第42話 メウスの苦悩
レビューが書かれました!!!!!!ありがとうございます!!!!!!!!!
◇◇◇メウス目線◇◇◇
アダムの号令と共に移動を開始したぼくたちは、もうすぐで雪深い森を抜けるところだった。
だけどなぜだろうか。今目指しているリザークの城が近づくにつれて、頭が痺れるように痛くなっていく。
「メウス?」
「だ、大丈夫……。この道が苦手なだけ……」
ミカエラに心配されながらも足を止めずに突き進む。それだけでもキツイのに、ここへ来るとどうしても悩まされる。
今ぼくは常時魔力消費をしてミカエラたちの体温の維持に使っている。そこそこ人数がいるので失う魔力も多い。
「もう少しで森を抜けます!」
シリルが叫んだ。木々がだんだん少なくなっていって、リザークの城がはっきり見えた。城下町に見えるものはない。
ただ、その先でアダムが数百人を相手していた。ぼくの威力強化魔法で彼の攻撃力も上昇させている。たった一回の攻撃で吹き飛ぶ敵魔族の姿がすっきりするくらい爽快で、素手でなぎ倒すアダムがものすごくかっこいい。
「メウスさん。ここから先は一旦待機しましょう」
「どうして?」
「どうやらミカエラさんが用事あるようですよ」
「用事?」
ぼくはミカエラの方を見る。彼女は昔よりも――というより数週間前よりも自信に満ちているように見えた。
これから彼女はリザークの命を狙う。レイラはきっと、彼女の噂を払拭するためにこの試練を与えたのかもしれない。
それでも、彼女は聖女だ。命を大切にする者。人を殺したとして、正常な精神を保てる保証はどこにもない。
「ミカエラ。ぼくに用事って……」
「うん。なんか、ヘカートがないと落ち着かなくて……」
「え?」
「持ってきてもらってもいい?」
「わ、わかった……」
ミカエラの要望に応えるべく、天界に移動する。天界のぼくの部屋はそこまで物は置かれていない。
ぼくのベッドはものすごく硬くて、人間界よりも寝心地が悪い。だから、普段から人間界にお邪魔して、そこのベッドを利用させてもらっている。
ミカエラのヘカートは、ぼくのベッドに放り投げられた状態。無造作に置かれたヘカートはまるで持ち主に会いたいと言っているようだった。
それを持ち上げ地上に降りる。現在地上は人が密集している。座標を間違えれば仲間に被害が出るかもしれない。
「計算は大丈夫。ここに降りれば……」
ぼくは自分が指定した指示を送り下界に移動した。光の螺旋に乗っかって、ゆっくり着地地点へ向かう。
「メウス!」
下界からミカエラの声が聞こえる。着地すると、みんなの無事を確認する。
全員の顔を見終えると、ミカエラにヘカートを渡す。シリルとセリンが協力して彼女たちを守ってくれていたようだ。
「セリン。シリル。ありがと」
「いえ。この前はメウスさんに守られてましたからお相子です」
「フン……」
セリンの鼻息が響いたところで、アダムが周囲の敵を一掃する。活路ができたので走って魔王城へ向かった。
一人悩む中前を駆けるミカエラの大きくなった背中。エレンも背中にある聖剣が継承者としての力を見せている。
ぼくが受け取って一度も振らなかったゼノン・レグスレイブ。それをどうか大きく振りかぶって、ぼくができなかったことを成し遂げてほしい。
「メウス? 大丈夫ですか?」
エレンが言った。ぼくは城の奥から伝わってくる寒気に耐えているのに、メンバー全員が緊迫とした空気がさらに重圧を生み出す。
「大丈夫……。ここには何度も来ているから。ぼくが苦手なのはリザークであって、ここのベッドが極上品だからね……」
その極上品ベッドがリザークのベッド。身体が沈むくらいマットレスがやわらかく、因縁の相手である彼のものなのに忘れられないもの。
「メウス。またベッドのこと考えてるでしょ?」
「ギクッ!?」
「ほらやっぱり」
「ミカエラさん。メウスって……」
「慢性のベッドオタク」
「ミカエラその言い方は……」
恥かしすぎてカッと顔が熱くなった。ぼく以上にミカエラは洞察力が鋭い。これは探偵の家庭に生まれていたからなのかのかもしれない。
リザークの城の床には、漆黒の絨毯が敷かれていた。
「つまり、メウスはリザークのこと……」
「嫌いだよ……。あの魔王ぼくの顔パスで金搾り取るんだからね」
「もしかして、献金?」
「そうそれ。やっぱり、ミカエラは前世思い出してからいろいろ知識を蓄えた状態になってるね」
「まあ……。おかげで、年相応がわからないけど……」
前世を思い出させない方がよかったかもしれない。だけど盛り上がり要素は増えた気がした。
「もう少しで階段に着きます。ここの階段は急なので気を付けてください」
「シリルありがと。セリンは足大きいから踏み外さないように!」
「は? 舐めんなよ……」
セリンはぼくの言葉を切り捨てると、ゆっくり上っていく。絨毯は階段に置かれていて、隙間なく設置されている。
だけど、材質の問題なのか少し滑りやすい。元々のビビりな性格が戻ったらしいエレンは、足元を注視しながら階段を進んでいる。
「この絨毯もぼくのお金で買ったんだろうなぁ……」
リザークは全魔王の中でも新しいもの好きのハイカラ男。人間界を嫌っても人間が作った新商品には目がない。
「もしかしたら。今日も……」
「『あはは!』」
「ちょっと! ミカエラ。エレン。二人して笑わないでよ!」
「メウス。もしかして、大富豪?」
「そこそこね……。全部本の売り上げだけど……」
ぼくの本の売れ行きは石板で確認できる。だけど、最近低迷期に入っていた。ぼくだってもっと売りたい。
だけど時代の流れは早い。その中で魔法書を専門としているぼくは、毎日新しい魔法を考えている。
その魔法を確認してもらう時もリザークに手伝ってもらっていた。
「そう考えるとリザークには、たくさんお世話になってるなぁ」
もう少しでリザークのいる部屋。大きな漆黒の扉を開けると、部屋の奥に人影。
体格はガタイの良いセリンと、細身のシリルを足して割ったくらい。頭には黒い角が生えていて、本当は慣れているはずのぼくでも背筋が凍る。
「よお! メウス! レイラから聞いたぞ! このリザーク。暗殺者育成に一役買ってやろうではないか!」
リザークの第一声は何故かそれだった。なんでレイラのことを知っているのか。そこが気になる。
「なんでレイラ……」
「フン。オレ様の命が残り幾つあるか、本当はわかっているのだろう?」
「えーと……。メウス。この方は?」
「リザーク。だけど、なんか……」
テンションがおかしかった。
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次回、リザーク。実は悪い人じゃない?




