第五十五話 売られた喧嘩
今日は二話まとめてお送りします。
戦闘が始まるまで出番がまだな選手は待合室みたいなところで集まり、出番がくるまで待っていた。
「………(ガクガクブルブル)」
『おいおい。頼むからしっかりしてくれよ、ケン』
ここは従獣魔らしく俺がしっかり主であるケンジをサポートしなければ!
俺はケンジを励ますため声をかける。
『ギルドに入って勇者になりたいんだろ?ならこんなところで震えてる場合じゃねぇだろ、ケン。従獣魔の俺だっているんだ、もっとこうドーンッ!と胸張ってろ』
「う、うん…」
『なーに俺だって元は日本という平和国家の人間だった一人で今は平和主義のスライムだ。やり過ぎないよう最前の注意をはらってやるから心配すんなって』
日本は武力国家ではない。平和国家である。何事もすぐ暴力や力でねじ伏せるのはよくない。
『そう……世界は一つに繋がっている。世の中話し合えばきっと大体の醜い争いもなくなり、なんとかなるはずさっ……!』
なんか変なスイッチが入ってしまった俺はそうケンジに語ってしまった。
『ケンよ。相手と戦う時はまず、話し合いの精神という言葉を忘れずにな!』
「えっと……う、うん。わかったよ、ポチ」
俺の話しで少し緊張がほぐれたのかケンジの体の震えは止まっていた。
俺がよかったー!っと安心していたのも束の間、ケンジの後ろからゴリラのようなデカイ男がやってきた。
ドンッ!!と音を立てケンジは思いっきり地面に尻餅をついてしまう。
「いたっ!」
「邪魔だ。糞ガキが」
ダッサい革ジャンのようなもの着た男は足でわざとケンジを突き飛ばした。
――こいつッ……!
今わざとケンジにぶつかってきやがったな。
俺はこいつがやった行為を目撃したが今はスライムなので直接ここで注意するわけにもいかなかった。
「ご、ごめんなさい……」
「ったく、通行の妨げなんだよ。ゴミみたいに小さいくせによ」
は、はは……!落ち着け、落ち着くんだ俺の慈愛の心よ。
ブチッ……。
「誰だぁ~?こんな豆粒みたいなガキを聖霊王祭に参加させた奴はよ」
話し合い話し合い……。
ブチブチッ……。
「しかも従獣魔が低級中の低級のスライムって…!主と似て糞弱そうだなぁ?」
はな……し……あい?
ブチブチブチブチッ……。
「はやく家に帰ってママのおっぱいでも啜ってな、ガキが」
そう言って自分の従獣魔と共に下品な笑い声を上げながら去っていった男。他の参加者たちもその者の行為を咎める所か影で一緒になって笑っている。
プッチーンッ……!
あれれ?おじさん、あったまきたぞぉー?
俺の堪忍袋の緒と頭の血管が切れた瞬間だった。
『おい、ケン。今のって喧嘩売られたんだよなぁ?喧嘩売ったんだよなぁ?向こうが??なぁ?』
「えっと……ぽ、ポチなんか怖いよ」
俺のまわりには黒い負の感情のオーラが漂う。話し合いなんてくそっくらえだ。平和主義?何それ美味しいの??
『そっちがお望みならやってやんよ……!殺ってやるよ!』
「なんか後半文字が違うよッ!?ポチ!」
「ぐへへ……っ!」と、不気味にうす笑う声を上げる俺を必死に止めようするケンジ。だが俺の怒りは冷めやらない。
「“ニッポン”っていう平和国家は?ポチがさっきまで話してた『話し合いの精神』はどこにいっちゃったの!?」
『そんな平和国家は潰えた』
真っ向から俺は祖国を否定。
『そもそもここは異世界だ!!そんな日本のことを話にだすんじゃねぇ!』
「え、えっ~……!」
『Aブロック出場、【ケンジ&ポチ】ペア~!そろそろ出番だから用意してねぇ~?♪』
『ほらぁ!名前呼ばれぞ!ケン、行くぞぉー!!』
「あっ、待ってよ!ポチ~!!」
いざゆかん、戦場へ。
俺とケンジは拍手喝采が湧き出るコロシアムの中へと立った。




