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ソシテ魔法ワニド死ヌ  作者: 悟飯 粒
始まりの章
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4/11

ブワンブワンする旅行

登場人物

岩村(いわむら)数不知(かずしらず):主人公。幼馴染にキューちゃんと呼ばれている。理由は不明。とても合理的な判断を下す。それが僕のいい所だ。

・幼馴染:名前は不明。よく数不知と遊んでいた。

・バーボッシュ=アーノルド:始まりの超越者。

 「気に入ったから君だけは生かしておいてやろう。30分後にここを出ていけば安全は保証する」


 始まりの超越者であるバーボッシュ=アーノルドはそれだけ言うと、僕の肩から手を離した。


 「ちょ、ちょっと待ってここどこ!?」

 「僕の家だ。………ああ、どこに建っているか聞きたい感じか。ここは3次元と4次元の狭間だ。君が出たいと願えばすぐにでも元いた場所に戻れる。暇潰しになるようなものはないが、まぁ、30分なんとか過ごしてくれ。私はその間にあの街を滅ぼしてくる」


 彼の今の会話につっこみたいことは沢山あるのだけれど、しかし今一番間違いなく優先順位の高いところを聞かなくては!


 「30分後でいいんだね!?30分後なら安全だと!?」

 「…………やはり君は変わっているね。そうだよ、30分後にここを出れば攻撃に巻き込まれないから安全だ」

「わかった!」


 僕の言葉を聞いて彼は消えていった。さて、彼の住処だと言うこの次元の狭間。宇宙にいるみたいに周りは暗黒物質に覆われていて、しかしここには芝生もあれば木もある自然に覆われた一軒家。変な感じだなと思いながら僕は芝生に座り込み状況を整理する。

 僕の街は今、あの超越者に襲われているのだろう。それを隠蔽するために政府は工場での火災+バイオテロの発生を大きく発表した。…………多分こんな感じだろう。なぜ超越者が街を襲っているのか一切わからないけれど、まぁ、元から彼らの考えていることはよく分からないから無視すればいい。


 「…………キューちゃん聞こえてる!?」

 「ん?ああ、そう言えば通話中だったね」


 バーボッシュ=アーノルド………アルとでも呼ぶか。彼が出てきてから彼女の声も聞こえなくなった。アルか政府のどちらかがネットワークを遮断したと考えるのが妥当だろう。やはり超越者が暴れているという事実を彼らは隠したがっている。………というかここネット繋がってるんだ。凄いな。


 「今、ニュースでキューちゃんの街で超越者が暴れ回っている映像が流れてるんだけど大丈夫なの!?」

 「大丈夫だよ。その暴れ回っている超越者のお家にいるから。」

 「なんで!?」

 「さぁ?気に入られたらしい」


 よくよく考えると変な話だ暴れ回っているやつに命を助けられたなんて。…………それと、ニュースが流れたってことはネットワークの遮断が解除されたってことだな。やはり隠匿したがっていたのは政府の方か。技術力含めた全てにおいて上回っている超越者が遅れをとることはない。ネットワークの解除は超越者がしたと考えて間違いない。


 僕はネットをつけてニュースを見た。


 「………さっき見たのと同じ光景だ。触れてもいないのに物が全て破壊されていく」


 大きなビルが巨大な魚に食われたみたいにくの字にひしゃげ倒壊していく。アルに向かって飛んでいく機関銃の弾丸は全て空中で弾かれ、悉く全てが破壊される。壊滅だ。たったちっぽけな1人の少年の手によって街が滅んでいく。…………たしかにこのペースでいけば30分でこの街は滅びるな。


 「なんで超越者は暴れてるんだろう。」

 「さぁなんでかな?…………ああ、そういえば………人を探してるのかも。そいつを殺すつもりなんじゃないかな。」

 「…………そんなことある普通?」

 「いやぁ、おかしいよねやっぱ」


 なんでも出来てなんでも知ることができる超越者が人探しなんて変な話だ。


 「それよりもさ、普通に考えて超越者が暴れてるってやばくない?止められるものがない気がするんだけど」

 「…………言われてみれば、もしかしてこれって人類の危機?」


 一個人レベルでしか考えてなかったけれど、そもそも超越者を殺すなんてことを人間が出来るのだろうか。このオーバーテクノロジーに囲まれた現代、そのオーバーテクノロジーを生み出したのは彼ら超越者なのだ。僕達がなんとかしようにも彼らを超えることなんて無理なのでは?


 「始まりの超越者であるバーボッシュ=アーノルドから全人類に告ぐ。今より我らは全ての人類を超越者にするべく、超越者になれぬ不適合者を根絶やしにするつもりである」


 僕達の頭の中にアルの声が流れてくる。テレパシーというやつか。


 「不満があれば私に挑んでくるがいい。ただし、もし挑んでくるのであれば…………」


グシャッッッ!!!!


 街がまるまる一個、見えない力によって握り潰され消失した!!


