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いつも側にいてくれたね  作者: 摘美花-ツグミカ-
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直生との噂 **夏芽**

遥生のことをたくさん考えて、考えすぎて眠れなかった。


私は眠い目をこすりながら登校するために直生を迎えに行く。


いつもならリビングにお邪魔して直生の準備ができるのを待っているのに、今日はなんとなく玄関先で直生が出てくるのを待った。


遥生に会ったらどんな顔をしていいのか分からない。


遥生はもうとっくに学校へ行っていて、家の中にはいないのに。


「夏芽、おはよう。家に入ってくればいいのに。どうしたの?」


「直生おはよう。ん-、なんか靴脱ぐのが面倒になっちゃった」


「あはは、そんなことある?」


きっと直生は私の態度がいつもと違うのを見抜いてる。


でも優しいからいつも通りに接してくれているんだ。


学校までの道を歩きながらずっと遥生のことを考えてる。


直生との会話が全然頭に入って来なくて。


「夏芽、何か上の空だね。どうしたの?」


私は思い切って直生に遥生のことを聞こうと思った。


「ねえ直生。あのさ、遥生の好きな人って・・・」


遥生の好きになった人がどんな人なのか、誰なのかを直生に聞こうと思ったのに。


私の言葉を遮るように後ろから男の子に声を掛けられた。


「よっ! ご両人!! 毎日一緒に登校なんてアツアツだね」


この人誰? 何のことを言ってるの?


