第四十四話 そして現在に至る
内容を修正したので前は一度消して、再投稿させていただきました。
なんでここにあのギルなんちゃら副隊長様がいるんだ!?
俺は階段の隅に隠れて固まっていた。
「俺の名はギル・アルベルト。君、ここに『ケンジ』という人が住んでいると聞いて来たんだが……」
……ん?ケンジ??
俺の方に用事があるのではなくて?
俺は暫く青年の様子を見ることにした。
「ケンジというのは僕のことですけど……」
「えっ!君がケンジ……?」
青年もケンジを見て驚いている様子だった。
「女の子……?」
「ぼ、僕、男です……!」
女の子と間違われ、ガーンと思いきっりショックを受けている様子のケンジ。
「す、すまない。髪が長かったからすっかり女の子かと…」
んまぁ、確かにケンジはどちらかというと中性っぽい顔つきだから女の子に間違えるのも仕方ないのかな?
ドンマイ。ケンジ!
「俺の間違い…?いや、でもあの鉄の馬があったからここにあの者が住んでるのは間違いはないはず」
ブツブツと独り言を呟く青年。
ははぁん、あの青年は何処でどう調べてきたかは知らんがケンを俺のことだと勘違いしてここに来たわけか。
「えっとその……ケンジ君でいいのかな?ご両親は今この家に?」
「えっと……両親とはここでは暮らしてないんです」
「じゃあ、ケンジ君は一体誰と一緒にこんな大きな家で暮らしているんだい?」
「それは、その……」
ケンジは青年にどこまで俺のことを話していいのか分からず困っているといった様子だった。ケンジはちらちらと俺がいる階段の方に視線を向ける。
んー、ケンが困ってるなぁ。
仕方ないと俺は立上がって階段を降りる。
「子供にあれこれ聞くのは感心しないな、青年」
「!!」
俺の素顔を見て驚く青年。
「貴方はあの時の…!」
「その件の時はどうも」
俺はロッテさんを助けようとした時に青年に声をかけられて顔を見られてたんだよな、そういえば。
「ポチ!」
ケンジは俺に勢いよく飛び付く。
「ポチ…さん?確か、ケンジ君の従獣魔の名もそんな名前とお聞きしましたが」
「あ~!!えっと~…!それはな偶然、俺の名前もポチって言ってな。いやぁ~、困ったよ。犬みたいな名前だってよく小さい頃は馬鹿にされちゃってさぁ!」
「?」
あははは、と無理やり俺は口角をつり上げ必死に笑ってなんとか誤魔化す。
――こいつどこまで俺たちのこと知ってるんだ?
「あぁ、そうだ!ケン、お客さんに出す用のカップ出しといてくれ」
「うん!分かった」
そうケンジにお願いしするとケンジは元気に返事をし、リビングに走っていく。
「ま、まぁ!来ちまったのなら仕方ないし、立ち話もなんだ。取り合えず家に上がれや。客人として来てくれたなら茶ぐらいは出すぜ?」
「…それではお言葉に甘え、そうさせて頂きます」
相変わらず重たそうな鎧を着ている青年。
「お邪魔します」
「ちょっと待った」
鎧を着けたまま家に上がろうとした青年に俺はストップをかける。
「俺んち、土足厳禁だから」
俺はそういうと足を差す。
青年には悪いが、お願いだからそんな土と泥がついたその鉄靴でせっかく綺麗に掃除したばかりの俺んちに上がらないで欲しかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
鉄靴を脱いだのを確認し、俺は青年をリビングに案内して青年を椅子に座らせる。
「立派な作りの家ですね。かなり名のある建築士が作ったんでしょうね」
興味深そうに家を見る。
「ん?この家は俺が作ったんだけど?」
「えっ」
そう言うと目を丸くして驚いてる青年。そんなに驚くことではないと思うが……。現に俺がいた世界では建築士じゃなくたって知識とアイディアで凄い家を作る人たちなんて沢山いたし。
コンロで湯を沸かし、俺は慣れた手つきでポットに村で買っておいたクラミーヌの花を使った茶葉を入れて沸騰した湯を入れ、蒸らす。カップに注がれるのはハーブティー。琥珀色をした液体にクラミーヌの花の爽やかな茶葉の香りがほのかに部屋の中に広がる。
ケンジ用としてガラスのコップにはオレンジュースを注ぐ。
俺が運ぼうとするとケンジが「僕が運ぶ!」と言うので「気をつけ運べよ?」と俺は注意してからケンジに渡す。
「粗茶ですけど、どうぞ」
ケンジは机と椅子を器用に使い、俺と青年に紅茶が入ったカップを出す。
「ありがとう」
青年はそのケンジの様子が微笑ましくのかにっこりと笑顔でお礼を言う。
「しっかりとしたお子さんですね」
「まぁな。ちょっとわけあって俺と今一緒に暮らしてんだ」
「えへへ」
褒められたことが嬉しかったのかケンジは頬を指でぽりぽりと掻く。俺は注いだばかりの湯気が立つハーブティーが入ったカップを持ち、飲む。
うん、さっぱりとしてうまい。
俺は前の世界ではそんなに好んでハーブティーを飲むほうではなかったがこれはクセがそんなになくって男の俺でも飲みやすい味になっている。
ケンジも俺の隣でオレンジュースを美味しそうに飲んでいる。
「これは…クラミーヌの花の紅茶ですね」
「あぁ。よく分かったな」
「我が国、アルニカ帝国は紅茶が有名なんですよ。それに俺個人としても紅茶は好きなのでよく口にするんです」
青年はじっとカップに入ったハーブティーを見つめる。
「クセもなくさっぱりとしてて飲みやすいですよね」
おぉ、これはかなり紅茶党だな。
若いのに俺なんかより遥かに幾つもの紅茶を飲んできたのだろうか。
「わざわざこんな森にまで追いかけて俺を探しにくるなんて暇人ですね。聖騎士様も」
「すいません。あの後、どうしても気になったもので」
口をつけたカップを静かに青年はソーサに置く。




