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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる【サブストーリー更新中】  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 第1章 私の新しい家族と天職

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第1話 神の世界の神殿にて

新作です!!!!


よろしくお願いします!!!!

「名も無き少女よ。其方は死んだ」


 ステージ上の玉座に座る少年が言う。身長は小学生くらい。顔の整った彼は神様らしい。


 真っ白な髪に深紅の瞳。向けられる視線は、まるで何かを見透かしているようだ。


 しかし、なぜ私はこんな場所にいるのだろう。直前の記憶がすっぽり抜けていて、自分の名前すらも思い出せない。


 だから神様は私のことを〝名もなき少女〟と言ったのか。ここでようやく私が置かれた状況を理解した。

 

「本当に……私が?」


 神は私に死を宣告した。前後の状況を覚えていない私には納得がいかない。そもそも、死んだ後はみんなこういう場所を通るの?


「通る」


 あ、通るんだ。


「全ては神の気まぐれだけどねー」


 神は見た目の年齢に合った話し方をする。こっちの方が親しみあって良いかもしれない。


「もう一度聞きます。私は本当に死んだんですか?」


「うん。死んだよ。銃でズバーンとね!」


「銃でズバーン?」


「そー。ズバーンとね!」


 イマイチピンと来ない。死んだ――らしい――私に対して、思考と言葉が軽い気もするんだけど……。


「其方が死んだ時の映像あるけど。どーするー?」


「いいです。自分が死んだところなんて見たくない……」


「ま、そーだよねー。其方はメンタル弱そうだしー」


 神はそんなことを言うと、何もないところからなにかを取り出す。


 複雑な模様が描かれたバッチ。これは多分、家の紋章だろうか。


「其方は前世でたくさんの生き物を救ってきたみたいだねー。道路で死んだ猫や狸……。家で飼ってたペットにー。人助けもたくさんしてるね。だけど、人を救うっていうのは、ただ助けるだけじゃないよ?」


「というと?」


「さあねー自分もわかんない。言っただけー」


 この神ムカつく。


「じゃあ、契約と行こうか。其方はどういう世界に行きたい?」


「世界って選べるんですか?」


「うん。選べるよ。でも、進む運命は変えられないけど……」


 意味ないじゃん。この神は責任感が無さすぎる。こっちだって、兄弟を一人でまとめていた長女だって言うのに……。


「其方は勇者って信じる?」


「いえ、あくまでもあれは物語上のものだし、信じないですね」


「えー、戦国武将とかあるじゃん!」


 戦国武将は……。勇者じゃないような……。


「ということは置いといて、其方はもし勇者と結……なんでもない。これは置いておこう」


「なんですか?」


「いやあ。其方が行く世界では、勇者とそれ以外の結婚事例が多いんだ。其方は処女でしょ?」


「は、はい……。まだ十六なので……」


「だよね、だよね!」


 この神。早々に結婚とかを考えていやがる。そもそも、なぜ勇者と不特定多数が結婚するのやら……。


 神殿がゴゴゴと揺れる。これが何を指しているのかわからない。だけど、ヤバいことはわかった。この神、かなり情報を省いている。


「今から行く世界では、勇者と護衛が結婚するっていうのが常識なんだ」


「は、はあ……」


「納得いってないみたいだねー」


「納得いかないですよ。そりゃ」


 神はクスクスと笑い、玉座から立ち上がる。彼が歩くと、私との間に階段が現れた。


 神は紋章をクルクル回しながら、近づいてくる。そのいやらしい表情は、イライラするくらい見ていられない。


 それが彼の普通なのだとしたら、新しい世界へ落とされた人はどのような思いだったのだろう。


「うんうん。過去の人ねー。自分は今まで数百人の相手をしてきたけど。まともに転生してくれた人はいないよ?」


「使えな!」


「ふふふ。本音聞いちゃったー。其方はものすごく面白いのうー」


「おやじくさ!」


 この神はふざけすぎ。私の相手をしてくれるなら、もっとまともな人が良かった。ところで、彼は重要なことを話していない気がする。


「神様。その契約ってなんですか?」


「うん。勇者契約っていうのと、護衛契約っていうのがあってねー。其方はどっちがいい?」


「いや、どちらもいらないです」


「あ、そ……。其方は勇者契約の方が向いていると思うけど……」


 神は勝手にことを進めていく。これは、止めることができなさそうだ。だけど、彼の指は勇者契約の項目ではなく、護衛契約の方に向いている。


「其方は護ることに自信ある?」


「いえ……。救うことはしてきたけど……」


「あ、そ……」


 さっきから『あ、そ』しか言ってない。もしや私への興味が無くなったのか。そもそも、私が興味を持ってないんだけど……。


「あ、そうだ。其方に渡したいものが一つ。えーと。これこれ」


 神は一枚の紙を取り出す。それを受け取ると、次のようなことが書いてあった。



 ――――――――――――――――

 

