第八十話 氷の鷹の目
「今のは……!?」
俺は辺りを見渡し、銃声が聞こえた方向を探る。すると、筒上に建てられた結構な高さのあると思われる牛舎の天辺、鉄のような物の鈍く輝く光が見えた。そこにはうつ伏せになってライフル銃を構えているリンダさんの姿があった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
リンダは牛舎を駆け上がり、慣れた手つきでライフル銃を組み立てその場にセットする。利き手である右手でウェストポーチを開き、実弾を取り出す。そして、一つ一つそれをライフル銃に入れていく。
「標準確認、術式展開――!」
リンダの構えるライフルの銃口と照準器に青の術式が展開される。ゆらゆらと術式は揺れ、獲物に狙いを定め終わると直列に術式は並び、リンダは引き金を引く――!
「零式銃段669式砲、氷結の弾丸!!」
氷の弾丸は発射されると共に拡散弾のように空中で弾ける。氷の弾は拡散された後、真っ直ぐ直線の軌道を描き爆食蛙たちの額を正確に撃ち抜いていく。
爆食蛙の頭には風穴が開き、血が吹き出すはずだったがリンダの氷の魔力を帯びた実弾により、血は瞬時に凝結され、その血は地面に1滴足りとも落ちることを許さない。俺は見事なその狙撃の腕前に感嘆の声が漏れる。
「すげぇ……!」
「流石リンダちゃん!『氷の鷹の目』の異名は伊達じゃないね!!」
一発の実弾で同時に5体の爆食蛙を仕留めたリンダさん。ひたすら銃声は鳴り響き、瞬く間に爆食蛙たちの亡骸が地面に転がっていく。
「ゆるさないゆるさない……ッ!」
『父さんと母さんを殺した同種の爆食蛙ッ……!!』
牛舎で一人、ライフル銃を構えてながら爆食蛙を見下ろして何度も小声で呟くリンダ。
リンダのその瞳は復讐の炎で燃え上がっていた。そして、容赦なく引き金を引いていく。どんなに爆食蛙を撃ち殺しても、リンダの中で眠っていた怒りは冷めやらなかった。
昔、両親を無惨にも食い殺してくれた爆食蛙たちにリンダはその姿を重ね、仇を打つよう一体一体に鉛玉をくれてやる。
パンパンッ―――!!
「ゲコォゲコォッ―――!!!」
だが爆食蛙の群も同胞が殺られたことに酷く興奮したのか遅かった歩行スピードが突然速くなり、リンダさんがいる牛舎に体当たりをし始める。
怒り狂った爆食蛙たちの反撃とも言える攻撃により、振動で牛舎は横に激しく揺れる。
「くっ……!」
「なにやってんだ!リンダさん!!早く降りてこいッ!」
下から叫ぶ俺の声も聞こえているはずなのに無視し、リンダさんはそれでも銃を放すのを止めようとしない。
「チッ……!」
リンダは弾が切れた為、替えの弾が詰まったウェストポーチに手を伸ばす。けれどその中にはもう弾は入っておらず、いつもなら更に弾を補充してきている袋も慌てて家を出たために置いてきてしまっていた。
「しまった……!――うぅっ!!」
激しく牛舎は横揺れし、屋根の木材が崩れ落ちる。振動が激しすぎるあまりその場に倒れたリンダはすぐ近くにあった木片にしがみつく。ぐらぐらと建物は揺れ、今にも崩れ落ちてもおかしくない勢いで脆くなっていった。
「やべぇ……ッ!」
俺はなんとかしなければとリンダさんが残る、非常に不安定な牛舎に群がって体当たりをする爆食蛙に駆け寄る。
次はケンジたちの方面のお話です。




