第八十七話 クロ
新しい家族も増え、旅を進めること3日。ずっとバイクを飛ばし続けも疲れるので今日は運転はお休みということで湖畔に家を設置し、いつものように家事を遂行する。
休みとは言えども溜まった洗濯物を干したり、家の中の掃除などで時間は取られ、ちょっとしかないが。
「クルピャ!」
「ん?なんだ“クロ”?」
洗濯物を干していると邪神龍こと『クロ』と名付けられたドラゴンが俺に近づいてきた。クロと言う名前は単純に『体が黒いから』という本当なんの捻りもない理由なのだが。
まぁ、シンプルだが俺みたいに変な名前つけられるよりは幾分マシな名前のはずだ。
クロは俺に近づいてきたと思ったら、今度は俺のシャツの裾を口で掴み引っ張ってくる。よく見れば可愛らしい顔なのだが、クロには一点困った問題があった。
「クピァクピァ!!」
「まだ昼飯には早いぞー、クロ」
そう。クロはものすっごくーッ……!食欲が旺盛で大食いなのである。軽く俺とケンジの倍近くは食べる。
その証拠に爆食蛙の肉もあんなにあったというのにクロが来てからというもの、ガンガンと物凄い勢いで在庫は減っていき、残りは3分の1以下までなくなっていた。
赤ん坊のクロは外の世界の物が珍しいのか常にちょこちょこと動き回るので、お腹が空いてて仕方ないらしい。だが、今は洗濯物が優先だ。俺は手を休めることなく洗濯物を干す。
「クピァーー!!」
言葉を喋れないクロは必死に鳴き声で俺に抗議の声を上げる。それでも俺は黙々と洗濯物を干し続けていると、クロはしつこく俺の服の裾を引っ張って、ついには強引に家の中に引き入れようとしてきた。
「だぁ~もうっ!分かった、昼飯作ってやるから!だからもう服をそんな引っ張るなって!」
服が伸びる!っと俺が言うと、やっとクロは服を離す。
あぁ~……クロの涎のせいでもう裾がびょちょびょちょ……。
格好悪いよだれ染みを見て、溜息をこぼしながらも俺は洗濯篭を持ち、一緒に洗濯物を干すのを手伝ってくれているケンジにも声をかける。
「お~い!!ケン、ちょっと早いけど昼飯にすんぞぉー!」
「はぁーい!!」
なんとか洗濯物を全部干し終わり、ケンジも呼び戻して家に戻る。
「クピァ~!」
昼飯の時間になって嬉しいのかくるくると円を描くように宙を飛び回るクロ。
「クロは昼飯ご飯は何がいいんだ?照焼き……?肉じゃが?あっ、それとも焼肉か?」
「……」
どの言葉にも全く反応を示さないクロ。試しに俺はあることを試みる。
「……――から揚げ」
「クルピァ!」
『コイツ……』
『から揚げ』の部分だけボソリと消えそうなぐらいの小声で呟くが、しっかりと料理名に反応を示すクロ。
俺はマンネリ化しないよう気を付けながらありとあらゆる肉料理を作ってきたが、その中でも特にクロの心を掴んだのはから揚げのようだ。
クロは性格欄に書いてあったように、興味があることにはとことん興味を示すが、興味がないものには全く興味を示さない自由奔放過ぎるマイペース屋さん。
今はクロの中の基準では一番『食』に興味があるため、食事についての学習能力は異常に高かった。
『変に学習能力が高い奴め』
クロの食い意地に愚痴りながらも昼飯を作るため一度、俺たちは家の中に戻っていった。




