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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 第1章 私の新しい家族と天職

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第1話 神の世界の神殿にて

新作です!!!!


よろしくお願いします!!!!

「名も無き少女よ。其方は死んだ」


 少年はステージから見下ろすようにして、私にそう告げた。


 どうやら彼は、神様らしい。


 周囲を見回すと、一面に空が広がっている。


 神様の方へ視線を戻すと、豪奢な玉座に座っていた。


「私は本当に死んだんですか?」


 神様の言葉に、私は困惑した。最悪なことに、前後の記憶もない。


 死んだ人は、みんなここを通るのだろうか。


「通る」


「そうなんだ……」


「全ては神の気まぐれだけどねー」


 口調を変えた神様は、幼さが増した。


「もう一度聞きます。私は本当に死んだんですか?」


「うん。死んだよ。銃でズバーンとね!」


「銃でズバーン?」


「そー。ズバーンとね!」


 擬音で答えらえても、こちらが困る。この神の言語能力が気になるところ。


「其方が死んだ時の映像あるけど。どーするー?」


「いいです。自分が死んだところなんて見たくない……」


「ま、そーだよねー。其方はメンタル弱そうだしー」


 神はそんなことを言うと、何もないところからなにかを取り出す。


 複雑な模様が描かれたバッチ。これは多分、家の紋章だろうか。


「其方は前世でたくさんの生き物を救ってきたみたいだねー。道路で死んだ猫や狸……。家で飼ってたペットにー。人助けもたくさんしてるね。だけど、人を救うっていうのは、ただ助けるだけじゃないよ?」


「というと?」


「さあねー自分もわかんない。言っただけー」


 この神ムカつく。


「じゃあ、契約と行こうか。其方はどういう世界に行きたい?」


「世界って選べるんですか?」


「うん。選べるよ。でも、進む運命は変えられないけど……」


 無責任な神は信用できない。なのに彼は少し口角を持ち上げる。


「其方は勇者って信じる?」


「いえ、あくまでもあれは物語上のものだし、信じないですね」


「えー、戦国武将とかあるじゃん!」


 戦国武将は……。勇者じゃないような……。


「ということは置いといて、其方はもし勇者と結……なんでもない。これは置いておこう」


「なんですか?」


「いやあ。其方が行く世界では、勇者とそれ以外の結婚事例が多いんだ。其方は処女でしょ?」


「は、はい……。まだ十六なので……」


「だよね、だよね!」


 結婚を考えるなんて、かなり飛ばしている。


 向かう世界がどうでも、私にはわからない。


 神殿が突然揺れると、神様はビクリと背筋を伸ばした。


 きっと彼の上にも、上位神がいるのかもしれない。


 つまり、これは怒られそうになったんだと思う。


 神様が軽くコホンと咳払いすると、話を再開した。


「今から行く世界では、勇者と護衛が結婚するっていうのが常識なんだ」


「は、はあ……」


「納得いってないみたいだねー」


「納得いかないですよ。そりゃ」


 神様は軽く笑ったあと、玉座から立ち上がった。


 階段を介して降りてくる。


 彼の手元には、様々な柄の紋章があった。


 これが自然体なのだろう。諦めるしかない。


「うんうん。過去の人ねー。自分は今まで数百人の相手をしてきたけど。まともに転生してくれた人はいないよ?」


「使えな!」


「ふふふ。本音聞いちゃったー。其方はものすごく面白いのうー」


「おやじくさ!」


 脱線が非常に多い。こちらは本題に移りたいのに、始まらない。


 きっと忘れてしまったんだ。私は一言声をかける。


「神様。その契約ってなんですか?」


「うん。勇者契約っていうのと、護衛契約っていうのがあってねー。其方はどっちがいい?」


「いや、どちらもいらないです」


「あ、そ……。其方は勇者契約の方が向いていると思うけど……」


 勝手に進めていく神様。しかし、彼の手は護衛契約に向いていた。


「其方は護ることに自信ある?」


「いえ……。救うことはしてきたけど……」


「あ、そ……」


 私の言葉に興味を持っていないのか、神様は同じ言葉を繰り返す。


「あ、そうだ。其方に渡したいものが一つ。えーと。これこれ」


 神は一枚の紙を取り出す。それを受け取ると、次のようなことが書いてあった。



 ――――――――――――――――

 

