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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
第一章 変化と解放

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51.絶望は始まったばかり……

 香織達が抑えていた黒龍から黒い爆発が起こり、香織達を巻き込んだ。その様子を見ていた玲二達は、さらなる恐怖に襲われる。


「何だ……あれは……?」


 玲二達が見たのは黒い炎を纏った黒龍の姿だった。さらに、黒龍の周りの木々が次々に燃えていく。


「接近すれば、発火するようだな」


 玲二の隣にいた里中がそう分析した。そして、黒龍の眼が玲二達に向く。


「まずいな。魔法攻撃部隊は、詠唱を開始! 前衛は、黒龍の脚を止める! 遠巻きに囲め! 近づけば発火する恐れがあるぞ! 魔法防御部隊は、詠唱が終わり次第、前衛に魔法防御!」


 玲二は、冒険者達に指示を出すと、黒龍に突っ込んでいった。ギルド本部長を一人で行かせるわけにも行かない冒険者達も後に続いて行く。


「投げ物がある奴は、黒龍に投げろ!」


 冒険者の中から何人かが、投げナイフや石などを黒龍に投げつける。すると、黒龍の五メートル先から燃え始め、一メートルまで近づくと完全に燃え尽きた。


「奴から五メートルの範囲に入るな! 焼かれるぞ!」


 冒険者達は、黒龍から十メートル離れた付近で止まり、半円状に囲んだ。


「攻撃は基本的に避けていけ! 魔法防御を受け次第、攻撃開始だ!」


 玲二がそう言うと同時に、冒険者達の身体を赤い光が包み込む。魔法の一つである属性耐性上昇魔法だ。この赤い光は、火属性の耐性を上げている証拠だ。


「防御が来た。全員無理せずに攻撃開始! 何か違和感を感じたら、すぐに退け!」

『了解!!』


 冒険者達が黒龍に群がっていく。それまで静観を続けていた黒龍は、玲二達が自分に向かってきたことによって、動き始める。


 ガァアアアアアアア!!


 黒龍は身体を回転させて尻尾で薙ぎ払おうとしてくる。


「盾!!」


 大盾を持っていた冒険者の三人が尻尾を受け止める。


「くっ! 熱い!」


 冒険者達の盾が少し凹んでしまう。


「受け止め続けることは出来なさそうだな……」


 尻尾で受け止め続ければ、こっちの盾の方が先に使い物にならなくなってしまう。


「全力攻撃!」


 攻撃直後の黒龍はすぐに次の行動に移ることは出来ない。そこを狙って、冒険者達がそれぞれの得物で攻撃をする。剣、槍、斧、様々な武器を使って攻撃しているが、その悉くが鱗や皮膚によって弾かれてしまう。


「くっ! 全員! 離れろ!」


 玲二の合図で近接攻撃をしていた冒険者達が離れた。近接攻撃をしていた冒険者達は、自分達の身体を見下ろす。


「たったあれだけの時間近くにいただけで……」


 玲二や里中を含めた冒険者達の身体が、少しだけ焦げていた。火に対する耐性を上げる事によって、黒龍に近づけるようになったが、それでも長時間近くにいれば、火に包まれてしまう。


「魔法!」


 玲二の声とほぼ同時に多種多様の魔法が放たれた。だが、そのほとんどが燃やし尽くされてしまった。唯一当てられたのは、水や氷の魔法だ。


「やはり、水や氷じゃないと、攻撃が通らないのか」


 魔法攻撃部隊は多少の動揺があったが、すぐに水や氷の魔法の準備を始める。魔法防御部隊は、何重もの耐性魔法を冒険者に付与していく。


「これならいけるか?」


 玲二達は、付与が掛けられ、黒龍に隙が生じる度に攻撃を仕掛ける。付与の回数を増やせば、それだけ耐えられる時間は増えたが、それでも五分が関の山だった。


「俺達に出来る事はこれくらいか……。なら、これを繰り返すしかないか。盾持ちは香織の盾に入れ替えろ!」


 大盾を持っていた冒険者達が、マジックバッグの中の香織に作って貰った大盾と入れ替えた。そのタイミングで、黒龍の口が赤熱していく。


「ブレスだ! 魔法防御! 盾持ちの後ろに移動しろ!」


 冒険者達が、盾持ちの後ろに下がり、防御部隊によって魔法障壁が張られる。そして、黒龍の口から黒い炎が放たれる。魔法障壁に当たり、威力がほんの少し減衰したが、すぐに割られ、盾持ちの盾とぶつかる。


「ぐぅぅぅぅぅぅ……!!」


 盾持ちの冒険者達は、盾越しに来る熱気に必死に耐えていた。だが、ここである事に気が付く。


「盾で防げている?」


 盾持ちの冒険者達は互いに顔を合わせる。


「さすがは、香織だな。この炎にも耐えられる盾などそうそう無いだろうな」


 玲二は、黒龍の黒い炎に耐えている盾を見て、思わず感心する。玲二達にとっては五分にも十分にも感じられたが、実際には十秒程の時間だった。


「ブレスが止んだぞ! たたみ掛けろ!」


 黒龍のブレスが止んだ瞬間に、盾持ちの後ろから玲二達が飛び出す。黒龍が次の行動に移る前に攻撃を仕掛けるためだ。


「はぁああああああ!!」

「おりゃあああああああ!!」

「どりゃああああああ!」


 黒龍にかすり傷程度の、いや、それよりも小さい傷しか与えられないと知っていても、玲二達は攻撃を止めることはなかった。


 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、攻撃と撤退を繰り返し、黒龍に少しずつダメージを与えようと藻掻く。もしかしたら、それは意味の無いことなのかもしれない。香織や咲が復活すれば、玲二達の攻撃以上のダメージをいとも簡単に与えるのかもしれない。そんな風に考える冒険者は少なくない。いや、ここにいる冒険者は、全員そう考えていただろう。


