八十六話 戻りました!
遅れました、すみません。
参戦ムービーを見てゼノ▽レ2やってたのが原因です。
めっちゃ面白かったです。(未クリア)
「こんにちは。マノア、フォリス。」
馬車に揺られてしばらく、僕は入れ替わりの魔道具を持ってシーサイドに来た。
この三日間でセシカさんのふりも慣れた。最初に比べれば言い間違いも少なくなったし自然さも大分増した。
「マノ…セシカさん! いらっしゃいませ!」
「先輩、今日はお店お休みだよ?」
大丈夫かな。っていうか今日まで大丈夫だったのかな。
なんだか不安になってきた。後でフォリスから入れ替わってたときの事を聞いておこう…
「マノア君、久しぶりだね。」
「遊びに来ちゃった。」
「お父様!? お母様!?」
僕の後ろからひょっこり顔を出したご両親を見たセシカさんは思いっきり素で叫んでいだ。
…僕とセシカさんの呼び方が一緒で良かった。でなければ確実にボロが出ていただろう。
「セシカさんのご両親!? え? どうしてそんな、本物!?」
「本物よ、可愛い従業員さん。」
「ぇ、えー…?」
フォリスも目を見開いて驚いている。
それはそうだ。本来僕と、来ても執事さんくらいしかこないはずだったのだから。
「君がセシカが言っていた従業員か。確かに可愛らしいし、しっかりしてそうだな。」
「ど、どうも…?」
そう言えば、フォリスはセシカさんのご両親とは会ったことないんだっけ。
フォリスはお屋敷に行った事が無いから、当たり前と言えば当たり前だけど。
「それより、なんでお父様とお母様が?」
「久しぶりにマノアちゃんの顔が見たくなってね、来ちゃった。」
「私はマノア君の仕事ぶりが気になってね。
シーサイドの再建には私も携わっていると言っても過言ではない。一時的な資金の建て替えも行ったし、犯人探しにも関わったから無関係ではないだろう? そんな店の雰囲気とか味とか、気になってしかるべきじゃないか。」
「あー…すみません。今日は休業なんです…」
「なんだって!?」
「あらー…じゃあマノアちゃんのご飯は食べられないの?」
2人は心底残念そうだ。
まあ、お休みでも料理を作るくらい良いけど。
「いえ、それならもちろん僕が作ります。
…と、マノアなら言ってくれるはずよ。」
危なかった。今セシカさんの姿で僕の言葉を伝える訳にはいかない。
「僕がですか!?」
なんでですかセシカさん! 合わせてくださいよ!
「他に誰が居るの?」
ホントだよ!
「えっと…フォリスとか?」
「駄目。ちゃんと先輩が作ってよ。先輩が、ね?」
フォリスが僕に目配せしてくる。
そうだ、今すぐ元の体に戻って料理を作ってあげなきゃ。
その為には。
「お父様、お母様。私、マノアとちょっと話したいことがあるから行ってくる。」
「え…マノ、セシカさん?」
まだ焦っているセシカさんの手を握る。
…すべすべで綺麗な手だ。やっぱりセシカさんも女の…………
……今握ってるの僕の手だ! 女の子の手じゃないから! しっかりしてよ僕! ちょっとショックだよ!
「…すぐに戻ってきなさい。」
「そうね。その間フォリスちゃんとお話ししてるわ。」
「う、ウチですか!?
その、えっと、そんなに面白い話は出来ないかもですけど、ご勘弁くださいね?」
「うふふ、内容次第かしら?」
「あまり脅かしてやるな…フォリス君、気にしないで話してやってくれ。」
「は、はい。」
フォリスがガチガチに緊張してる…これは早く戻ったほうが良さそうだ。すぐに済ませよう。
手をつないだままお店の奥に行き、居住スペースのリビングに。
「セシカさん、すぐに終わらせましょう?」
部屋に入り、繋いだ手をほどくよりも前に言った。
「え…何を?」
「分かってますよね?」
ポケットから魔道具を取り出し、セシカさんの開いた手に押し付ける。
その瞬間、視点が移り慣れ親しんだ自分の体の感覚を取り戻した。
「…はい、これで元通りです。」
魔道具をつかみ取り、緩く握られていた彼女の手から優しく取り上げた。
何故か頬が熱い。入れ替わる直前にセシカさんの顔がほんのり赤かった事と関係があるのだろうか。
「………」
「あの、セシカさん?」
「…一応聞くけど、マノア。
私の体に変なことはしてないわよね?」
「してませんよ!」
「そう…」
赤い顔のままジト目で言うセシカさんに、僕は大声で答えた。
ちょっと不服そうだったのは納得いかなかった。どうすればいいの。
セシカさんと僕の入れ替わりを行った後、再度の入れ替わりを発生させないよう魔道具を慎重に取り扱って仕舞い三人の元に戻った。魔道具はセシカさんの家で秘密裏に処理することになっているので、もう入れ替わりが起きることは無いだろう。
「お待たせしました!」
「本当にすぐ戻ってきたわね。」
「何の話をしてたんだい?」
「何でもないわ。ちょっとした近況報告よ。
それより、この後マノアが料理を作ってくれるそうだけどなにが食べたい?」
「ある程度のリクエストなら答えますよ。出来る限りではありますけど…」
セシカさんは2人の追求をひらりと躱し、話題を変える。僕はそれに乗っかって要望を訊いた。
余程のことでもしない限りお咎めは無いだろうけど、2人は貴族だし変な料理を出して失礼を働くことは避けたい。
「私はマノアが作れるようになったって言う魚の料理を食べてみたいわ。」
2人より先にリクエストを出すセシカさん。そんなにウォンリーダイのことが気になってたのかな?
まあ、そのうちセシカさんにも食べさせてあげたいと思ってたから好都合だけど。
「なら私達はセシカと同じものにするよ。別の料理を作るのも大変だろう?」
「そこは気にしなくても良いですから。好きなものを言って頂いても良いですよ?」
「いや、今日はセシカと同じにしておく。何も食べられる機会は今日だけじゃない。そうだろ?」
「え…お父様、今日だけじゃないの?」
あ。
「おいおい、出掛ける前に言ったじゃないか。」
「…そうだったわ。すっかり忘れてた。」
「もう、セシカったらしっかりしなさい。」
「はい…」
滅茶苦茶横目でこっち見てる…そう言えばセシカさんにそのことを伝えてなかった。
手を合わせて声を出さずに謝ると、まあ許すという感じで頷いて返してくれた。




