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転生令嬢は暗殺者となり、異世界勇者を護衛する ~動物すら殺せない公爵令嬢ですが、こんな私でも魔王は倒せますか?  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 第1章 私の新しい家族と天職

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第2話 シャーロット公爵家

 どうやら、私はシャーロットナンチャラってところに生まれるみたい。

 だけど、長いトンネルを進むに連れて、記憶が浄化されていくのはなんで?


「フランよく頑張った。可愛い女の子だ。レイラも来い! ものすごく可愛いぞー。ほれ」


 白と黒のまばら髪をした男性がそんなことを言う。これが私の新しいお父さん? もしかして、シャーロット家の人かな?

 

「おとうさま。この子が本当にわたしの妹なのですの? 髪の色が全く違うじゃない」


 ちょっと、嫌味言わないでよ。つまり、私って、もう既にいる姉に似ていないってことだよね。


 髪色が違うだけで言われるのは正直に言って嫌。そこは喜ぶところなのに、まあ、私も状況を理解しきれてないのだけど。


「エルヴィン。説明してあげなさい。この子は私の血を強く引いてるって」

 

「それはそうだな。この子は顔や髪もフランに似ている。きっと逞しい子に育つだろうな」


 白黒髪の男性の名前はエルヴィン。名前の音的にも横文字だし、ことのつまりは、エルヴィン・シャーロットってことね。

 

「おとうさまったら、妹のことばかり! わたしだって、いつかはおかあさまみたいに強くなるんだから!」


 レイラ(お姉ちゃん)がヤキモチ妬いてる。それもそっか。生まれたての子供を見たのは初めてみたいだし。

 とりあえず、声を出してみる。


「あう! あう!」


 うん。赤子だから発音できる音少ないね。少しずつ覚え直していくことにした。


「フラン。レイラ。赤子が喋ったぞ! そろそろ名前を決めないとだな。良い案はないか?」


「そうね……。レイラに名付けて貰いましょ」


「わ、わたし? こんな見た目違いの子につける名前はないわ」


 ついにお姉ちゃん、ヤキモチ限界突破。加えて、また嫌味言われた。正直泣きそう。泣かないけどね。さらに嫌な予感しかしない。

 

「まあ。レイラ。この子はお前の妹なんだぞ?」


 お父さんがお姉ちゃんを引き留めようとしてくれたみたいだけど……。時、既に遅し。


 お父さんとお母さんは、私の顔を見て困り顔。そんなにじっと見つめられると、照れるんですけど……。


 赤子の感情は最小限だけど表現力は最強です。よって、最悪状況確定ってことで、無言貫きます!


「仕方ない。私が付けよう」


「エルヴィン貴方が?」


「ああそうだ。レイラという名前はフランが付けただろう。今回は私の番だ」


「わかったわ。どんな名前でも受け入れましょう」


「ありがとうフラン」


 天井を見つめるしかできない私。なんか面白くない。目をキョロキョロさせても、両親の顔しか見えないから、これも面白くない。


「では、ミカエラというのはどうだ?」

 

「ミカエラ……。良い名前かもしれないわ。この子の名前はミカエラ。ミカエラ・シャーロットね」


「ミカエラ。ようこそ我が家へ。今日から君は、シャーロット家の次女だ。元気に大きく育っておくれ」


 こうして、私の新しい名前がミカエラに決まった。それからはというものの、人生のやり直しレベルでめんどくさいことになった。


 まずは歩き方。ここは公爵家ということもあり、礼儀作法には非常に厳しい。前の世界の楽さが嘘のように思えてくる。


 挨拶の仕方。口調に態度。それは全部決められていて、いちいち嫌気がさしてくる。こういう生活になるなら、先に教えてよ……。


「ミカエラ。これはなんて読むかな?」


 礼儀作法の次にめんどくさいのは、異世界語の勉強。耳で聞こえるものは日本語なのに、紙に書いた文字はまるで読めない。


 英語によく似た文字なんだけど……。どこか歪で模様にも見えなくは無い。それが全部で150音あるって、この世界正気なの?


