15話
さすがに遅すぎた……www
ガンダムエクバを友達に借りてしまったのが運のつき!
ほえー、と気の抜けた声を上げたのはリンだ。
「ここが、アストロンですか……」
左右を崖が囲み日光が差し込まないため、人工的な明かりが街を照らす唯一の明かりだ。
ここにある家屋のほとんどは石によって作られている。しかしレンガのように手が加えられている訳ではなく、切り出された石をそのまま使用しているため、色は冷たい灰色。街を彩る色が電灯の黄色がかった光と灰色のみという、なんとも寂しいキャンプであった。人の姿も、グングニルキャンプと比べてしまうとあまりに少なく、リンは少し物足りないような気がした。
「ねえトーマさん……って、もういない!?」
横にいると思っていた人影は既に見当たらず、慌てて周りを見回すと、遠ざかっていく見慣れた黒ローブを発見。角を曲がって消えたそれを追って、リンは走り出す。
もはや通い慣れた道を歩いていく。遠くから、何か驚くような声が聞こえたが、まあ気にしないでおこう。多分ついてきてくれるはずだ。
トーマの足の向かう先は、アストロンキャンプの中心にある一際大きな建物。キャンプの全体を統括する、いわば市庁舎のようなものである。仕事は税金の徴収やモンスターに対抗する設備の調整などから、出店されている店、プレイヤーからのクエストの管理まで多岐に渡り、トーマの目的はその内の一つである住宅の提供にあった。つまり、リンの住む家の確保である。
両開きの扉を開くと、頭上からカランカランと鈴のなる音が降ってくる。
「おう、いらっしゃい……って、トーマじゃねえか」
出迎えたのは職員の一人。カウンターに足を乗せて、着ているスーツはヨレヨレのグシャグシャ。いかにもだらけた格好で、何かの帳簿を見ながら葉巻を更かしていた。一つのキャンプを仕切るメンバーの一人とは思えないような態度だ。
しかし、この男が街の雰囲気を体現していると言っても過言ではなかった。皆堕落してはいるものの、行うべきことはきっちり行っている。それは裏側を知る者の特徴というべきか、することをしなければあとに苦しむのは自分だと知っているのだ。
だからというのか、治安もグングニルキャンプよりよほどいい。ここで問題を、事件を起こせば、もう近づいてくる人間はいない、アイテムも売ってもらえない。そうなれば次に向かう場所はギャングギルドくらいしかない。待っているのは破滅だけだ。
グングニルは満たされている。だからそれを狙う輩がいたり、それに甘える輩もいる。
アストロンは満たされていない。だから、生き延びる為には協力するし、居場所を守る為に欲望を我慢する。
「……」
「相変わらず喋らない奴だな、お前って奴は」
「……ただいま、とか?」
「あー、まあトーマじゃないか、は返しにくいな。悪い。
で? お前何しに行ってたんだ? 女でも引っ掛けてたのか?」
「……違う」
「だろうな。でもそろそろ、顔もいいんだし、もうちょっと女っ気を持っても……」
「そんな訳がないでしょう。トーマはあなたと違って、真面目な人なのだから」
そう言っておくから出てきたのは、大きなメガネと三つ編みにされた黒く長い髪。そして細められた鋭い瞳が特徴的な少女である。
「おーおー、厳しいなあ」
「ただ、事実を言っているだけです」
「へいへい。……それでトーマは何しに来たんだ?」
「……家、買いにきた」
「ん? 家か? 買い替えでもするのかしらんが、それなら今いいモンが……」
「……違う」
? と二人揃って、首を傾げるところに、ようやくリンが追いついた。
「や、やっと追いついた~! トーマさん、は、早いですよ……」
リンがそこで言葉を途切れさせたのは、そろってポカーンと口を開けている二人組を見たからだ。仲があまりよくないように見えるが、少し前の疑問符といい、この二人は本当は仲がいいのではないだろうかとトーマは考える。どうでもいいことではあるが。
「「……トーマが」」
「「?」」
「「本当に女(の人)引っ掛けてきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」」
がしぃっ! とトーマの胸ぐらをつかみあげる男。
「ど、どういうことだよ! あれだけ女っ気がなかったお前が、ってかさっきまでそう言ってたお前がいきなり女連れて帰ってくるなんてよぉ!?」
ぐいっ!とローブの裾を引っ張る少女。
「そ、そうです! トーマは、そんなことする人じゃなかったはず! なのに、なのに!」
同時に二箇所から揺さぶられ、目を回すトーマ。リンがそこに割って入り、事態を収拾させるのには、結構な時間を要した。
「……なるほど、な。つまりリン……でいいよな? リンは、まあいろいろあって、モンスターに追われていた。そこをトーマに助けてもらって、そのいろいろのせいで元のキャンプに居づらいのと、レベリングを行う為にトーマについて来た。こんなもんか?」
「は、はい。そんなところです」
かなり略されていたが、大体正しかったためリンはとりあえず頷いた。
男が頭を掻きながら、もう片方の手で謝罪を表現する。
「悪いな。あんた、いきなりこんなノリに付き合わせちまってよ。俺はガイルってんだ。よろしくな。おら、お前も挨拶しろ」
そう言って、少女の肩を叩き話を促す。
不服そうな顔をしながら、少女が口を開く。
「……シノノメ、です。よろしくお願いします」
「ちっ、無愛想だな……わざわざトーマの真似する必要なんてないんだぜ? ……まあ、改めてよろしくな」
「は、はい。よろしくお願いします」
リンは頭を下げる。そこにガイルがニヤニヤしながら近づいていく。
(それで? 嬢ちゃんはあいつのこと、どう思ってるんだい?)
(え、ええっ!?)
(あいつ、まあまあかっけーだろ? 嬢ちゃんもいろいろ助けられたんだろうし、そういう気持ちもあって、あいつについて来たんじゃねえのか?)
(え、えっと、い、いきなり言われましても……)
(そうだな。いきなり言っても困るか。でも狙うなら気をつけろ、シノノメの奴がこええから……)
「何か言いました? 不穏な言葉が聞こえましたが」
「気のせいですよー、っと」
「……それなら、いいのですが「俺が言ったのは、シノノメがトーマをねら」やはり余計な事を言っていたのですね……!」
ドドドドドドド……
何やら物理エンジンを超えた超次元的なオーラが、シノノメの体を包んでいく。
ガイルはたらり、と汗をひとしずく垂らした。
「やっべ、久しぶりに怒らせちまったか……? に、逃げとこーっと!」
「待ちなさああああああああああああい!」
近くにあった辞書を手に取り駆け出すシノノメ。慣れきったように、急いで踵を返すガイル。
残された二人は、ぼんやりと佇んでいるしかなかった。
ヒロイン候補、二人目?
なんとなく、書いてると完全に黒髪の魔法少女を思い出した。ええ、そうです。あの完全にレ○な人です。
でも一応魔法か剣で戦うから、遠距離じゃないからセフ!
※多分1000ユニーク、この更新で超えます!
ほんとにありがとうございます。活力が湧きます!




