4.リルとの出会い
優しく撫でられる感覚に目を覚ます。
なんか目を覚ましてばかりだな……
えっと確か、川に落ちて……
「あ、起きたみたいっ」
声がした方を振り向いてみると、銀髪獣耳の少女。年は十代前半くらいに見える。
左目が黒で右目が青のオッドアイ。銀色の髪の質感が凄いフワッフワ、美少女っぷりと合わせて神秘的で人間離れしてる。あ、モフモフ尻尾が見える。触りたい……
「クルニャ……」
ねえと声をかけようとしたら、鳴き声が出た……。そういえば猫だった。
「鳴き声も可愛いのー!? わたしはリルだよヨロシクね!」
ナデナデされて、ムギューと頬ずりされた。
嬉しく温かい気持ちになったけど、まずは現状を把握しなくては。
周囲は木々に囲まれている。なんとなくだけど、森の中のポッカリ空いた平地といった感じだ。
獣耳少女が出てきたことや猫女神様の存在から考えるに、この世界は「俺」の知識にあるラノベとかによく出てくるファンタジーな世界だろうか。
とりあえずラノベよろしく、「異世界」に来てしまったと考えておこう。
この世界で生きていくためには、可能な限り早く知識と力を手に入れないとな……。
「ご飯を作るから、ちょっと待っててね」
リルがそう言って、その場を離れる。
数メートル先に焚き火があり、そこで鍋に食材らしきものを入れてるのが見える。
そう言えば、女神様が「プレゼント」って言ってたけど、何をくれたんだろうか。
ラノベ的なチート能力だと嬉しいんだけど。
獣耳少女の言葉が分かるから、よくあるチート特典の自動翻訳的なものはありそうだけど、他に何をくれたのだろう。女神様は「鑑定」とか言ってたような気がしたけど。
自分の手に向かって「鑑定」と頭のなかで唱えてみる。
その瞬間、目の前に半透明のウインドウが表示される。
おおー!?
これは凄い!とひとしきり感動した後、ウインドウに目を通してみる。
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名前:
種族:ワイルドキャット
レベル:1
体力:3
魔力:3
スキル:「自動翻訳」「自己鑑定」
称号:「シャスティの加護」
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名前は名付けられてないから、空欄なのはいいとして、種族は野生の猫ってことかな。
そこで種族をじっと見ていると、さらに半透明のウインドウがポップした。
ニ重鑑定キタコレ!
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「ワイルドキャット」――――魔物の一種。
森林を中心に生息している猫。雑食。
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猫は猫だけど魔物だったのね……。
まあ……いいか、馬車をドラゴンが引く世界かもしれないし……。竜車って言うんだっけ。
他のもニ重鑑定しておこう。
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「体力」――――物理的な身体能力の目安。腕力、耐久力、走力等の目安となる。
「魔力」――――魔法能力の目安。魔法の威力、魔法耐性等の目安となる。
「自動翻訳」――――あらゆる言語を理解することができる。
「自己鑑定」――――自分の情報を取得する。
「シャスティの加護」――――尋常ならざる適応力を手に入れる。異世界でも生きていける。
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産まれたばかりだし、体力無いよね。
魔力があるってことはこの世界には魔法があるのだろう。
将来的には魔法が使えるようになるのだろうか。魔法を使う猫!楽しみになってきた。
「自動翻訳」「自己鑑定」「シャスティの加護」の三つがおそらく女神様からのプレゼントだね。
「シャスティの加護」の具体的な効果がイマイチ分からないけど、なんか凄そう。
まだ分からないけど、この世界の皆が持ってないようならチート能力の予感。
女神様ありがとう! だからと言って油断すると、すぐ死にそうだけどね。
ちなみに自分の毛の色は薄い茶色で、胸元と足首から先が白い毛になってる。
顔や後頭部がどうなってるかは見えない……この世界に鏡はあるのかな?
俺の記憶にある猫で言うと「メインクーン」に似てるかも。マフラーとソックスって感じだね。
ふと少女リルの方を見ると、丁度ご飯ができたところだったのか、鍋を持ってこっちに歩いてきた。