その声に反応したのは直生で。


「変なこと言わないでくれる? アツアツって何?」


するとその男の子は続ける。


「だってお前ら付き合ってるんだろ。今更隠す必要なくね?」


はい? この人は何を言ってるんだろうか。


「ちょっと待ってよ。誰がどこでそうなってるんだよ」


直生には珍しく慌てている。


そんなやり取りをしている所に坂野くんがやってきた。


「今聞こえたけど、湯川くんと高田さんはお付き合いすることになったんだね。ほらね、両想いだったでしょ。思い切って告白して正解だったね」


「坂野くん、どう言うこと? 両想いとか告白とか」


今度は私が坂野くんに聞いた。


「あっ、これは俺と湯川くんの秘密だった。湯川くんごめん。もうこれ以上は何も言わないよ。じゃね」


坂野くんは私たちにそう言うと先に行ってしまった。


私は直生に説明してもらおうと直生の方に振り返った。


「直生と坂野くんの秘密って? 直生、どういうこと?」


「いや、僕も全く理解できてない。彼が何を言ってるのか見当つかないんだよな」


直生が誤魔化して嘘をついているとは思えない。


「それよりもさ、僕と夏芽が付き合ってるって噂になったら困るよね。どうしたらいいかな」


直生は何かブツブツ言いながら私を残して歩き出した。


教室に入っても皆の話題は私と直生のことで持ちきりだった。


「ちょっと夏芽! あなた達のことが話題になってるんだけど。これって本当なの? 夏芽は直生を選んだってこと?」


綾乃が真っ先に駆け寄ってきて小さい声で話し掛けてきた。


「違うよ、全然違うの。私も直生も何がどうなっているのか分からなくて」


「そうだったの。じゃ、この騒ぎはなんだろうね」


綾乃は私の言葉を信じてくれた。


そして言葉を続ける。


「遥生がこの噂を聞いたらショックなんじゃないの?」


「遥生・・・が。 ううん、そんな事ないと思うけど」


遥生には好きな人がいることを知っているから、こんな噂を聞いたって遥生は何とも思わないよ。


「そんなことは無いって。もしここに遥生がいたら大変だったと思うよ。違う学校で良かったよ、遥生」


綾乃は何も知らないから。


遥生には想う人がいるって知らないから。


直生との噂で騒がれていることよりも、遥生が遠い存在になってしまったことの方が悲しくて。


『俺はいつもここにいるだろ。淋しくなったらいつでも来いよ』


遥生、どうして私にそんなことを言ったの。


「ふぇっ。綾乃―、私、悲しいよ。もう遥生はなんなのよ。遥生のばかー」


「えっ、ちょっ夏芽。泣かないでよ。しかも直生じゃなくて何で遥生に当たってるのよ」


綾乃は私が直生に対してではなく遥生に対して文句を言っていることを不思議に思ったようだった。



私と直生の噂は休み時間になるたびに騒がれて、直生の彼女がどんな子なのかって他のクラスの子が私を見に来たりしていて。


「ちょっと、高田さん!」


私のことを見に来ている人の中からヒステリックな声で私を呼ぶ声が聞こえた。


その声の方を見ると、入学式の時に直生をかっこいいと言っていた田所さんが、廊下から私を睨みながら手招きしていた。


こ、怖い。


見なかったことにしよう。


私はくるっと体の向きを変えて廊下を背にした。


「入るわよ。ね、高田さん! あなた前に言ったわよね」


私の席まで田所さんが来て、そんなことを言った。


これは、無視できないよね。


私は覚悟を決めて、上手く笑えていないだろう笑顔を作り田所さんに顔を向けた。


「どうしたの、田所さん」


「どうしたのじゃないわよ。あなたと直生くんが噂になってるの。1組でも大騒ぎよ」


「ああ、そうなんだ。おかしいね、私と直生はお付き合いしていないのに」


笑顔でそう答えたことが田所さんを怒らせてしまったみたい。


「嘘ばっかり。幼馴染とか言っていつもいつも直生くんと一緒にいるし。直生くんは誰かに告白されても全部断ってるって聞くし。誰が見ても2人は付き合ってるじゃない」


もう愛想笑いは限界。


心の中でそう思った時に直生が私のクラスに入って来た。


「田所さん、夏芽を責めないで。本当に僕たちは付き合ってないから。どうしてこんな噂が流れたのか分からないけど、僕の言うことを信じてくれる?」


直生は焦るようなそぶりも見せず、笑顔で田所さんに注意してる。


直生、その笑顔は反則だよ。


これじゃ田所さんの他にも直生ファンが増えるだけだって。


『きゃぁぁ! 今の湯川くん見た?』


『なにあの超イケメン!』


ほら、私のクラスにも直生ファンができちゃった。


田所さんを見ると少し頬を赤くしていて、


「本当に直生くんは高田さんと付き合っていないのね。信じるわ。高田さんも早く言いなさいよ。誤解しちゃったじゃないの」


はい? 私、最初に付き合ってないって言ったよね。


「それで夏芽は大丈夫?」


直生は田所さんが納得してくれたのを見ると今度は私の心配をしてくれた。


「うん、私は平気だよ」


「そう。でも何かあったらすぐ僕に言って」


「ありがとう。あのさ、直生。噂が消えるまで登下校は別々にした方がいいかな」


私はいつも仲良く並んで歩いているのも噂になる原因の一つだと思ってそんな提案を直生に耳打ちした。


「そっ、それはダメ。僕たちは今まで通りでいいんだよ。変える必要はないよ、夏芽」


「うん。分かったよ直生」


直生は私との噂を消したいと思っているのに、今まで通りでいようと言う。


いつも通りでいいんだよって直生に言ってもらったから私は態度を変えるつもりは無いけど、こんな噂が流れてしまって直生に迷惑が掛からないといいんだけどな。



それだけが心配だよ、直生。



直生との噂が流れた後も私と直生は今までと変わらず仲良くしている。


直生は最初こそ噂の火消しをしていたけど、この頃は無理に誤解を解こうとせず私との関係を言われても軽くあしらうようになっていた。


そしてそんな私たちのことは徐々に騒がれなくなっていった。


他人の噂なんてそう長続きしないんだよね。


「僕たちが動じなければ噂なんてこんなものだよ。もうみんな僕たちの話題には飽きたんだよ」


いや、いや、直生。


直生にはそう見えるかも知れないけどさ。


直生ファンの女子からはまだ冷たい目線をもらうときがあるんだよ。


そんなことを直生に言ったら心配されちゃうから言えないけどね。

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