 はいけい お姉ちゃんへ。


 誰にでもやさしいお姉ちゃん。みんなにやさしく、誰にでも平どうをつらぬいてきたお姉ちゃん。ぼくにとって、ものすごく大事な人でした。

 

 ペットや人にも優しく。ケガをした人をほおっておけない人でした。道路で亡くなったネコや犬はいつも回収して、家のしきちにおはかをたてていたね。


 そんなお姉ちゃんがぼくは大好きです。


 かん字わからなくて、ひらがなとカタカナが多くてごめんね。


 かんたんなかん字はお兄ちゃんにおしえてもらったよ。それと、じしょっておもしろいね。お姉ちゃんずっと読んでたよね。


 かん字もっとべんきょうがんばりたい。お姉ちゃんはおしえるのも上手だったから、お兄ちゃんが困ってたよ。


 『おれの妹は学校の先生に向いてる』なんて、言ってた。さすがにおかしいけど。お姉ちゃんはやっぱりお姉ちゃんだから。


 しんじゃったのは正直かなりつらかった。ぼくもそんなお姉ちゃんに今すぐにでも会いにいきたいよ。


 あの世でも元気にくらしてね。お姉ちゃんが大好きな兄弟家ぞく一同より。


 ――――――――――――――――


 家族が書いた手紙。けれども、字体を見ただけではわからない。


「読めた?」


「はい。汚い字で読みづらかったですけど……」


「うん。それ其方の弟が書いたものだからね!」


「弟……」


 たくさん居すぎて誰かわからない。そもそも、名前が思い出せない。未練も……多分ない……。


「あ、ごめん。ミスった」


「ミス?」


「護衛契約申請押しちゃった……」


「そりゃ。護衛契約の方に指置いてましたからね」


「自分の失態。残念賞。其方の任務は勇者護衛!」


 神様は軽快に宣言する。こちらとしては、複雑な気持ち。


 そもそも勇者を護衛するのは、付き人だと思うけど。それを私がやるってことだよね。


「うんそーだよー」


「あの……。そろそろふざけるのを……」


「ごめん。やりすぎた。これから其方は異世界に転生する。其方が八歳になるまで、この会話の記憶を一旦封印しよう」


 記憶を封印する。それは、前世のことを一時的に忘れさせる。


 そう解釈した私は、簡単に受け入れることにした。


「其方は弱肉強食をどう思う?」


「弱肉強食ですか?」


「そうだ。これから送る異世界には、魔王がいる。其方は八歳で天職を授かったあと、勇者の護衛をして魔王を倒してもらいたい」


 よくある展開。だけど、神の話には続きがあった。


「魔王も人間。生きている。だけど、人を大切にできる其方が、それを実行できるかが鍵となる」


「実行できるか……、ですか……」


 自分に自信はない。しかし、神様のイタズラで、未来が決まってしまった。


 視界が真っ白に染まる。記憶が曖昧になる。


「最後に一言。其方は異世界で探偵業をしている、シャーロット公爵家に生まれる。突然の真実には、決して否定をしないように」


 そうして気がついた時には、世界が開ける。新しい世界に導かれるがままに――。

読んでくださりありがとうございます


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― 新着の感想 ―
Xから来ました。 神様との軽いやり取りの中で上げたところで、うまい具合に家族からの手紙を落とし込み、 会話のバランスがとても良いなと思えました。 ですが、そのあとも重くなる訳でもなく。 続きが気にな…
軽妙な神様とのやり取りが楽しく、特に家族から届いた手紙の場面では、少女のこれまでの姿が少しずつ伝わってくる感じがよかったです。
神様のふざけていて人の常識が通用しない感じがとても好みです。上位存在感がよく出ていて良いですね。
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