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25.狂骨の砦 ボス戦(1)

改稿しました(2021年8月12日)

 香織のコンパスは、下り階段を間違える事無く指し示し、十階層から十四階層まで降りる事が出来た。その間の階層は、全てが草原型だったため、降りた直後に香織が広範囲殲滅魔法を使い、モンスターを全滅させた。


「あの香織さん。今更なんですけど、人がいるかもしれないですよ?」


 恵里が遠慮がちに言う。確かに、このダンジョンに人がいて、十階層から十四階層までにいれば、香織の魔法に巻き込まれていただろう。


「多分大丈夫だよ。ここには、人が少ないからね」


 香織の説明に、万里と恵里はぽかんとしている。


「香織、説明が足りないわよ。『狂骨の砦』は、面倒くさいモンスターが沢山いるわりに、うまみがないのよね。素材は骨だけだし、鉱石は下の方じゃないと取れない。宝箱も同様。だから、普通に潜る人は少ないというか、いないわ。

 それだったら、もっとうまみの多いダンジョンが腐るほどあるもの」


 咲が、詳しく説明した。ちなみに、ここまでで宝箱は出現していない。


「でも、うまみが無いのに、何でここを修行場所にしたの?」

「香織の欲しい素材があって、難易度もちょうど良い。面倒くさい敵が出てくるから、対応力を鍛えるのにも使えると言ったところかしら」

「意外と考えられていたんですね」


 恵里が感心していた。


「恵里は、私達が適当にやっていると思っているのかしら」

「い、い、いえ、そんな事無いですよ!」


 咲が、怖い笑顔を恵里に向ける。恵里は、あわあわとしている。


「咲が意地悪してる」

「えっちゃんは、気付いていないね」

「咲も気付いていながら、まったくやめようとしないね」


 一、二分程で恵里への意地悪をやめて、先を急ぐ。十四階層は、洞窟型となっていた。


「やった! このまま洞窟型なら、採掘が楽になるよ!」


 このまま、十五階層に繋がる下り階段を探す。

 洞窟型なので、広範囲殲滅魔法は使えない。使った瞬間、洞窟が歩ける状態では無くなってしまうからだ。

 しかし、採掘が楽になるというメリットもあるので、香織にとっては大変嬉しいことだ。


「さぁ、進んで行こう。咲、前をお願い」

「ええ、分かったわ」


 香織達は、咲を先頭に前へと進んで行く。途中で、スケルトンの大群に襲われたが、香織と咲によって、すぐに殲滅された。

 そうして、すぐに十五階層への階段を見つけた。十五階層も、洞窟型だったので、香織は、早速採掘を始めた。土魔法を使い、鉱石を壁から取り出していく。前にもやった方法だが、何回か別の方法でも行った結果、この方法が、一番鉱石を傷つけずに取り出せる事が判明した。その代わり、少し時間が掛かってしまう。

 その間は、咲、万里、恵里に周りの警戒を任せる。そうして、取り出した鉱石は鉄だ。そして、鉱石の他に魔水晶と赤魔水晶を取り出していく。この二つは、鉄に比べて、取れる数が少ない。


「ここのは取り尽くしたから他の場所に移ろう」


 そこから何カ所も回って数を増やしていくが、まだまだ、足りない。十五階層の採掘場所を全て回ったところで、次の階層へと移動する。そのまま、採掘を続けて、最終階層である十八階層に着いた。しかし、十八階層の様子は、香織達が以前来たときとは打って変わっていた。


「ここって、真っ直ぐの通路とボス部屋しか無かった気がするんだけど」

「私もそう記憶しているわ。でも、どう見ても、複数の分岐があるわね」


 香織達の目の前には、分岐が複数ある通路があった。元の『狂骨の砦』とは全く違う形だった。


「取りあえず、採掘しながら、先に進んで行こう」


 香織達は、採掘が出来る場所を探しつつ、進んで行く。結果、真ん中と右の通路は行き止まりだったが、数多くの鉱石や水晶、宝石が手に入った。ミスリルも赤魔水晶も魔水晶も、本来欲しかった数よりも多く手に入ったため、香織は満面の笑みだった。


