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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
第一章 変化と解放

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25.狂骨の砦 ボス戦(2)

 香織と咲は、エキドナが爆炎に沈んでいったのを見ても警戒を崩さない。それどころか、香織は、追撃としていくつもの魔法を展開している。

 そんな香織に、エキドナの尻尾が襲い掛かってくる。


「香織!!」


 咲が、尻尾による突きを弾く。その瞬間に、香織が、待機させていたいくつもの魔法を放っていく。


 その全てを、エキドナは避けていく。身体をくねらせて、縦横無尽に走り回る。その速さは、赤龍よりも速かった。


「速さもこっちが上じゃない!」

「う~ん、数値上は変わらないんだけどなぁ」


 そう言っている内に、香織は、火臨から自分で作った棒に持ち替える。


 エキドナは、香織に対して飛びかかってきた。香織は、真っ向から突っ込んで、棒を振りかぶる。

 いきなり突っ込んでこられたエキドナは、距離感を間違え、攻撃を空振る。

 逆に香織の攻撃は、エキドナに直撃する。咲が傷つけた場所を狙って振り下ろされた一撃は、エキドナの顔に罅を入れた。


「嘘!? 衝撃伝播を付けてある棒だよ!?」



 香織の棒には、衝撃を伝える衝撃伝播は、敵の体内に衝撃を伝える事を目的としているが、スケルトン相手なら、骨そのものに全ての衝撃を与えるので、かなり強力な一撃になるはずだった。


「カルシウムたっぷりってことじゃないの?」

「健康は良さそうだね。肉は無いけど」


 二人は軽口を叩きながらも、エキドナの攻撃を躱していく。こうして、戦闘していると、エキドナの攻撃方法が段々と分かってくる。

 基本的には、手を使ったつかみ攻撃を主としているが、時折尻尾による突き攻撃と薙ぎ払いをしてくる。

 手か尻尾でしか攻撃してこない。香織達は、毒攻撃を警戒したが、そもそも骨しか無いのだから、それ以外の攻撃をしてくるはずが無い。


「香織! 一気にけりを付ける!」

「分かった!」


 香織は、大量の石の槍を作り出す。その数は、百に上る。そして、まだまだ増えていく。

 その間、エキドナによる攻撃は、全て咲がいなしている。時折、万里と恵里にも攻撃しているが、香織の張った結界に阻まれているので、手出しが出来ない。


 五百になったところで、香織は石の槍の生成をやめる。香織の魔力が限界になったわけでは無く、空間内に生成出来る余白がなくなったからだ。


「咲! 準備出来たよ!」

「いつでもいいわ!!」


 咲の了承が取れたので、香織は、石の槍を順次放っていく。一度に放つ量は大体、二十本ずつだ。

 エキドナは、持ち前の素早さを活かして、石の槍を避けていく。石の槍は、次々に地面や壁に刺さっていく。

 五分間、続いたその攻防は、香織の石の槍が尽きた事で終わった。心なしか、エキドナが笑みを浮かべているように見える。自分よりも香織が弱いと判断したらしい。

 しかし、この時の判断をエキドナは後悔しただろう。


 エキドナが、香織に攻撃しようとすると、自分の背後から謎の音が聞こえた。その方向をエキドナが見ると、自分の尻尾が先端から二メートルほどの位置で斬り裂かれていた。


 斬り裂いたのは……赤黒いオーラを纏った咲だった。


 エキドナが、咲を見つけた瞬間、残った尻尾で薙ぎ払おうとする。しかし、その瞬間には、咲はそこにいない。さらに、エキドナの尻尾は、思う通りに動かせなかった。

 エキドナの攻撃を阻害しているのは、地面に刺さっている香織の石の槍だ。エキドナが尻尾を振って、咲を攻撃しようとする度に、石の槍に引っかかり、勢いが殺される。


 さらに、この石の槍は、エキドナの移動も阻害している。エキドナは、移動する際は蛇のような動きをする。香織は、そのことに気付いていたので、石の槍の間を、エキドナの身体が通れない狭さにしていたのだ。無理矢理通ろうとすると、石の槍に身体が引っかかり、うまく動けないのだ。

 香織は、無策に石の槍を放っているように見えて、きちんと考えながら攻撃していた。


 うまく動けないエキドナに対して、咲は、地面を疾走してエキドナの身体がある場所の真下に移動する。

 香織は、咲の移動を探られないように、散発的に威力の高い魔法を放っていく。魔法耐性も強いのか、炎の弾や雷撃、氷塊をぶつけても、全く気にする素振りが無い。だが、その攻撃がうっとうしいのか、度々香織に攻撃を加えようとする。


 そんな、エキドナの顔の横を赤黒い影が下から上に駆け上がっていく。


 エキドナは、その影……咲を、目で追うが、すぐにそれどころでは無くなった。


 エキドナの横から、大きな音が響き渡った。エキドナは、すぐに音のした方を見る。そこには、斬り落とされた自分の腕があった。慌てて拾い上げ、自分の腕をくっつけようとするが、ガシャ、ガシャという音しかせず、一向にくっつかない。


 エキドナは、訳が分からず、何度も押しつける。


 そんな事をしていたため、咲の次の一撃をそのまま受けてしまう。咲は、エキドナのもう片方の腕を斬り飛ばした。

 エキドナは、何が起こっているのか、全く理解する事が出来なかった。エキドナは、周りを見回して咲を探す。しかし、常に動き回っている咲は、容易に見つける事が出来ない。

 さらに、香織の嫌がらせは続いているので、それも相まって、咲を見つける事が難しくなっている。


(鬼神化のコントロールが少し利くようになってる。この感覚だと、気絶する事もないかしらね)


 鬼神化した咲は、常に壁や天井を走っている。その咲は、赤黒いオーラを纏い眼が赤くなるだけで、角が生えていない。赤龍戦での経験値、あるいは、進化した事による恩恵などが考えられる。


(今の状態なら、スケルトンの身体を斬る事は出来る。でも、あの頭を斬るのは今の状態でも難しそうね。それに、うまく斬れても、粉々に出来ないと復活してくる。はぁ、前途多難かしら)


 咲がそう考えていると、香織の声が聞こえてくる。


「咲! 大丈夫!!」


 その言葉を聞いて、何が大丈夫なのか、何をするつもりなのか、そんな事一切訊かなかった。


 咲は、角を生やし、一気にエキドナに肉薄。その首を、一撃で斬り飛ばす。すぐに、鬼神化を解除し、咲の身体から、オーラが消え去る。


 飛ばされた首の元に香織は急いだ。そして、その首に両手をついて、刻印魔法を刻んでいく。刻む魔法は自壊。エキドナの頭は、罅が入っていき、最終的に粉々に砕け散った。


「終わったぁ!!」


 香織は、身体を伸ばしながらそう言った。エキドナの身体は頭を失った事で、地面に崩れ落ちた。


「咲!」

「大丈夫よ!」


 香織の呼びかけに咲が答える。つまり、咲は気絶していないという事だ。


「良かった。気絶してるかと思った」

「本気で使ったのは、一瞬だったし、うまくコントロールが出来るようにもなったからかしらね」


 香織と咲は、そう話しながら、万里と恵里の元まで向かう。


 何はともあれ、進化した狂骨の砦を攻略する事が出来た。進化した狂骨の砦は、これまでと比べものにならない程の難易度に跳ね上がっていた。

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