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ソシテ魔法ワニド死ヌ  作者: 悟飯 粒
第一の市街地
5/11

ブランブランな旅行

登場人物

岩村(いわむら)数不知(かずしらず):主人公。色々あって人類の敵だと見做されている。本人はそのつもりは一切ない。

・バーボッシュ=アーノルド:始まりの超越者。アルと呼ばれている。

 アルにワープしてもらい降り立った場所は海洋のど真ん中。真下に広がる海を眺めながら僕は落下していく。だがまぁ、僕はこんなことで慌てはしない。超越者の力を授かったということは空を飛べるということだ。想定するに服にでもその力が練り込まれているのだろう。僕は力んだ。どんな感じに飛ぶのか分からないからひとまず下腹部に、屁を故意的に出す時と同じ感じで力んだ。


ドボーーン


 ……どうやら飛び方が違ったらしい。僕は垂直に海に落下した。だがまだ慌てる時ではない。超越者の力を授かったということは、海に落ちた所でなんとでもなるのだ。だから全然、なにも、慌てる時ではない。そもそも海に落ちた所で人間には浮力があるのだ。自然に浮かび上がるに…………


ブクブクブク…………


 そうだ、服があったんだ。そうだそうだ。服が濡れたせいでアホみたいに重くなって浮力を超えてしまっている。だがまだジタバタする時ではない。そんなことをしたら余計に溺れてしまう。焦るな、絶対に焦るな。それに僕には魔法の言葉があるじゃないか。


 「アル。僕を戻してほしい」


 そうだ。たったのこの一言で僕は完全に安全なセーフゾーンに戻れるのだ。たとえ海底に落ちていこうと、僕は死なないのだ。


 「えーーそれぐらいなんとかしたまえ。超越者の力を使えるんだぞ」


 それだけ言うとアルはテレパシーを切った。

 なるほどなるほど、ほう?ふむふむ、なるほど?いや全然?何も全然焦ることはない。そろそろ水中に入ってから30秒が経過しようとしているが、ちょっと息苦しいが何も焦ることはない。暴れたって始まらない。そうだ、僕には4つの道具があるじゃないか。確かこの背中のポーチに入っていて…………


 手が届かない。しかも分厚いパーカーが邪魔で上手くポーチを前に持ってくることができない。


 「…………………」


 僕は急いで衣服を水中で脱ぎ捨てると、全力で海面に向かって泳ぎ出した!やばい死ぬって流石にヤバいって!全裸で必死に泳いでる姿は間抜けだけれど、見てくれを気にしてられるような状況じゃあない!


 「プハーーーッ!!!」


 海面に出た僕は深呼吸を繰り返して必死に息を整える!死ぬかと思った…………こんな苦しい死に方で死にたくはない!ていうか死にたくない!ち○こを空に向けて海を漂流する。

 アルから貰った服も道具も何もかもを失ったけれど、なに、大丈夫だ。僕には魔法の言葉があるのだから。


 「おーいアルー。僕を戻してくれー」

 「えーー、面白そうだからやだ」


 それだけ言うとアルはテレパシーを切った。


 ………………


 「禿げ上がるまで頭こするぞ」


 僕は仕方ないから陸地が見えるまで泳ぎ続けた。



〜13時間後〜


 「……………」


 泳ぎ疲れた僕は、またち○こを空に向けて漂流し続けていた。あーだめだこれ。陸地全然見えない。なんとかなるとかそういう次元にいない。普通の発想じゃ打破できないほど不可能な状況に陥ってる。


 「あの道具とかあったらなぁ。まだなんとか出来たかもしれないのに」


 そんなことを言うと、僕の捨てた服と道具が近づいてきた。プカプカープカプカーと、海に浮いてるブイみたいに。


 「私が渡した服と道具は、たとえ捨てようとも燃やそうとも必ず君の元に戻ってくるようになっている。だと言うのに君が泳いで離れるから、君の元に辿り着くのに時間がかかってしまったじゃないか」


 テレパシーが頭の中に響いてくる。…………殺せるのなら今すぐにでもあのクソ小僧を殺したい。


 僕は服と道具を掴みラッコのように腹の上においた。


 「………この状況をなんとかするには何を使えばいい?」

 「それなら服を着て念じればいい。空を飛べるぞ」


 僕は水中で、疲れた体を必死に動かして服を着て念じた。常識的に考えたら自殺行為だなこれ。


 「…………飛ばないんだけど」

 「それはパッションが足りないからだ。もっと飛びたそうに念じないと」

 「魔法って根性なの?」

 「私達超越者の場合はそうではないが、人間だと勝手が違うのかもしれない。[空を飛ぶ!]って声に出したらどうだ?」


 …………最高にダサいけれど、それが方法だと言うのならば仕方がない。僕はとても合理的に判断を下す男。恥なんぞで行為を中止することはない。


 「空を飛ぶ!」「もっと大きな声で!」「空を飛ぶ!!」「もっと情熱的に!!」「僕は空を飛ぶ!!!」「もっと積極的に!!!」「僕は空を飛びたいんだ!!!!」「もっと激しく!!!!」「空を飛ばせてくれぇえ!!!!!」


ジャブジャブ…………


 飛ばないんだけど。


 「ああすまん。右手首を一回触らないと飛べないのを忘れていた。」


 ……………殺す!


 右手首を触ると呆気なく僕の身体は浮き上がった。


 「……………殺す!!」


 僕は陸地を目指して飛んだ。



〜2時間後〜


 陸地に目立たないように降りた僕は、ゆっくりと浜辺を歩いていた。なにもつけずに空を飛んでいる所なんて見られたら僕が超越者だと勘違いされかねないからだ。僕はただの旅行者。こんな超火力の戦争が起きていて人類が滅びようとしているご時世に、安全安心に旅行したいだけの旅行者なのだ。敵だと見做されるのは御免蒙る。

 えーっと、ここは…………ウルグアイか。ネットで調べた感じだと、ワインやチーズ、牛肉が有名なのか。観光名所も沢山あって、北米と南米で最も生活しやすい国一位なのか!へー凄いじゃん。ここに定住しようかな。


 「ひとまず牛肉でも食べてみるかな。未成年だからワインは楽しめないけど。」


 僕は市街地へと向かった。

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