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神様、やめました。  作者: 雪平
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騎士見習いセーヤ

ここは、エルメニア王国。その首都、エレメーヌである。

エルメニア王国はイート歴1230年で創設300年を迎える歴史の長い国である。

その首都エレメーヌは、エルメニアの王侯貴族が住む城を中心に、八方向に大きな通りがまっすぐある。

その内の、東・西・南・北に門があり、残りの四つ通りの先にはそれぞれ、闘技場・博物館・騎士団本部・ギルド本部がある。

通りの様子は、門がある東西南北はまさに雑多なかんじのする出店がでていた。

食べ物や果物を売っている店や、旅に必要な道具、はたまた武器を売っているところまである。

そこには、門からやってくる旅人のほかに、この首都の住民の姿も決してすくなくなかった。

そんな大通りを、一人の少女が歩いていた。


「うーん、今日も平和ね~。」


そうやって、伸びをしながらあるくのは、年のころは15、6。少し長い金髪をポニーテールにして、元々は白かったであろう少し焼けた肌に、正義感に満ちた顔を浮かべているラフな服装の少女は、

名前を、セーヤ・ドレットという。

苗字があることから、貴族であることがうかがえる。

父は、カタール・ドレット男爵であり、セーヤはドレット家の次女として生まれた。

父と母の愛に育てられたセーヤは、幼い頃からの剣の才能をさらに成長させ、弱冠16歳にして(さらに女の身でありながら)騎士見習いになった。

通常、貴族の娘は余所の家に嫁ぐのがふつうなのだが、セーヤの才能と努力、さらには母の後押しもあり、無事、騎士見習いになることができた。

この騎士見習いというのは、字面だけ見ると大したことがないように聞こえるが、エルメニア王国の騎士団は他国より、精強であることが知られており、エルメニアの騎士一人で、他国の騎士五人は相手に出来る、と言われるほどである。

ゆえに、たとえ騎士見習いであっても、簡単になれるものではないのだ。  

  閑話休題

セーヤは今日、非番であるため、下は、くるぶし上まであるズボンに、上はどこにでもあるふつうの服とラフであるが、腰には万が一のために細見の剣が下げられていた。


「あらー、セーヤちゃんじゃないの、鶏の串焼き買っていくかい?」

「じゃあ、貰おうかしらね。今日は非番だし。いくら?」

「銅貨10枚だけど、今日も可愛いから8枚でいいわ。」

「いつもありがとうね。」

「日頃のお礼だよ。 まいどありー。」


馴染みの露店のおばちゃんと話して、鶏の串焼きを一本買う。

露店のおばちゃんが言うとおり、セーヤはかなりの美少女である。

しかし、それだけではなく、その人柄もすごくいいのだ。事実、その人柄と容貌から、かなり町の人に慕われており、人気者なのである。


そんなセーヤが快晴の空を眺めながら歩いていたいると。


「お前やんのかオラッ!」

「上等だコラっ!」


という声が聞こえ、その方向を見ると喧嘩が始まろうとしていた。

このような喧嘩は日常茶飯事であり、周りの住民も面白半分で野次馬をしていた。

が、今回の喧嘩は冒険者同士のようだ。下手をすると周りの野次馬たちにも被害が及ぶ。

そこで、セーヤは止めに入ることにした。


「はいはい、あなた達。往来でそんなことするのはやめなさい。」

「アァッ!なんだ、てめぇは!」

「女はすっこんでな!」


しかし、案の定冒険者たちはセーヤに突っかかってきた。

が、セーヤはこの町の人気者である。そんなセーヤに罵声をあげて周りの住民が黙っているはずがなかった。


「てめぇら調子のってんじゃねぇぞ!」

「そうよ、セーヤちゃんになんてこというのよ!」

「な、なんだよ・・・」


思わぬところからの攻撃に冒険者達は驚いていた。

その間にも、住民からの罵倒は止まらない。


「は~い、皆ちょっと静かにね。ほら、あなた達も興がそがれたでしょ、早く行ったほうがいいわよ。

 精神衛生上ね。」

「けっ、わーったよ・・・」

「なんなんだこいつらは・・・」


セーヤが住民たちに声をかけ、冒険者達に解散を促すと、冒険者達はしぶしぶながらそれぞれ別の方向に歩いて行った。

それと同時に住民たちも散らばっていく。中にはセーヤに声をかける者もいたが、どれも一言、二言であり、全員が散らばったのを確認するとセーヤは再びあるきだした。

思わぬ仕事をしてしまったが、今日のセーヤは非番である。(かと言って特に目的もない散歩なのだが。)

しばらく、セーヤが露店を冷やかしたり、小物などを買って歩いていると、


「おいてめぇ!なにぶつかってんだ!アァ!」

「あんたからぶつかってきたんだろうが・・・」

「口答えすんなや!」

「そーだ、そーだ!」


そんな声が路地のほうから聞こえてくる。通常、喧嘩などこの短時間で起こるものではないのだが、今日のセーヤは運が悪いらしい。


(私には、非番がないのかしら・・・)


