11話
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「私がレベルを上げたいことは、トーマさんも知っていると思います」
トーマは椅子に座った状態で、その問いかけに頷いていた。
玄関先で話すのはなんですし、とリンに言われたトーマは、リンに連れられて家の中に入っていた。家具はベッドとテーブル、椅子のみで簡素、必要最低限のものしかそろっていない。といっても、レベル上げをしたい初級プレイヤーや、自分のようなフリーター、作業場で眠ることにロマンを感じる職人志望の非戦闘プレイヤーなどは、家を持っていたとしても基本的に家の拡張をしない。というか、家を持ってすらいないことの方が多い。ちなみにトーマは後者であり、文句どころか、むしろ家を持っていることに驚いていたくらいだった。根無し草の自分より遥かに立派である。
「それはカナちゃんに守ってもらった命を失わないため、自衛できるだけの力が欲しいからです。でもそれはひとまずの目標である、本当の目的を果たすための過程にしか過ぎません」
リンは一度口を閉ざしてから、トーマに再び問いかけた。
「『天使の施し』っていうアイテムをご存知ですか?」
天使の施し。
トーマは少し考え込んで、記憶の中をあさった。
「……確か、強い電気をおびている石」
「はい、そうです。基本的に敵に対して電撃を発射する、攻撃用のアイテムですけど、別の効果があるのではないか、という噂が流れているんです」
「……噂」
「はい、噂です、ですから、それはガセなのかもしれません。でも、その効果が『ゲームオーバーになったプレイヤーの蘇生』なんです」
「は……?」
トーマは思わず気の抜けた声を出してしまった。
プレイヤーの蘇生? そんなアイテムが存在しては、ゲームバランスが崩壊してしまうではないか。運営側が、そんなチートアイテムを自ら創りだすものだろうか?
それはバグだろう、という旨をトーマはリンに伝えるが、リンは首を振った。
「いえ、チートではありません。まず天使の施しにそのような力があるのではと予想できた理由が、天使の施し自体の説明文なんです。それはご存知です?」
「……そこまでは」
トーマはその問いに対し首を振った。
トーマは普段、アイテムの説明文を読まないのだ。ブラッド・オペラの特徴の一つとして、それぞれのアイテムやモンスターにある細かな設定が挙げられるが、ゲームの序盤からフリーターとして戦い続けていたトーマは、そんなことを気にしていなかった。そんなことを気にしている暇があったらレベル上げに没頭しているし、覚えるにしてもそれは効果のみである。
リンは目を丸くした。
「えっ、そうなんですか!? わ、私、トーマさんならなんでも知っているようなイメージで」
「……そんなの、ただの超人」
「で、ですよね。すいません。
えっと、簡単に言うと、常に月の満ちぬ洞、満天の月光にみたされるとき、この石の力、その光に、眠る者は目覚めるだろう。そんな感じだったと思います。そして、学者ギルドはその説明文を見て、眠る人を死者と解釈したんです。わざわざ睡眠状態からの回復アイテムのために、こんな仰々しい文を書くかどうか、と考えたんでしょうね」
「……それで?」
「はい。常に月の満ちぬ洞、というのはおそらく三日月鍾乳洞のことだと思われています。そこは夜になると月が昇りますが、全体では満月でも、鍾乳洞だけ三日月だったりしますよね。ですから、月が関係するステージで特別なのはこの鍾乳洞だけなので、これはほぼ確実であると思われています。実際、最近少しづつ月が満ち始めているらしいです」
「……ありがとう。それじゃあ、本題」
「はい。私からお願いしたい依頼は、その力を持った石の回収を手伝っていただくことです」
「……それが、レベリングにもつながる?」
「はい。そのようなアイテム、おそらくイベント絡みなのは確実です。なので、そのクエストボスに対抗できる程度のレベルが必要なんです」
依頼の内容を聞いたところで、それにつきまとう現実的な話を切り出した。
「……それで、報酬は?」
その問にたいして、リンは寸隙もなく、
「しゅっ、出世払いで」
と答えた。
トーマ、唖然。
フリーターは、危険な任務に就く時、必ずそれ相応の対価を要求する。しかし、あまりに危険すぎる依頼は必ず断る。それは生きていくための金以前の問題であり、自分が死んでしまったら後には何も残らないからだ。
それをこの目の前にいるプレイヤーは、形も何もない、出世払いというあまりにも不確かな形で報酬を出すと言ってきた。本来ならありえない、あまりに利害が釣り合っていない行動である。
しかし向こう側もそれは理解しているらしく、ダメでもともと、と瞳をきつく閉じてこちらの返答を待っている。
「い、今の私の所持金、アイテム、すべてお渡ししても、トーマさんが満足するようなものにはならないと思います。トーマさんを満足させるだけの対価が、私にはありません。ですが、こんなミッショントーマさん以外に頼める相手がいないんです。
……見てもらっていた通り、私には味方がいません。私の命を狙う人がいっぱいいます。これまで一人でやってこれていたのも、全部カナちゃんのおかげなんです。でも、もうそのカナちゃんもいません。蘇生することができれば、私はまたカナちゃんと一緒にやっていけます。その時に、少しずつトーマさんに恩を返していこうと考えてます。ですから、この間だけでも……!」
そう言って、リンは頭を下げたまま動かなくなった。
勉強不足の対策として、現在の部活を退部、文芸部への転部を考えています。ロボコンも楽しかったですが、小説の方が何より大切ですから。
皆さんが時間を割いてくださっているんです、応えない訳にはいきません!
といいつつ、執筆時間は短いので、もともとひどかったものがさらにアレな感じに……ほんと、すいません




