73/90
3話 濡れ女の本気③
満身創痍の体を引きずり尚も濡れ女の前に立つ『人間』兎楽璃亜、そしてそれを正面から見据える『濡れ女』水張雫。
ぱちん、と濡れ女が指を鳴らす。途端、長い金髪と自身を覆う水のベールで最低限の箇所だけ隠した水張の足元から電柱程の太さをした水の柱がそそり立つ。その数八本。
「今度は中途半端な力じゃ受けきれないから気を付けてねぇ」
「確かにあなたの言う通りです」
突然、璃亜が両腕をだらりと投げた。
「…………? 受けきれないなら避ければいい、何て考えてるならすこぉし考えが甘すぎるんじゃないかしらぁ?」
「…………」
「それとも、もうそんな力も残っていないって事かしらぁ」
「…………全く、こう閉鎖的な空間では時間の把握が難しくて困りますね」
「時間…………? こっちの彼とデートの予定でも入ってたのなら残念だけどそれはキャンセルねぇ」
八本の柱が大きくうねり獲物を威嚇する蛇の様な動きでその先端を揺らす。
そこで濡れ女の目が訝しげに細くなる。小さな、本当に小さな、言われなければ気づけない程の違和感。
「あなた…………全身の傷は…………?」
無数の刃物で斬り付けられた様な傷跡。璃亜の柔肌に刻まれていた筈のそれらが一つ残らず姿を消していた。
「私が唯の人間かどうか気にしていた様ですが、ご自身で確認してみてはいかがでしょうか」