そんなことを思いながら声のしたほうに向かってみると、三人組の男が一人の青年を取り囲んでいた。

さらに、三人組の方は冒険者のようだが、青年のほうは、そんな風には見えない。

これはマズイ、とセーヤは少し急ぎ声をかけた。


「冒険者が三人で一般人を囲むなんて、どういう了見かしら?」

「なんだてめぇは、こっちは取り込み中なんだよ。」

「ガキは向こういってな。」

「そーだ、そーだ。」

「・・・・。」


やはり外見が少女、それも美少女であるためだろうか、初対面の相手には必ずといっていいほど侮られる。

この三人も例外ではなく、セーヤのことを子供扱いして追い返そうとする。

一方、青年のほうは、セーヤのことを少し眺めると、三人組のほうを再びみる。


「私これでも騎士見習いだから、とりあえず話を聞かせてくれないかしら。」


と、セーヤが主張するも、


「ぎゃっはっは、こんなガキが騎士見習いとは。俺なら騎士団長ぐらいになりそうだな!」

「面白い冗談だな、ガキが。」

「そーだ、そーだ。」

「・・・。」


三人組は大笑いしてまったく相手にしない。そんな風景をみても、青年は表情を変えない。

三人の態度に少しムカついたセーヤは、


「うっさいわね、そんなに信じられないならみせてあげるわ。来なさい、万年D級冒険者が。」

「アァッ!てめぇ、痛い目みてぇようだな・・・。」

「ちッ!半殺しにしてやる。」

「そーだッ!そーだッ!」


三人組を煽ると同時に剣を抜き、地面に突き刺し、鞘を構えた。

実際、三人組の実力はD級程度だとセーヤは判断した。

(冒険者は、F~SS級まであり、セーヤはC級上位程度の実力である。)

そんなセーヤにしてみればD級三人の相手は高確率で勝てる相手である。さらに、三人の内、二人は大柄であるため、狭い路地ではセーヤが有利であった。


「泣いて謝るまってもゆるさねぇからなッ!」

「こっちのセリフよ。」


最初の一人がセーヤに掴み掛ろうとするが、その手を避け、男の鳩尾を鞘で突く。男はそのまま気絶してしまった。


「ぐッ・・・」

「まず、一人ね。」

「てめぇ・・!死ねやッ!コラァ!」


仲間を一人倒され、激高したもう一人の大柄な男がセーヤに殴り掛かってくるが、それを華麗に避け、後ろに回り込み首に一撃与える。


「がッ・・・」

「二人目。」

「ヒィィ!?」


大柄な男二人をそれぞれ一撃で倒され、残った男は路地の奥に逃げて行ってしまった。


「いや~素晴らしい剣技だったね。」


突然背後から、拍手とともに声が上がる。

セーヤが振り向くと先ほどの、囲まれていた青年がいた。

セーヤより頭一つ分背が高く年は20前後だろうか、適当にそろえられた黒髪に、きわめて普通の旅装をした青年だった。


「エルメニアは騎士見習いでもなかなかの強さと聞いたけどその通りだったね。」

「何故か上から目線な気がするけど、褒めてくれるのはうれしいわね。」

「俺そんなに上からだった?」

「そうね。」


セーヤがそういうと、青年は何故か若干落ち込んだが、すぐに立ち直るとセーヤにお礼を言ってきた。


「いやでも、改めてありがとうね。あいつらしつこくてさ。」

「なら、もう路地には入らないことね。」

「いや、そうなんだけど・・・。聞いてくれよ、この町八本の大きい道が放射線状にならんでるだろ?

 だから、路地通ったら早くつくかなーと思ったんだけど。」

「あなた、エルメニアの騎士の話は知ってたのに、エレメーヌの路地のことは知らないの?」


そう、エルメニアの騎士の話と並んで有名なのがエレメーヌの路地の複雑さなのである。

それはエレメーヌに最低一年住まねば必ず迷うという話であり、実際に帰ってきていない人がいるとかいないとか。

エルメニアの騎士を知っていて、エレメ―ヌの路地の話を知らないとはいささか不自然であったが、


「仕方ないだろ、遠くからきたんだから。」

「はぁ、そう。」


青年はそんな風に説明した。

セーヤはそんな遠くから何をしに来たのか、という疑問とともに、そんな遠くにもエルメニアの騎士の話が届いていることに誇らしさを感じた。


「うん、そうね。案内してあげるわ、どこに行きたいの?」

「ギルド本部だけど・・・いいのか?」

「ええ、ちょうど暇だしね。」


青年の発言に気分を良くしたセーヤは、案内を買って出た。


「ギルド本部ね。何しにいくの?」

「冒険者登録。」

「遠くから来たのに?」

「いろいろあるんだよ。」

「ふぅん・・・。」


エレメーヌの話を知らないほど遠くから来ておいて冒険者になっていないのはおかしいのだが、青年は言いたくなさそうな雰囲気だったのでそれ以上聞くのはやめた。


「そうだ、私のなまえは、セーヤ。セーヤ・ドレットよ、言ったと思うけど騎士見習いよ。あなたは?」

「貴族様だったのか。おっと、これは失礼かな。」

「気にしないでいいわよ。それより名前は?」


そういえば名前を教えていなかったと思い教えると、セーヤが貴族だったことに青年はおどろいたようだった。


「ああ、俺の名前はね・・・。」







――――――アステールだよ。―――――――




その日から、その青年を中心にセーヤの人生は大きく変わる。








冒険者Cのセリフ・・・・

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