21話
「……お疲れ様」
その言葉で、リンはその場にへたりこんだ。
周りにモンスターの姿は見えない。リンは数での、レベル差での不利を押し切り、なんとか勝利した。途中回復を受けたものの、それは自分の手ではどうにもできないこと。もともとトーマがアイテムを使った回復を禁止していて、さらにスキルも覚えさせていないため、戦わせたトーマ自身としては満足できる結果だった。その理由としては、スキルポイントを集中させるためと、回復をする暇があったら戦っとけ回復はしてやるから、といったところである。
「はぁ、はぁ、つ、疲れましたぁ~……」
リンが、先程までの鋭い剣幕を全く感じさせない間の抜けた声で言う。
助けてもらえるとはいえ、与えられるダメージは確かなもの。近づく武器も確かなもの。恐怖や緊張は相当なものだったのだろう。心底疲れた、といった様子である。
「……じゃあ、次」
しかしそこはトーマ、座り込むリンをおいて容赦なく歩き始めた。
リンが置いていかないでー、と手を伸ばして、情けない声で言う。
「と、トーマさぁん、少し休憩を……」
それをトーマ、なんと首肯した。
「……別に、いいけど」
「え、えぇっ!? いいんですか!? 本当に!?」
まさかの許可。頼んだこちら側が思わず驚く展開に、リンは目に加えて口も大きく開いた。
しかしトーマは足を止めない。
「……でも、そこ無限湧き」
「今すぐ行きます急いで行きますだから置いていかないでー!?」
あんな激戦を、好き好んで連続して繰り返したくない。
心の底からそう思ったリンは重たい足を必死に動かして、トーマの後ろを付いていく。
それぞれのフィールドには、休憩ポイントのようなものが設置されている。それは疲労度による鈍足状態がある設定上、休憩なしのままでは戦い続けることは不可能だからだ。
「……ここで、休憩」
「は、はひ……やっと、終わった……」
今度こそ休憩できる、とリンはへたりこむどころかずさーっと前のめりに倒れ込んだ。
トーマから差し出された食事を受け取り、座れそうな手頃な石を選んで座る。
疲労度も回復し、息も整い。リンはようやく口を開けるようになった。
「ふぅ。……それで、あれでイベントは終わりですか?」
「……違う」
「で、ですよね。それじゃあまだ鳴り止まない声の意味もわからないですし……」
苦笑しながら、周りを見回しつつリンは言う。海藻を見る前から聞こえてきていたあのすすりなく声が、まだ鳴り止まない。だんだんと底冷えするような恐怖が湧き上がってきて、常に話していないと落ち着かなくなってきた。
リンが聞く。
「それじゃあ、一体これから何があるんですか? というか、ミッション一つも受けてないですけど、マラソンっていつ始まるんですか?」
「……開始自体は、いつでもいいけど。問題なのは、リンの体調」
「と、言うと」
「……こっから、さらにキツい」
「ですよね」
最早予想していた言葉にリンは頭を抱える。
「……でも、ここで休憩していても何も始まりませんよね。一応、話だけってこと、いいですか?」
「……いい。これからは、リンも気になってるあの声の人、会いにいく。それがクエスト目標、まず一つ目のクエスト」
リンが頷く。
「……そしてその道中、また一人NPCに出会う。そいつは単純なモンスター討伐。そのルートの途中、もう一人。それはアイテム回収。で、エリア制圧のNPC。次は……」
並べられるNPCの数に比例して、リンの冷や汗が増えていく。
「ちょ、ちょっと待ってください。さすがに、多すぎやしませんか?」
「……でも、大体それぐらい。同時にこなすクエストは、最大で4つ」
「よ、よん……」
フッ、と思わず意識が遠ざかるような気がした。
同時に4つもミッションをこなすなんて、しかもおそらくすすり泣く声はイベントクエストの類。長丁場になることもあるから、倒す敵、行かねばならない地点が多くなる。往復することも考えれば総移動距離はかなりのものになるだろう。マラソン、言い得て妙であった。
リンはこれから待っている地獄に苦笑を隠せない。しかし、
「……でも、これが一番近道」
こう言われてしまったら、退くに退けなくなった。
目標へと近づくため。確かに感じ始めた消えた手の近づく感覚、見失う前に少しでも追いすがるために。その為だったら、疲労程度。
死ぬよりマシだ。
「やります。やらせてください。カナちゃんの為なら、私、なんだってやります!」
トーマは一つ頷いた。
「……それなら、いく」
「はい!」
リンが大きく返事をして、二人は立ち上がる。
大した休憩も取っていないが、今なら疲労度マックスでも動けそうだ。
二人はうめき声の聞こえる方へ、水を蹴飛ばし進んでいくのだった。
今日はいろいろありすぎた
ひどくクオリティが下がってるんだよなぁ
ほんとすいません……
※追加 多分、そろそろモチベが限界です。毎日投稿は一時中止、メインにちょっと力いれます。
一旦休止。そろそろ勉強しなきゃマジでやばい……