  はいけい お姉ちゃんへ。


 誰にでもやさしいお姉ちゃん。みんなにやさしく、誰にでも平どうをつらぬいてきたお姉ちゃん。ぼくにとって、ものすごく大事な人でした。

 

 ペットや人にも優しく。ケガをした人をほおっておけない人でした。道路で亡くなったネコや犬はいつも回収して、家のしきちにおはかをたてていたね。


 そんなお姉ちゃんがぼくは大好きです。


 かん字わからなくて、ひらがなとカタカナが多くてごめんね。


 かんたんなかん字はお兄ちゃんにおしえてもらったよ。それと、じしょっておもしろいね。お姉ちゃんずっと読んでたよね。


 かん字もっとべんきょうがんばりたい。お姉ちゃんはおしえるのも上手だったから、お兄ちゃんが困ってたよ。


 『おれの妹は学校の先生に向いてる』なんて、言ってた。さすがにおかしいけど。お姉ちゃんはやっぱりお姉ちゃんだから。


 しんじゃったのは正直かなりつらかった。ぼくもそんなお姉ちゃんに今すぐにでも会いにいきたいよ。


 あの世でも元気にくらしてね。お姉ちゃんが大好きな兄弟家ぞく一同より。


 ――――――――――――――――


 家族の言葉というのはわかる。ここでも、私が死んだことになっていた。正直もう抗うことはできない。どうして……。


「読めた?」


「はい。汚い字で読みづらかったですけど……」


「うん。それ其方の弟が書いたものだからね!」


「弟……」


 たくさん居すぎて誰かわからない。そもそも、名前が思い出せない。未練も……多分ない……。


「あ、ごめん。ミスった」


「ミス?」


「護衛契約申請押しちゃった……」


「そりゃ。護衛契約の方に指置いてましたからね」


「自分の失態。残念賞。其方の任務は勇者護衛!」


 ルンルンしていやがる……。見た目年齢的には彼の方が下。だけど、ここまで刃向かえないのは、怖すぎる。


 そもそも勇者を護衛するのは、付き人だと思うけど。それを私がやるってことだよね。


「うんそーだよー」


「あの……。そろそろふざけるのを……」


「ごめん。やりすぎた。これから其方は異世界に転生する。其方が八歳になるまで、この会話の記憶を一旦封印しよう」


 封印するということは、記憶を消すってことなのだろうか。神に問いかけると、そういう訳ではないらしい。


「其方は弱肉強食をどう思う?」


「弱肉強食ですか?」


「そうだ。これから送る異世界には、魔王がいる。其方は八歳で天職を授かったあと、勇者の護衛をして魔王を倒してもらいたい」


 よくある展開。だけど、神の話には続きがあった。


「魔王も人間。生きている。だけど、人を大切にできる其方が、それを実行できるかが鍵となる」


「実行できるか……、ですか……」


 本当のことを言うと、自信はない。人を手助けする以外に、言葉で理解してもらう以外に思いつかない。


 でも、私のこれからの運命は神のイタズラで決まってしまった。逆らうことはできるのだろうけど、上手くいかなかったら世界は……。


 見える世界が真っ白になって、頭の中が綺麗になっていく。私、誰と話していたんだっけ?


「最後に一言。其方は異世界で探偵業をしている、シャーロット公爵家に生まれる。突然の真実には、決して否定をしないように」


 そうして気がついた時には、世界が開ける。新しい世界に導かれるがままに――。

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― 新着の感想 ―
神様のふざけていて人の常識が通用しない感じがとても好みです。上位存在感がよく出ていて良いですね。
Xから来ました。 この神様との掛け合い面白いですね。 ブックマークさせてもらったんで続きを時間のある時に少しづつ読ませてもらいますね。 評価のほうはもう少し先まで読んでから入れさせてもらいますね
神との掛け合いがとても面白かったです。 抜けてるようでちゃっかりしてる神が特に良かったです。
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