「まさか、こんなに沢山採れるとは思わなかった!」

「香織。喜ぶのは良いけど、気を抜かないでね。今までとは、何もかも違うんだから」

「分かってるよ。万里ちゃん、恵里ちゃん、離れないでね」

「「はい!!」」


 最後の通路である一番左の通路に入る。そこは、一切の分岐がなくひたすら真っ直ぐに続いていた。


「何か長くない?」

「そうね、前のダンジョンでも、こんなに長くはなかったわ」


 長い長い道のりの末に、大きなドーム状の部屋に辿り着いた。そこの中央には、大きさ十メートルを超える大きさの蛇型のスケルトンがとぐろを巻いていた。その蛇型のスケルトンは普通のスケルトンとは違っていた。

 スケルトンは、生前の姿が分かるような形をしている。今までのスケルトンなら、全員人の形している。この『狂骨の砦』には、人型しかいないが、他にも犬や猫、鳥などの形をしているスケルトンもいる。それこそ、蛇の姿をしているスケルトンもいる。

 しかし、目の前にいるスケルトンは、下半身が蛇、上半身が人の姿をしており、さらには、その上半身から翼のようなものも生えている。それは、神話に出てくるエキドナが白骨化したかのような姿だった。


「スケルトン・エキドナって名前だって」

「そのまんまね」


 エキドナは、こちらを認識すると、すぐさま飛びかかってきた。咲は万里を、香織は恵里を抱えて左右に避ける。


「香織、このエキドナってどのくらい強いの!?」

「赤龍と同じくらい」


 香織の鑑定眼によって見えるステータスは、赤龍と同じくらいだった。その言葉に、万里と恵里の顔が強張る。赤龍と香織達の戦いは直接見てはいないが、戦闘の跡や咲が眠っていた事から、凄絶な戦いだったことが窺えた。

 そんな戦闘がまた起きようとしている事、そして、巻き込まれようとしている事に恐怖を覚えているのだった。


 香織と咲は二人を抱えたまま合流する。


「まずいかもね。取りあえず、二人は結界の中に入れておこう」


 二人を地面に降ろして、刻印魔法を用いて地面に魔法陣を描く事で、結界を作り出す。


「二人とも、ここにいて。危険なときは、私が渡した道具を使ってね」

「うん」

「お気をつけて」


 香織と咲は、結界から出て、エキドナと対峙する。


「前は、ただの人型スケルトンだったのにね」

「赤龍と同じくらいって、簡単に言ったけど、勝てるの?」

「咲がいるから大丈夫でしょ」


 そう言って、互いに微笑み合い、得物を構える。


 エキドナが飛びかかってくる前に香織が動きだした。靴の刻印魔法を発動して、空中を駆け上がる。それに続いて、咲も空中を駆ける。咲は、赤龍戦の後に獲得した空中走行を使って、駆けている。

 スケルトンの弱点は、形が変わっても同じ頭だ。香織達は、自分達よりも上に位置する頭を狙わなければいけないので、空中を走っているのだ。


 エキドナは、空を走っている香織達を捕まえようと手を振り回す。二人は難なく避けて、エキドナの頭に肉薄する。


「やあああああ!!」


 香織の火臨が、エキドナの頭を打つ。エキドナの頭が火に包まれるが、エキドナは痛がりもしない。それどころか、叩いた頭に傷一つ付いていなかった。


「固い!」

「香織! 一端退いて!」


 香織と入れ替わり、咲が刀を一閃する。


 エキドナに、かすかに傷が付く。エキドナは、スケルトンなので声を上げる事が出来ないが、怒りを咲に向けているのが分かった。エキドナの尻尾が、咲に向けて振われる。

 咲は真っ向から対抗して、叩き斬ろうとする。しかし、咲の刀とエキドナの尻尾は、どちらも引けを取らない強さらしく、空中で刀と尻尾の鍔迫り合いとなった。


「このスケルトン固すぎる。防御力だけで言ったら赤龍よりも上じゃないの!?」

「そうだね! 防御力は赤龍よりも上だよ!」


 咲のぼやきに、香織が丁寧に答える。


 香織は、エキドナが咲に執心している内に、足下に爆弾を置いていく。最後に、火の付いた爆弾を投げてから、空中に逃げていく。香織が、爆破範囲内から脱出した直後に、起爆し、次々に連鎖していく。


 声を上げられないエキドナは、藻掻き苦しみながら、爆炎に沈んでいった。


「やった!」

「倒した!」


 万里と恵里が、その光景を見て喜んだ。エキドナが倒れたと思ったからだった。

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