 「こうなる。………以上だ。次は隣の街に行く予定だ、死にたくなければ私よりも速く動くことだ。」


 そう言うとアルはワープしてその場から消えた。ワープより速く動くとか不可能じゃん…………


 「…………さて、どうしたもんかね?」

 「私に聞かないでくれる?」


 僕は呆然としながら、アルの家で時間を潰した。


〜3年後〜


 悲しいことに僕は今、アルの家にいる。あれから3年、アルに殺されなかった僕は人類側の敵と見做されてあちこちを放浪。最後に行き着いた所はここ、異次元の狭間に建てられたアルの家だったってわけ。


 「もう諦めたからさ、さっさと人類を滅ぼしてくれない?」


 僕は芝生に寝転がりながらアルに言った。


 「そう焦るな。10年ぐらいかける予定なのだから、まだまだ滅亡させることはできん」


 アルはご飯を食べながら千里眼を発動させて人類の動向を眺めていた。

 アルの宣戦布告によって世界の情勢は一変した。人類側の味方につく超越者と、人類を滅ぼそうとする超越者、そんな彼らを倒して世界を手中に収めようとする超越者の三つ巴の戦いになっていた。人類からすればふざけるなと言った話だが、困ったことにこれがリアルなのだ。僕は悪態をつくことを諦めてこの完全に安全な場所で寝転がってるってわけ。人間じゃあどうしようもないよ。


 「ふーーん…………あ、そうそう。今日の朝食でヨーグルト切らしちゃったから補充しといて」

 「まるで自分の家みたいに生活するんだな。」

 「僕は愛着とか湧かないんだ。どこでだって住めるし、どんな物だって利用する。住めば都なんて言葉があるけれど、僕からすればどこでだって都だよ」

 「私が超越者だというのを理解しているか?」

 「人類の敵だろうと僕の敵じゃなければ何でもいい」


 しかしこの小さな家にずっといるのは退屈だな。やることがない。ずっとネットサーフィンをしたところで飽きるし、ゲームもやり尽くした。3年前のあの日から新作ゲームなんて出るわけもないし……………はぁ、どうしたもんかな。


 「………そんなに早く自由になりたいのなら、君に私の作戦の一部を担ってもらおうかな」

 「それはそれでやだな。僕は危険が嫌いなんだ」

 「保守的だな」

 「それが僕のいい所だ」

 「しかしこんな所で若い時分を過ごすのは嫌だろう?青春が過ぎ去っていくぞ。」

 「人間、いつだって青春だよそれを求めない限りは。たとえ何十年ここでダラダラ過ごした所で、僕が納得していれば大丈夫。」


 彼の話だとあと7年か………まぁ、死なないのが1番だ。人類の動向をここから安全に眺めておこう。


 「…………それじゃあ旅行に行くのはどうだ?私の力を授けてやるから、安全に地球を旅行できるぞ」

 「なるほど?…………確かにそれはいい案かもしれない。…………本当に安全なの?」

 「私の力を授けると言っただろう。超越者の力を持っていて危険になることなどありえん。」


 3年前の記憶が蘇る。人類の兵器を悉く無力化し、30分もせずに街を1つ滅ぼしたあの力…………あの力を以ってして危険なんてものは存在しないか。


 「そこまで譲歩してくれるなら、僕も旅行してみるか。滅亡しかかってる人類の最後の足掻きをのんびりと眺めるのも面白そうだ」

 「本当に君は面白いな。同じ人類に同情は湧かないのか?」

 「自分と他人は違うからね。知らない人間が死のうと僕は興味ないんだ」

 「…………やはり君はこっち側の人間だよ。とても合理的に判断をくだせるその冷酷さ。素質がある」


 そこまで嬉しくないけれど、まぁ、喜んでおくか。僕はちょっとだけ笑ってすぐに無表情に戻った。


 「それじゃあこの道具を4つ渡しておこう。これは超越者の力、exmagicを再現した超科学だ。これを使って安全安心に旅行してきたまえ」

 「…………最後にひとつ条件を付け加えてもいい?」


 アルから道具を受け取り、僕は色々なリスクを想定した上でひとつ提案した。


 「条件による。言ってくれ」

 「僕が危険だと判断し、[戻してほしい]って言えばすぐにここにワープさせてくれ」

 「ほう?なるほどなるほど………いいよ、[戻してほしい]で良いんだな?」

 「ああ、それで構わない」


 アルが指を鳴らすと、僕の服が変わった。赤と青と黄色の3原色で構成された斑模様のパーカーとデニムジーンズ。目に悪い。


 「それじゃあ最初はどこに降ろして欲しい?」

 「んーーそうだな。…………僕の家から1番離れた場所にして欲しい。地球の裏側ってやつ?」

 「なるほど、点対象の位置でいいんだな。それじゃあワープさせるぞー」


パチンッ


 指が鳴り、こうして僕の安全安心な旅行が始まった。ただ、降り立った場所が海洋のど真ん中で、僕はこの旅行に少しの不安を覚えた。

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