↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/94

第五十六話 さっそくぶち当たりました

 「なんだどこかでみたゴミだと思ったらさっきのガキじゃねぇか」


 運命のいたずらか何かは知らないが、俺たちはさっそくあの嫌な男とぶち当たった。


 「ガハハハ!!こりゃ運がいいぜ。楽して一回戦突破だ!」


 男はまた下品に大声で笑う。観客たちは男の姿を見て、ざわつく。


 『可哀相に…。あの子の対戦相手ってあの“ダザル”でしょ?』

 『あぁ、今年の優勝候補とも言われる実力の持主の一人だな。けど相手の従獣魔を半殺しの状態にするまで決して攻撃をやめないって裏の世界で有名な野蛮な奴さ』

 『何それ!?怖ッ……』

 『そんな奴に当たっちまうなんて…よっぽど運がなかったなあの子供』

 『しかも従獣魔が低級のスライムだなんてね…。試合をやるだけ時間の無駄よ』


 もう勝負あったみたいにコロシアムの熱気はすっかり冷め上がり、ケンジたちは観客たちから冷やかな視線が送られる。

 誰もがダザルの勝ちを予想していた。


 『ではではー!Aブロック3回戦、ダザル・フォンクランツVSヒムラ・ケンジ。試合開始ッーー!!』

 「いけ!バッファ!!」

 「グルルルゥ…!!」


 そう言ってダザルが出してきたのはドーベルマンに似たような大型犬だったが、やはり只の犬ではないらしく口から火を吹いており、凶暴な牙を敵である俺に向けてきた。


 「え、えっと!ポチ、君に決めた!!」

 『へいへい……』


 俺はポケ●ンか、おい。

 しかも君に決めたも何も俺しかいないじゃん従獣魔。

 色々とツッコミたい気持ちも押え、ケンジの腕から放れ俺も奴と同じリングにあがった。まずはスキル【鑑定】で相手のステータスを確認する。


 《モンスターNo.47焔猟狗(えんりょうこう)


 *Lv 65 名前バッファ


 HP 1200/1200

 SP 300/300

 攻撃力 1800

 防御力 1560


 確かに自信があるだけよく育てあげているらしい。


 『けど…』


 まだまだ俺に勝つにはレベルが足りないな。

 こいつらにはまず俺たちに喧嘩を売ったことを後悔させてやらなきゃな。


 「やっちまぇ!バッハァ!!」

 「ガルルルルゥウウ!!」


 先手必勝と言わんばかりにバッハァと呼ばれた焔猟狗(えんりょうこう)は素早く四足で地面を蹴りあげ走る。あっという間に俺の前までやってきて、牙を突き立てようと襲ってきた次の瞬間。


 「…………ッ!」

 『いきなり噛みついてこようとするなんて、飼主と似て随分躾がなってない狗だな』


 いや飼主あぁだから従獣魔もこうなるのか?

 大口を開けた間々、動かず攻撃をやめた焔猟狗(えんりょうこう)。その様子を見てニヤリと俺は笑う。

 俺はこいつがくるギリギリでスキル【隠密】を解除してやったのだ。


 「どうしたバッファ!さっさとやれ!!」

 『ほら?御主人様の命令だぞ?俺をやらなくていいのか?』


 俺は挑発的に誘う。

 焔猟狗(えんりょうこう)はダラダラと汗が出て、大きく開いた口も僅ながら震えていた。主の命に従い、バッハァは頑張って噛みつこうと歯に力を入れようとするがすっかり体は怯えてしまって動いてくれない。


 『やれよ』


 俺はじっとバッハァの瞳を見つめる。

 今こいつは2つの選択を迫られている。御主人様の命令に逆らって酷い目に合わされるか本能的にかなわないと分かっている俺と戦って酷い目に合わされるか。

 そしてこいつが選んだ選択は……。


 「ヒ、ヒィーン……」


 情けない声を出しつつ一番の弱点である腹を出して、参った、降参だ!という意味が込められているという『服従のポーズ』を俺に見せる焔猟狗(えんりょうこう)

 バッファはどうやら俺と戦うより御主人様に酷い目に合わされる方がまだマシだという結論にいたったらしい。


 『あーれれぇ…?どうしちゃったーのかね??あの狗』


 審判のピエロも訝しげな顔をする。


 「お、おい!どうしやがったんだ!!バッファッ!」


 必死に命令をするダザルであったがバッファは無視。『服従ポーズ』をやめようとしない。すると……。


 「ふ、ふざけんなぁー!お前の従獣魔やる気あんのかぁ!!」

 「そうだ!そうだーー!!」

 「何が優勝候補だぁ!!無駄に期待させやがってぇー!」

 「てめえの方がゴミくずだ!!」

 「やる気がないならさっさと引っ込め!!」

 「な、なぁッ……!?」


 観客たちの怒りが大爆発。ダザルは容赦なく観客たちから大ブーイングを買われ、食べかけのゴミや石ころが投げられる。

 そりゃそうだ。俺の声が聞こえない奴らにとってはただ、スライムの前にいきなり狗が戦いもせず『参りましたー!』ってポーズをとった風にしか見えないのだから。

 お金を払ってわざわざ祭りを見にきている人たちからとってはこんなに酷すぎる闘いはない。


 「く、くそぉ~……!!」


 ダザルは己のプライドを傷つけられた挙げ句、バッシングの嵐に堪えられなかったのか慌ててその場から逃げ去っていく。

 男はただ勝負で負けることより屈辱的なことがある。…それは自分が積み上げてきた自信(プライド)、功績が踏み潰されることと否定されることである。


 『ダザル選手はどうやら試合を放棄したみたいなの~でぇ……この戦い【勝者】ケンジ選手♪』


 ――ワァァァアア!!!

 誰もが予想しなかった展開にその場の空気が一気に盛り上がる。


 「や、やったー!!」

 『よし』


 ざまぁみろ、へへへぇんだ。

 俺はほぼ何もせずに調子にのったアイツの鼻っ柱をへし折るに成功し、スッキリとする。

 うし、この調子でどんどんと試合に勝っちゃうぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本日はこの小説をお読み頂きありがとうございました (*´ω`*) 『評価』『感想』『レビュー』等、頂けると定期的に執筆をする際、大変モチベーションが上がり、作者は踊り狂って喜びます。お時間があればお願いいたします(笑)。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。