 だが、それでも、玲二達が攻撃の手を止めることはなかった。香織達が来るまでの足止め。それしか出来なくても、玲二達はその役目を必死に務めようとしているのだ。


「俺達が戦えているのは、香織のおかげだな」


 玲二は、黒龍の身体を観察していて、気が付いた。黒龍よりも遙かに弱い自分達が何故戦えているのかを。


「あの鎖か……」


 玲二の横で、同じ事に気が付いた里中が呟いた。そう、身体に黒い炎を纏った黒龍の羽に未だ、香織の『束縛の鎖・改』が巻き付いているのだ。


「それと、あの接着剤だな」


 黒龍の脚には、身体を接着された時の名残か、白い塊がべったりと張り付いている。それは、脚の裏から、膝関節までを覆っている。鎖と接着剤、この両方が黒龍の動きを完全に阻害しているのだ。


「だが、それも長くはない。どちらも、黒龍の炎に耐えきれるものでは無いようだ。少しずつだが、崩れかかっている」


 香織の道具も何にでも耐えられるような物ではない。香織の道具による拘束が緩めば、今の状況は完全に変わってしまう。


「なら、出来るだけ消耗させよう。自分達に出来る事をするぞ!!」

『おう!!』


 玲二達は、戦い続ける。自分達に出来る事があるかぎり……


 ────────────────────────


「うぅ……」


 気を失っていた香織は、掠れる視界の中、ゆっくり立ち上がる。


「何が……」


 香織は、頭に手を当てる。すると、ぬめっとした感触があった。


「血?」


 周りを見回すと、近くの木に血がべったり付いていた。


「木に頭をぶつけて気絶しちゃったんだ……」


 香織は、少しずつ気絶する前の事を思い出していた。


「黒龍の変化……炎を纏うか……でも、身体は再生してはいなかった。再生は、赤龍の特徴。じゃあ、黒龍の特徴はあの黒い炎を纏うこと? 確かに、身体は再生していなかった。攻撃を続ければ、倒せるかもしれない」


 段々と意識がはっきりしてきた香織は、黒龍の居場所を確認する。


「いた。私達からあまり離れてない。咲と焔は!?」


 香織は、一緒に戦っていた二人を探す。


「いた!」


 倒れ伏している二人を見つけた香織は、すぐに駆け寄る。


「咲! 焔!」


 咲は、焔を抱きしめる形で気絶していた。


「傷は再生してきてる。でも、意識はない」


 香織は、二人に強化された回復薬を振りかける。


「それと」


 その後で、二人の周りに『近寄らない君』を撒いてモンスターの接近を防いだ。


「早く眼を覚ましてね」


 香織は、二人に背を向けて黒龍に向けて走り出した。


「坂本さん達が戦ってる。今は私の鎖があるから、空を飛んでないけど、飛ばれたら厄介だ。こんなことなら、もっと火の耐性に重きを置いて作れば良かった。耐久度と拘束力に振っちゃったじゃん!」


 香織は、黒龍に文句を言いながら、アイテムボックスから『束縛の鎖・改』を取り出した。


「すぅ~~……、皆! 離れて!!」


 香織は大きく息を吸い込んで、大声を上げた。


「!! 総員、黒龍から離れろ!」


 その声に、すぐに反応した玲二は、冒険者達に離れるように指示する。それに素早く従って、冒険者達が離れる。


「『起爆』!!」


 黒龍の後ろの両脚、その脛付近で爆発が起こり、周囲にあるものを吸い込む。香織の虎の子、『超重力爆弾』だ。それを二つ、両脚の接着剤に混ぜてくっつけておいたのだ。


 ガァァァアアアアアアアアアアアア!!!!


 黒龍の悲鳴が響き渡る。


「正直、もう少し消耗させてから使いたかったけど……」


 香織の爆弾によって、黒龍は後ろ脚を両方失ったかに思えたが、実際には、少し抉れただけだった。


「やっぱり、これでもあれしかダメージを与えられない……。そら!!」


 黒龍に接近した香織は、束縛の鎖を投げる。それは、黒龍の羽だけでなく、身体全体に巻き付いた。黒龍は、うっとうしげに身体を捻る。黒龍を拘束した香織は、玲二達と合流する。


「坂本さん!」

「香織! 無事だったか!」

「うん。そっちは?」

「見ての通りだ。大分消耗しているが、死者は出ていない。香織の回復薬のおかげで、怪我自体は治すことも出来た。後は、あいつにちょっと傷を付ける事が出来たくらいだ」


 玲二は、香織に早口で、これまでの状況を話した。香織は、すぐに黒龍の身体を確認する。


「何カ所か、結構削ってる部分があるね。同じヶ所を攻撃し続けた?」

「ああ、だが、まだ表層だけだ」

「私が拘束するし、皆の付加も私が手伝う」

「ああ、頼んだ!」


 香織は、前衛を務める冒険者達に火耐性の付与を行う。


「あの炎の特徴は!?」

「何でも燃やす! 魔法も水と氷の属性以外、全て焼けた!」

「じゃあ、水と氷の魔法を中心に使えばいいね!」


 香織は、次に冒険者の武器に水属性の付与を行う。


「これは?」

「皆の攻撃を水属性にした! これで攻撃が通りやすくなるかも!」

「よし! 基本はさっきまでと同じだ! 攻撃を防ぎ、反撃をするぞ!」

『おう!!』


 香織が復活したことで、戦局に変化が生じる。

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