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いつも側にいてくれたね  作者: 摘美花-ツグミカ-
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俺の気持ちと直生の気持ち **遥生**

俺たちが夏芽の部屋から戻ると直生は話しもせずに自分の部屋に入りドアを閉めようとした。


「なあ、直生待てよ。お前の悩みってなんだよ、はっきり言えよ」


俺の真剣な顔を見た直生は降参したかのように話し始めた。


「分かったよ。僕もちゃんと話すから、遥生も本当のことを言って欲しい」


「何をだよ、俺はなにも隠し事なんてしてないだろ」


俺は煮え切らない直生の態度にイライラしていた。


「夏芽のことだよ」


直生から出てきたのは夏芽について。


なんとなく分かっていたから別に驚きもしない。


直生は少し間をおいて、話を続けた。


「遥生はさ、夏芽のことどう思ってる?」


聞かれるだろうなとは思っていたけど、俺の本当の気持ちを先に言ってしまったら直生はきっと自分の気持ちを押し殺す。


「俺のことはどうだっていいんだよ。今は直生のことだろ。直生の気持ちはどうなんだよ」


直生は俺の気持ちを聞いて「応援するよ」とか言うんだろ。


昔っからそうだった。


俺に遠慮していつも直生は自分の感情を仕舞っているんだ。



あの出来事を除いては。




俺たちが高校受験に向けて塾に通っている時、直生が突然塾を辞めたいと言った。


そして私立高校の受験はしない、と。


俺は納得できなかった。


「直生、なんで受験しないって言い出したんだよ」


「僕に受験は必要ないんだ。僕が大切なのは夏芽と一緒にいることなの。夏芽と同じ高校に行って夏芽を守っていたいんだ」


「なに言ってんだよ。それは俺だって同じ気持ちだよ。でもお母さんたちの気持ちを考えたら受験しないって選択はできないだろ」


「遥生、本当にごめん。僕だけでも夏芽の側にいさせて欲しい」


直生を問い詰めても夏芽を盾にして話が進まなかった。


俺は直生にはっきり聞いたわけじゃないけど、直生は夏芽が好きなんだ。


俺だって。


俺だって全然知らない学校になんて行きたくない。


俺だって夏芽の側にいたい。


俺だって夏芽が好きなのに。


それでも俺は受験した。


夏芽とは別の学校に行くと決意したんだ。


夏芽と別の高校へ行ったら、きっと夏芽と直生は付き合い出すんだろうな、そう思っていたんだ。


俺が夏芽への感情を閉じ込めてしまえば済むことなんだ、夏芽が幸せになるならそれでいいんだ、と思って今までいたのに。



なのにどうして夏芽に彼氏ができるかも知れないことを直生は許してんだよ。


どうして夏芽に何も言わないんだよ。


どうして夏芽の相手の男をけん制しないんだよ。


どうして・・・夏芽に応援するなんて言ってんだよ。


「遥生、僕の気持ちを打ち明けるよ。本当の気持ち」


「ああ。嘘は付くなよ、直生」


直生は静かにそして嘘のない目で俺に話し始めたんだ。


「僕はね、夏芽のことが大事なんだ。誰よりも一番大切なの。それは小さい頃から一つも変わっていないよ。夏芽が幸せに笑っていてくれることが望みなの」


そんなことは俺だって同じだよ。


本当は俺の側で夏芽が幸せになってくれたらいいのにって思うけど。


「でもね、僕は夏芽とはずっと幼馴染でいたいんだ。それ以上でもそれ以下でもない。夏芽のことは大好きだし、愛おしいと思ってる。でもそれは男女の好きじゃないんだよ」


「直生、お前何言ってんだよ。意味が分からねぇよ。一体何が言いたいんだよ」


「夏芽が好きになるなら、夏芽に告白してきた坂野くんでもいいって思うんだ。夏芽が幸せになってくれるならね」


「直生はそれでいいのかよ! 俺は納得できねえぞ」


「じゃあ、遥生はどうなの? 夏芽のことどう思ってる?」


「俺・・・俺は。 夏芽のことが、好きだよ」


直生は俺の夏芽に対する気持ちを聞いて安堵の表情を見せた。


「やっと言ってくれたね、遥生。僕はずっとそれを聞きたかったんだ」


「俺は。俺も夏芽のこと好きだけど。俺に遠慮するなよ、直生。遠慮されるのが一番嫌なんだ。大嫌いなんだよ、そう言うの」


「うん、遠慮はしないよ。これからは邪魔者を夏芽に近付けないようにする。そして遥生と夏芽が幸せになれるように全力で応援するだけだよ」


ほらな、俺が夏芽を好きだって言った途端にこの返事だ。


「なあ直生、どうして俺にそんなに気を使うんだよ。夏芽は俺じゃなくて直生のことが好きかも知れないだろ。何も分からないじゃないかよ」


「ううん、今の夏芽は誰のことも特別には思っていないと思うよ。だからだよ。僕は夏芽の気持ちが遥生に向くようにするんだ。たとえ夏芽に嫌われたって、そうしなきゃならないんだ」


「ふざけんなよ、直生! 俺は・・・」


俺の言葉に少し語気を強めて直生が被せてきた。


「遥生! もうこの話はおしまいだよ。僕たちの気持ちは伝え合った。それでもういいだろ」


そう言うと直生は部屋のドアを閉めてしまった。

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