【1】特異犯罪分析部《オラクル》始動。〜完全犯罪に挑む捜査官たち〜
こちらはカクヨムで完結済みの作品を、小説家になろうでも連載するものです。
本作は、科学捜査と行動分析を軸にした本格クライム小説です。
ファンタジー要素のある『最強捜査官イーサン』シリーズから続く作品ですが、この作品からでも読めるようにしています。
事件、証拠、分析、そして人間の心理。
科学で真実に迫る捜査チーム《オラクル》の物語を、楽しんでいただけたら嬉しいです。
アメリカ、セレニス州、S.A.G.E.本部。
S.A.G.E.とは――
(スペシャル・エージェンシー・フォー・エビデンス解析)の略称である。
正式名称、特務解析庁。
それはFBIと同じく、司法許可に基づき、現場指揮と逮捕権限あり、専門は高度科学捜査と現場分析の組織である――
その隔離された会議室にいるのは五人。
特務科学捜査官、主任捜査分析官イーサン・クロフォード。
イーサンの右腕、カリスタ・ベネット。
そして、イーサンの直属の部下で元FBI捜査官のヴィヴィアン・ドレイク。
それと、イーサンの依頼を受けてS.A.G.E.捜査官となった、セレニス・ベイ署、元刑事部長ハロルド・ベック。
そして――
S.A.G.E.本部に在籍しているIT担当分析官、チャールズ・ハーパー。
モニターの無い白い壁と、書類だけが置かれた無機質な机が並ぶ空間に、イーサンの低いバリトンが響く。
「まず、ベック捜査官に感謝を述べたい。
ベック、君は刑事として有能だったのにも関わらず、S.A.G.E.の捜査官になってくれた。
心から礼を言う。
ありがとう」
ベックが、元軍人らしい190センチ近いガッシリとした身体に似合わないベビーフェイスでニカッと笑うと、つるりと頭を撫でた。
「そんな風に言われると照れるな!
俺は、変わらない。
悪党を刑務所にぶち込むだけだ」
カリスタがやさしく美しい笑みを浮かべ、ベックに言う。
「いいえ。
あなたは警察官として生きることが信条だった。
それを捨ててまで捜査官になってくれたのよ。
本当にありがとう。
この新しい部署が発足したタイミングで……心強いわ」
ヴィヴィアンもチャーミングな笑顔を浮かべる。
「ベックと一緒なら、新しいチームも絶対順調に行くわ!
これからもよろしくね!」
ベックが顔を赤くして、ワハハと笑う。
「任せろ!
弾避けくらいにはなるだろ!」
そんな中、一人緊張を隠せないチャールズ・ハーパー。
その様子を見て、カリスタがクスッと笑った。
「チャーリー、どうしたの?
いつものあなたらしくないわね?」
ガタガタと椅子から立ち上がるチャールズ。
「いやっ……!
俺は……いや……僕は……私は……っ!
この部署に呼ばれてっ……光栄ですッ!」
黒髪を綺麗にセットし、整った顔立ちからは想像もつかない焦り方に、ヴィヴィアンは笑いを堪え、ベックは薄いブルーの瞳をまん丸くしている。
イーサンが低く告げる。
「ハーパー。座れ」
「……ハイッ……!」
チャールズがまた椅子をガタガタさせながら、椅子に座った。
イーサンが続ける。
「こちらは、チャールズ・ハーパー分析官。
本部に在籍するIT部門の担当者。
我々のチームの一員だ。
これからハーパー分析官は、我々の捜査に専念してもらうことになる」
またもや、「……ハイッ……!」と答えるチャールズ。
そして、イーサンが全員を見渡し、宣告する。
「では、事件特化型プロファイラー兼現場指揮官として、私に新たに任命された捜査チーム、特異犯罪分析部――オラクル――へ、ようこそ諸君」
皆が会議室から出て行くと、イーサンにカリスタが言った。
「浮かない顔ね」
イーサンが「ああ」と短く答え、続けた。
「今日しかスケジュール的にオラクルの顔合わせは出来なかった。
しかし、セシル・アシュリーとエレノア・グラントは丁官とワシントンD.C.に同行していて、明日、カリフォルニア支局で合流することになる。
こういう事態は、好ましくない」
カリスタも腕を組み、考え込むような顔になった。
「エレノア・グラントはマスコミ対応や警察との連携を図るスペシャリストの捜査官だから、現場で合流しても問題無いと思うけど……
問題はセシル・アシュリーね」
「そうだ」と頷くイーサンのアイス・ブルーの瞳が、ギラリと光を帯びる。
セシル・アシュリー。
IQ180の天才。
若干22歳にして博士号を三つ持ち、修士号を二つ持つ、天才中の天才の青年だ。
アシュリーを見出したのは、S.A.G.E.丁官本人。
その頭脳ゆえに、丁官が直々にS.A.G.E.に招き入れたという特別枠の捜査官だ。
IQ180ならば、それこそ世界で成功出来る。
そして、アシュリーにはその頭脳を求める民間企業は山とある。
自分で企業を立ち上げることも可能だ。
パートナー選びさえ間違えなければ、大成功を収めるだろう。
しかも父親の家系は代々著名な弁護士で、母親は元脳外科医。
だが、丁官の勧めを快諾し、公務員の道を選んでくれたアシュリーを、丁官はそれは可愛がっている。
いわば、丁官の秘蔵っ子。
アシュリーは訓練生にもならず捜査官になり、「銃は嫌い」という理由で銃も携帯していない。
短剣の名手でもあるが、S.A.G.E.では銃の携帯許可が無ければ、捜査官にはなれないのに。
しかもS.A.G.E.に入るまでは研究一筋で、世間知らず。
だが、アシュリーはS.A.G.E.本部にいながらにして、捜査官として"結果"をきちんと出している。
完璧に守られた部屋で、数秒で犯人逮捕に繋がる答えを出す。
ただの"丁官のお気に入り"なら、イーサンも決してオラクルに入れようとは思わなかった。
だが、彼の頭脳は絶対に必要不可欠だと判断し、犯罪現場にアシュリーを出そうとしない丁官を何とか説得してまで、チームの一員にした。
イーサンが、手にしたファイルをめくる。
そこにはハニーブロンドのふわりとした長めの髪に、青い瞳の青年が、ブレザーにネクタイをしている姿があった。
S.A.G.E.内部の公式の写真と履歴書だ。
まるで、まだ大学生になったばかりのような幼さの残る顔立ちに、誰もが振り返る美貌。
そして、185センチの身体はランウェイを歩く女性ファッションモデルそのもの。
細く、儚い。
だが、この人物の中に、怪物をも恐れる頭脳が詰まっているのだ。
イーサンは静かに佇むカリスタに、低く告げる。
「まずは、彼のお手並み拝見といこう。
チームでの立ち位置はそれからだ」
イーサンはそれだけ言うと、別のファイルを開く。
そこには七名の男性の記録が、詳細に記されている。
「君たちは、なぜ、大きな仕事を受けて渡欧する直前に消えたんだ?」
その呟きは、彼らには、もう届かない。
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