「ミカエラ。無理しなくてもいいんだぞ?」 


「わ、わかっ……りました……」


 この家庭では、親に対しての敬語が徹底されていた。これは、どこの公爵家でも同じらしい。


 少し前までは年相応にしようと『パパ』という言葉を使っていた。しかし、その度に指摘され直されてきた。


 ここでは、父をお父様。母をお母様と呼ばないといけない。唯一許容してくれたのは姉のレイラを呼ぶ時くらいだ。


 私は彼女をお姉ちゃんと呼んでいる。本人からは「お姉様と呼んで」と言われているけど、お父様が間に挟まってくれた。


「お、ミカエラ。レイラが帰ってきたみたいだぞ? 休憩がてらに遊んでこい」

 

「ありがとうございます。お父様」


 私は走って玄関に向かった。大きい家の中を走るのは楽しい。こじんまりとした一軒家ではなく、それなりの豪邸なだけで……。


 外は畑だらけ。これが公爵家だとは思わなかったんだよね……。もっと薔薇園とかあるんだと思ってたけど、そこは悲しい……。


「お姉ちゃん!」


「はぁ……。なによ」


「一緒に遊んでもいいですか?」


「は? 狩りは遊びじゃないわよ……。それに、まだ二歳のミカエラには無理」


 お姉ちゃんは遊びが狩りだけと考えているらしい。他にも遊びがあると思うのに……。お姉ちゃんの視野はピンポイントすぎる。


 そんな彼女の腰には、革のケースに入った小刀。どこからか、血なまぐさい臭いがしてくる。


 お姉ちゃんが後ろを向いて外に出ていく時、背中の中心から真下にかけて、血の飛沫跡がついていた。


 お姉ちゃんは私よりも四つ上。六歳だ。それで血を被っている。それも普通に全く気にしていないように。


「お姉ちゃん。また……」


「連鎖維持のためよ。増えすぎた生き物を殺すのは、使命の一つよ。覚えておきなさい。それに、わたしはあと二年すれば天職につく。お母様の天職と同じになるのを希望しているわね」


 これがこの世界の六歳が言う言葉か。私だったら、どう反応するだろうか。お姉ちゃんがどうして、生き物を殺すのか……。


「とりあえず、わたしは解体作業があるから。失礼するわ」


「お姉ちゃん!」


「なによ……」


 本当は見たくない。動物を解体するところを見たくない。だけど、これが近く役に立つと、頭のどこかで言っていた。気がする……。


 私はお姉ちゃんの後ろを歩き、捕らえてきた動物の山を見つめる。今日の大物は大きな熊だった。これをこれから解体するらしい。


「危ないからどいてなさい」


「はい。お姉ちゃん」


 熊を山から引き摺りおろす。そして、毛皮を剥ぎ始めるお姉ちゃん。彼女の身体がどんどん赤黒くなっていく。


 地面にも血溜まりが出来上がってきていた。毛皮を剥ぎ終わらせると、それを一人で引っ張って、少し離れた場所に移動。


 二歳の私にできることなんて、何も無いんだけど……。それでも、お姉ちゃんは『訓練だと思って手伝いなさい』と言う。


 テクテク歩いて毛皮を握ると力いっぱい引き摺っていく。約一メートル進んだところで、手を離した。


「ミカエラ。この熊どう解体するかわかるわよね?」


「う、ううん……。わかんない……」


「使えないわね……」


 お姉ちゃんは、首のところに刃を入れ腕を突っ込んだ。噴出する血。六歳にしては容赦なく力も強い。


 作業はあっという間に終わった。熊の肉塊は全部で三十部位から四十部位になっていて、これを二人で家の中に運ぶ。


 お姉ちゃんの大手柄のおかげで、今日の夕食は熊肉になった。前の世界では熊肉なんて食べたことがない。


 薄切りにしたからか、肉はパサパサしていた。


「そういえば、ミカエラは熊肉初めてだったよね?」


 お母様がそう言う。私は小さく頷いた。聞けば、最近熊被害が多発しているそうだ。そこで、お父様がレイラお姉ちゃんに依頼したらしい。


「レイラ。熊を狩ってどう思った?」


「そうね……。図体が大きいのにしては、動きがワンパターンで貪食だったわ。ただ、近接戦闘向きのわたしには不利ね……」


「そうか。では、次は隠密行動のコツを覚えるといい」


「承知しました。お父様」


 お姉ちゃんの意志には、強いものがあった。だけど、私には到底動物殺しなんてできない。動物も生きている。その命を頂くことだけは……。怖い。怖くて――。


 この日の夜は眠れなかった。夢でお姉ちゃんが多くの命を奪う姿を見たから。それが、非常に怖い。


 怖いのに。心から怖いって叫びたいのに、目を逸らすことができなかった。

読んでくださりありがとうございます。


ぜひブクマしていってください。


いいねは賽銭箱に大事にしまっておきます。

リアクションも別の賽銭箱に入れておきます。


次回、英才教育!

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― 新着の感想 ―
おしゃまなお姉ちゃんが可愛い…と思っていたら、 まさかの熊解体で一気に世界観が引き締まりました(笑) 公爵家=優雅というイメージを良い意味で裏切られ、 この世界が本当に“弱肉強食”なのだと突きつけら…
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