3話 乙女をからかう時は適度にね
「つまり、探偵さんは依頼の調査のために事故にあった人たちの共通点であるカップルを演じて手がかり探ろうとしている、と?」
「多分…………おそらくそうだと思うんですが」
「いやーでもあれはどう見ても――――」
「いつもの…………氷柱ちゃんをからかいだけの…………悪ノリですね…………」
「「「………………はぁ」」」
束の間の沈黙の後、三人の動きは見事にシンクロした。
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吸血鬼と千里眼と女子高生が呆れたように溜息をついている頃、浜辺から少し離れた沖合では雪女と事務所の所長が遊泳を満喫していた。
いや、雪女白山氷柱はともかく人間天柳相一の状態を【泳いでる】と表現するのは少々語弊があるかもしれない。
「あのーマイハニー? 少し情熱的になりすぎたことは謝るからこの氷の塊解いてくれね? それが無理ならせめて片腕だけでも…………仰向けで浮かばされてっから直射日光が目に――――――」
歯をがちがちと鳴らす相一は全身を長方形の氷で固められ、その先端から頭だけ出したアイスキャンディの棒のような状態でぷかぷかと波の上を漂っていた。
「だから誰がハニーよ誰が!!」
憤慨しながら等身大のアイスキャンディin相一をべしべしと叩く氷柱。その度に不安定な氷の塊がぐらぐらと頼りなく揺れる。
「わっ、ちょ、おぶッ! ごめんなさいごめんなさい調子乗りすぎました! だからあんま揺らさないでさっきから海水が鼻に――――――」
ぐるん、っどぷん!
そんな効果音を境に相一の声が途切れた。
改めて確認しておくが現在彼は頭だけ残してその他全身を氷で固まられたアイスバー状態だ。自分で泳ぐのは勿論のこと、水中で体勢を変える事も困難な状態だということだ。
つまりどういうことかと言うと――――――
(ごぼがばごばぼあばばばばば!!)
うつ伏せ状態で海面に頭を突っ込んだ相一が発するぶくぶくというくぐもった音だけが水中から浮かんで来ていた。
「まったく。大体ねえ、依頼の為の作戦なら最初からそう説明しなさいよ。ちゃんと前もって教えといてくれたら、その…………何? カップルごっこ? も…………別にやぶさかではないというか…………」
(ぶごがばごぼがば)
ぺしぺしと浮かぶ氷塊を叩く氷柱の言葉は後半に行くに連れて勢いを失い最終的には波の音にかき消されてしまった。
「…………というかアンタさっきからやけに静かだけどもしかして船酔いでも――――ってきゃあああああ相一ィいいいいいいいいい!?」
(ぶくぶくぶくぶく………………)
事務所の所長が眼の前で溺死しかけている事にようやく気づいた氷柱。慌てて転覆した相一(を固めている氷)をもう一度ひっくり返そうとするが以外とテンパリ易いのか中々上手くいかない。
無論その氷自体、氷柱がその能力で生成したものである以上自分の意志で解除することも可能なのだが、残念なことに頭から抜け落ちてしまっているようで。
そしてそんな慌てふためく彼女の様子を浜辺から眺めている三人はと言うと。




