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監禁の経緯

監禁経緯独白

「はあ…」


ひとしきり終えてため息をつく。

乱れたベッドの上には、気を失った上司。

一糸纏わぬ格好でぐったりと沈み込む姿に、少しの申し訳なさが浮かぶがすぐに消えた。

僕が連れてきて襲ったのだから、申し訳ないなんてお門違いだ。

全部自分で決めたのだから、後悔するものではない。


「…季有さん」


課長の名前を呟く。呼んだことがない名前。

呼んだところで返事などない。


「……」


顔にかかる髪を指先で払う。

身をかがめて額に小さく口づけた。


「季有さん、乱暴してごめんなさい」


囁きかけて額から瞼、鼻筋、唇に口づけて顔を上げた。

体を起こして立ち上がり浴室へ向かい、温めたタオルで彼女の体を拭う。

風呂に入れるのはさすがに難しいから、気休め程度だけれど。

身体を簡易的に清めると、メイク落としシートで彼女の顔を拭う。

メイクを落としても顔が変わらないタイプらしい。

というより元々のメイクが濃くない。性格的に最低限してればいいと思っていそうだ。

迷ったけど裸も心もとないかと思い、自分のシャツを着せる。

図らずとも彼シャツ状態になったわけだが、生憎そういう趣味は僕にはなかった。

世の中には服装とか格好で性的嗜好があるみたいだけれど、よくわからないな。

どんな格好でも見た目でも意味はない。

僕にとっては季有さんが季有さんなら十分に欲情できる。

…自分で言っていて少し気色悪いか。


申し訳ないけど手首と足首を拘束させてもらった。

逃げられては困る。やっと捕まえたのだから。

ベッドに沈む彼女の隣に寝そべって、呼吸で上下する肩を眺めた。

部屋の電気はつけていない。窓から入るのは夜の明るさと街灯の灯りだけ。

僅かに照らされる季有さんの顔色は随分青白く見えた。





『つまんなそうに笑うねえ』


外回りの移動中、何気なくそういわれた。

いつもならそんなことないですよと朗らかに、もしくはふざけて返せたのにその日は言葉が出なかった。

季有さんが僕を少しも見ずにそう言うから。僕に興味もないくせに見抜いてくるから。

そうですね、と呟くように返した気がする。



季有さんが喫煙者だったから、それを機に僕も吸い始めた。

できるだけ同じ空間にいられるように努めた。

だからといって仲が深まるわけでもなく、ただの上司と部下。教える人間と教わる人間。それだけだった。

別に会話はしなくても、空間を共有できることはメリットだ。自然と情報収集ができる。


仕事ができる優秀な人、とくに突発のトラブル対応が得意。

感情の起伏が少ない、よく言えば穏やか。悪く言えば読めない。

関心がないようで人や状況をよく見ているから的確で、取引先からも部下からも信頼が厚い。

喫煙者。酒が好き。仕事で見る彼女は背筋が伸びていて、清潔感がある。

食にこだわりはないらしい。何でも食べられる。無趣味。

既に両親に先立たれていて、一人暮らし。

周りから得られた情報と、主観。



仕事終わりに相談があると持ち掛けた。

少し考えてからいいよ、と了解を得られて飲みにいけることになった。

彼女がお店を選んでくれて、おそらく僕に配慮して個室を選んでくれた。

とても好都合だった。

酒が強い彼女を酔い潰すことは難しかったし、よく漫画で見るような薬を使うのも憚られた。

そんな不確かで危ないものを使いたくなかった。

だから彼女が飲む酒にアルコール度数の強い酒を混ぜ込んで、酔い潰した。



自宅に連れ込んでベッドに横たえると、少し意識を取り戻した彼女と目が合う。

抵抗と言えないぐらいの抵抗をされる。酔っているせいなのか、状況的に諦めているのか。

どのみちやめる気はなかったから少し乱暴に行為を進める。

押し倒してすでに彼女の中に入っている状態で、左頬を思い切り引っ叩かれた。

今の今まで大した抵抗されていなかったから油断していたのと、遅すぎるタイミングの抵抗に驚いて彼女の目を見る。


望まない行為のせいか生理的なものか分からないが、涙目だった。

僕をまっすぐ見つめ返して、彼女は確かに「ざまあみろ」と口を動かして小さく笑った。

目を伏せると溜まった涙が頬に流れて、ひどく奇麗で。


「……」


なんとも言葉を返せず、そのまま強引に行為を続けた。

今に至る。




「……本当に、変なひと」


この人は心底読めない。感情が動かない。いつだって平坦だ。

仕事でもそうだった。トラブルが発生しても「そう」と淡々として対処を始める。

だからと言って人に対して冷たさを感じない。

優しいけれど甘さがなく、厳しいけれど冷たくない。

あまりに例外すぎて人であるかすら疑問になる。

狼狽しているところが見たくて、嫌悪や軽蔑が見られると思ってわざと乱暴に犯したのに。

それでもこの人は変わらなかった。


「…知りたいなあ。頭の中ぜんぶ」


眠る季有さんの頭を撫でてから、体を起こす。

彼女が起きるまでにシャワーを済ませておこう。

起きた時はどんな顔をするのか、それだけが今気になっていた。




霜月君視点。恋か憧れか探求心か。

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