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 脈絡もなく歌い始めた時はヤベー奴かと思った。急に歌われてみなさいよ。マジ怖いから。あれ? もしかして天然? と決め込むと府に落ちる部分があり、アレな人じゃないとわかったので安心した。

 セイラさんは普通にイイ人そうで良かった。

 なんといっても、嘘八百の作り話に乗って来るんだから聞き上手だ。いやー、子供に好かれるタイプに違いない。お陰さまで久しぶりに気分爽快。

 妹の家庭教師任せられる人物って少ない。俺の能力のせいで苦労かけるのだから、にーちゃんとしてきちんと妹に迷惑かけないようにしないとね。悪人か調べるのも必然。楽しく人柄の詮索が出来ました。

 結果、太鼓判レベルで一安心。

 まだ中庭で訓練しているらしいし、熱心ですな。


 自分は汚してはよろしくない服(出歩く楽な服)なのをすっかり忘れて土で汚してしまったのを証拠隠滅する前に、風呂に浸かろうとする崇高な使命の最中――というのは冗談で、まともに浸かれなかった倉庫暮らしから実家の風呂に入りたかっただけ。

 帰宅で風呂に入ると誰かが察していたのでしょう。いい感じに湯気が浴室に充満しています。ちょっと熱いですが、ありがとう誰か。

 服は液体石鹸入りお湯に付け置いて自動洗浄に任せてる。頑張れ。

 あー疲れが取れるぅーって感じに体が震えながら浸かる。ジジクサイより頭の中はニホンザルをイメージしていた。


 大体は過熱し過ぎで何話したか覚えてないけど、勢い任せはダメだね。

 荒が出まくりで、いつバレるか冷や汗ものでした。

 特にレレーリアがヤバかった。レレーリアって何? 俺何言ってんの? って感じに冷静に我に返るんだもの。三つのエルも苦しい。

 なんでも計画性って大事だなと実感した。


「そういえば、アーノルド。紙に何書いて握らせたんだ? あーゆーのがタイプ? ナンパ?」


 すれ違いざま何かを握らせる一瞬を目敏く見ました。俺の角度でなければ確実に見逃しちゃうね。それとイケメンに許される耳もとでの囁き声。かーっ! 卑しか男ばい!


「そんなんじゃないですってー」


「お前も人が悪い。俺の口から出任せに、嘘だと知っていて頷く。共感した心理を巧みに利用して、女の興味引くんだからなー。おんな泣かせだよ。女の敵。そんなことしてると、後ろから刺されても文句は言えないよ?」


「……。あははは、そー、ですね」


 ケミは適当に誤魔化す。

 今の年齢で子供のお付き。うん、女に飢えてるよね。


不祥事(ふしょーじ)は起こさないでくれよ?」


 今、ふと浮かんだゲルマニウムという金属はどのようなものなのだろうか? 健康機具に利用されているらしいのだが。こちらにもあるのだろうか? 興味はある。興味はあるが、未知の金属がポンと湧き出る能力でなし、興味だけで諦めねばならない。

 自分の魔力と同じでね。

 さっきも魔力コントロールを試したが、駄目だった。

 本来干渉する浮遊魔力は自分の魔力で操る事が出来る。しかし、自分の魔力では微動だにせず、自分の魔力と相反さえしない。

 まるで別ものと区別されているかのように揺るがない。

 それは、存在する金属錬成の魔法の半分を使えないということである証明に他ならない。致命的だ。


 本来の金属錬成は金属を錬成するものであり、主に金属から武器や装飾具の錬成をしている。極論、屑鉄から剣を作れるのだ。

 しかし自分はその才能が無かった。金属は金属のまま。

 だから、自分の魔力を対価に変換する錬金術に近い手段しか自分にはなかった。

 自分の魔力のみで魔法を発動しなければならない魔法リスクを背負って生まれた。俺は駄目金なのである。


 半分使えないならまだしも、大きな課題とも直面している。

 近い将来に魔法が使えなくなる可能性。魔力が枯渇する可能性がゼロではない事。

 魔力の枯渇、それはこの世界での半死を意味する。魔法の世界で無魔になり、自分の価値を見出だすなんて不可能に等しい。生きたしかばねと書かれた書物もあり、本当にその通りだと乾いた笑いがでる。

 判定の儀式まで魔法を使ってはならないとされる理由。

 五才までに魔力を失なった者は何人もいるとされているが、皆この世にいない。全員が自殺や殺害で命を終えている。魔力とはそれだけこの世に生きるのに必須な人権だ。

 いつ起こるやもしれない事態に不安と共生して生きていくしかない人生。躁鬱が繰り返される。

 解決法というか、解消法が無くはない。

 同じ境遇の人物を見つけ出すしかないが、存在しないとされる以上、隠しているか無自覚な人物を探すしかない。会えば何かの切っ掛けとなりうる。雲をつかむ話を死ぬまでにやらなければならないのだ。そんな漠然とした解決策。難儀だ。


「ベガ坊ちゃんは何で嘘を?」


「一つは人物像で、もう一つは資質」一握の愉悦。


「彼女に資質が?」


「騙され易い奴ほど、優秀な魔法使いになる」


「それじゃあ、騙された僕は優秀な魔法使いってことですね?」


「いや? それを聞かされた時点で無意味。なんなら考える前に答えを見つけ出して言ってやる。俺が全力で止めている以上ケミに成長はないよ」


 ケミは「そんなー」と肩を落とす。

 君は優秀であっては困る。

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