3話 狼男と女子高生②
「何意外そうな顔してんだ。大体俺があのクソ人間を助ける理由が一つとして見当たらねえだろ」
「いやだってこういう時って以前の強敵がピンチに駆けつけてくれる、みたいな――――」
「あほか」
一言で切り捨てられた。
「漫画の読み過ぎだ。普通に考えて殺し合いまでした相手をわざわざ助けに行こうなんて思うやついねえだろ」
「そこをなんとか! わたし一人で行った所でほんとに助けになるかどうか…………」
前橋さんに用意してもらった秘密兵器はあるものの、これがほんとに濡れ女に効果があるかどうかも分かんないし。ここはやっぱり狼男の銀月さんが来てくれた方が―――――
「悪いがあのクソ人間がどうなろうが俺には何の関係もねえんでな。助っ人なら他あたれや」
それだけ言うと銀月さんはこちらに背を向け作業に戻ってしまった。
「あーもー分かりました! もう頼みません! あたし一人で助けに行きます!」
銀月さんの冷たい態度にだんだん腹が立ってきたあたしはティーシャツぴちぴちの筋肉男から顔を背け、大股で砂浜を歩きだした。
「おい、ちょっと待て」
「――――何ですか!? もう一人で行くって決めたんで、別についてきてくれなくても結構ですから!!」
背後からかかる銀月さんの声に、立ち止まるものの振り向きはしない。
「そうじゃなくて。逆だぞ、方向」
首だけ動かして振り返るとクンクンと小さく鼻を鳴らす銀月さんがあたしの向かう先とは反対方向を指さしていた。
「…………」
「…………なんだよ」
「―――――――どうもありがとうございます!!」
その場で一八〇度向きを変えたあたしはざっくざっくと大股で砂浜に足跡を残していく。
「…………ガキか」
すれ違い様銀月さんがぼそりと呟いた一言は聞こえないふりをしておいた。
とにかく、今はみんなの所に急がないと! もしかしたらもう既に濡れ女の攻略法を見つけ出しててあたしが行く頃には決着がついちゃってるって事態もありそうだけど…………、その逆の可能性もあるわけだし。自然と前に進む足も速くなる。
速度を上げるにつれ背負ったバッグの重みがずしりと肩に食い込んでくる。
調子に乗って持ってき過ぎたかなあ。バッグの中には対濡れ女用の秘密兵器が目一杯に詰め込んである。本当にこんなものが効くのかどうか、自信なんてあるわけ無い。それでもやっぱり皆がピンチの時にあたし一人だけ呑気にしてられないしね!
オレンジ色の夕日が照らす砂浜を脇目も振らずに駆け抜ける。
長い水平線のそのまた向こう、ごつごつした岩肌が砂浜を跨ぐ様に海面へと突き出しているのが見えてくる。
「多分あれだ…………! あの洞窟に皆が――――っ!!」
目的地を視界に捉えたあたしは疲労も忘れ全力を込めて脚を前に進ませる。




