3話 とっておきの作戦
「で、大見栄張ったのはいいですが何か考えがあるんですか?」
「ん? もちろんあるぞ、とびっきりとはいかないまでもそれなりの上策が」
海の家を後にし浜辺で待機させていた皆の元へ向かう。
真っ白な砂浜に二人分の足跡を残していく。
「自信があるのは結構ですがあまり無茶をなさらぬようお願いしますよ。毎度毎度心配させられるこちらの身にもなって下さると助かるのですが」
「大丈夫だって。まあ心配せずに見ててくれよ」
「所長がその顔をしながら言う心配するな、はこれまでの経験上大抵の場合大丈夫じゃなかった事の方が多いのですが…………」
その顔ってどんな顔だよ。
「はいはい、いつも心配かけてすいません――――っと、ほらいたぞ」
俺が指差した方向を手で日除けを作りながら目を向ける璃亜。
そこには仕事の話が終わるまで外で待ってもらっていた3人の姿が見える。だがどこか様子がおかしい。
なんだ、なにかもめてんのか。
「ねーねーイイじゃーん俺達とあそぼーぜー」
「二人共かわいーねー。いいじゃんいいじゃんお兄さんたちと楽しい事しようよ。あ、そっちのちびっ子は迷子? お父さんとお母さん探してあげてたんだやっさしー」
「ここって最近事故多いみたいだし? 女の子だけじゃアレだから俺らと一緒に――――」
小麦色に焼けた肌にくすんだ金髪、首にはじゃんじゃら銀のアクセがぶら下げられたいかにも、といった風体の若者三人が氷柱達を囲み詰め寄っていた。
「あーもううっとうしい! あんまりしつこいと等身大のアイスバーにするわよ!」
「ちょっと氷柱ちゃんさすがにそれは――――」
「氷柱ちゃん…………半凍りまでなら…………セーフ」
「あれぇ千里ちゃん!? 千里ちゃんってそんな事言う子だっけ!?」
あーあーそろそろ止めに入るか。…………作戦の第一歩を進めるついでにな。
「所長、そろそろ止めに行った方がよろしいのでは? ここら一帯が季節外れの雪祭会場になる前に」
「みたいだな」
璃亜の言葉に後押しされ人影まばらな砂浜を駆け足で進んでいく。
俺がその場に到着したのとニヤニヤ笑いを浮かべた若者の手が少女達に伸びたのはほぼ同時だった。
「悪いけど皆俺の連れなんだ、特にこの子は特別な存在だから気安く触らないでくれるか」
そう言って出来る限りキリっとした表情を作りながらひんやりとした氷柱の腰に腕を回す。
「わッひゃぃ!? へ? そうい――――え、えぇ!?」
ビックゥ!! と肩を震わせる彼女の顔は驚きと戸惑いがマーブル状になった表情を浮かべている。
「はっはっはーいやすまないねマイハニー、仕事の話が長引いてしまってこんな所で君を待たせてしまう
なんて」
言葉と共に氷柱を抱く腕に力を込めさらに近くに抱き寄せる。じりじりと焼きつく様な日差しの下では一般的な人間の体温を大きく下回る彼女の肌が心地良い。
「な、なな――――あんた今…………は、ハニ――――って、ふぇ!?」
「チッ、何だ何だよ男連れかよー。だったら先言えっつーの」
「あーあーハイかいさーん、次行こうぜ次」
親しげな男が現れた事で彼女達に対する若者の興味はたちまち失せた様で好き放題言いながらその場を離れていく。
「…………えーと探偵さん? どうしちゃったんですかそのキャラ、暑さで頭やられでもしたんですか」
詩織ちゃんの引き気味な態度に若干傷つきながらも作戦を続行する。
「ほらほら折角海に来たんだ、邪魔者も消えたことだし心行くまでアバンチュールを愉しもうじゃないか!」
酸欠の金魚みたいに口をパクパクさせる氷柱の手を引き波打ち際へ駆けていく。




