるが、それすらもアステールは身に着けてはいない。

しかし、そんなダイオールの問いに対してアステールは、


「必要ない。」


といった。それを聞きダイオールはさらに笑みえを深める。





「さて、面白くなること期待しているよアステール君。」

「俺はさっさと寝たいんだが。」

「むろんそれについては保障するよ。」


今、アステールとダイオールは少し離れて対峙している。

アステールの条件はダイオールが「面白い。」と二つ返事で了承したことにより採用された。そのため、魔術師に近距離は不利なので、公平にするために開始位置は離れている。

その際セーヤは、アステールに「大丈夫なの?」といったがアステールは相変わらず「大丈夫」とかえした。

訓練場には自分たちの団長の勇姿を見ようと、日がもう沈んでいるにも関わらず多くの騎士や騎士見習いがいた。


「部下たちの前で恥はかけないからね。最初からある程度力をださせてもらうよ。」

「好きにしてくれ、俺はいつでもいいぞ。」

「ではセーヤ君頼んだよ。」


審判にはセーヤが選ばれており、ダイオールが開始を促す。

セーヤはそれにうなずき開始の合図をした。


「それでは、はじめッ!」




----------------------------------------------------------------------




開始の合図と共にダイオールは走りだした。

ダイオールは、アステールを剣技だけで自分と同じか少し下だとおもっていた。

そして剣技だけでこれほどの実力があるのに、果ては魔術まで操るのだ。総合戦闘力は自分より上であろう、とダイオール推測する。

そして、その推測に違わず、そこそこの威力の『火球』(ファイアボール)が飛んでくる。


「・・・ッ!」


それを剣で切り裂き、ダイオールは再び前進する。

アステールを見てみると右手に刃の潰したロングソードをぶら下げ左手をダイオールに向けて、少し驚いた顔をしている。

それはそうだ、とダイオールは思う。

普通魔法を切り裂くなんてことは出来ない。これを見て驚かなければダイオールは自信をなくしていただろう。

そして、表情を笑みに変えたアステールは右足で地面を軽くたたく。


「くッ・・・」


背筋に悪寒の走ったダイオールが横に飛ぶと、先ほどまで自分がいた場所に『土針』(ニードル)で出来た針が飛び出ていた。

この二撃だけで、相手は城の宮廷魔術師より魔術の実力も上であることを悟る。


(こいつは、全身全霊で挑まねばならないな・・・)


ダイオールが全力で戦う覚悟を決めると同時に、アステールは屈んで左手で地面をたたいた。

警戒するダイオールの目に入ってきたのは『創土』(クラフト)で作られた三体のゴーレムだった。


「なっ・・・。」


訓練場に動揺が走る。

ゴーレムを三体同時に作るというのは、杖を持ってもできない魔術師がいるほど、高等な技なのだ。

それを杖もなしに作るというのは、ありえないことであった。


「行け。」


アステールがゴーレムに命令すると三体のゴーレムはダイオールに向かっていく。そのスピードはそこそこ速く、近づいてくるダイオールとの間はすぐに縮まる。

が、ダイオールは騎士団長である。近づいてきた先頭のゴーレムを一閃して倒すと、続くゴーレムのパンチを躱し、さらに一閃する。

最後のゴーレムの頭をハイキックで砕くと観戦者から歓声が上がる。

それほどまでに鮮やかな手際であった。

ダイオールの勘違いでなければアステールもどこか称賛するような表情になっている。


――だが、次の瞬間ダイオールを絶望が襲う。


ゴゴゴォ、と訓練場が揺れたかと思うと、ダイオールの周りに二十体ほどのゴーレムが現れた。

先ほどのゴーレムはダイオールの1、5倍程度の大きさだった。今回のゴーレムはそれより小さく、

ダイオールより少し大きい程度だったが、感じるプレッシャーから先ほどより強いものだということが分かる。

それが、二十体。ダイオールの顔が意図せずひきつる。

しかも、ゴーレムが出たときアステールは少しも動かなかった。

つまり、本来先ほどゴーレムを出したときのような行動は必要なかったのである。


「攻撃。」


アステールの短い命令がまたも響く。

その言葉を受けた瞬間、ゴーレム達はダイオールに攻撃を始める。

ダイオールはそれをいなし、躱し、切り付け、徐々にゴーレムの数を減らしていく。

そして全てのゴーレムを倒したダイオールに声がかかる。


「さすがだな。いや、正直いって舐めてたわ、ここまでできると思わなかった。」

「それはどうも、それより君はあれほど魔術をつかっても堪えたようすはないな。」


そう、杖もなくゴーレムを二十体出すなどという大技を使ってまったく堪えたようすのなさに、

ダイオールも戦慄を隠せなかった。


「ま、もう魔術はこの程度でいいだろ。次はあんたの領分のこれでやろうぜ。」


そういってアステールは右手にもった剣を見せる。


「私は先ほどので疲弊しているのだが?」

「ああ、そうだったな。」


ダイオールの言葉に何でもないようにアステールが答えると、ダイオールの体を光が包んだ。

すると先ほどまでの疲れが嘘のようになくなりダイオールはアステールを見やる。


「回復魔術か・・・」

「疲れてるとつまらんだろ。」

「ああ、そうだな。」

「んじゃ、仕切りなおす・・・かッ!」


そして、剣を構えたダイオールに向かってアステールは一瞬で詰め寄るとダイオールに剣をふりおろし、

その剣をダイオールが受け止める。

その光景に、ダイオールの得意分野に移り安堵していた騎士たちの表情がこわばる。

騎士見習いは言わずもがな、ほとんどの騎士が今の攻撃を見切れなかったのだ。


「やはりッ・・・剣でも私にならぶかッ!」

「それはどうかなッ!」

「!?ガッ・・・!」


声をかけてきたダイオールに返事をし、ついでに回し蹴りをくらわす。

間一髪防御は間に合ったようだが、少しダメージをうけ、アステールとの距離を離された。

アステールはすぐに追撃せず、ダイオールが剣を構えなおすと再び両者は激突する。

そこからの試合はすさまじいものだった。

アステールの攻撃を紙一重でダイオールは躱し、アステールのさらなる斬撃を受け止め、逆にアステールに突きを放つ。

時に武術すらも交えて行われる神速の試合に騎士たちはついていけなかった。

永遠に続くかとおもわれた試合がついに終わりを迎えた。

先ほどから鳴り響いていた剣閃が止み、砂埃が舞い上がった。

砂埃が晴れた瞬間、その光景に騎士たちは息を飲み、次の瞬間、立っている相手に恐怖にちかい畏怖を覚えた。


砂埃が晴れた瞬間寝そべっていたのはダイオールであり、その体には小さいながらも無数の傷があった。


対するアステールは―――砂に汚れているものの、『無傷』でダイオールを見下ろしていた。―――












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